メイサと7人の外国人たち

アラサー元お水とキャラの濃い外国人達の冒険記

あたしはあんたの穴じゃない

2019-10-21 16:32:15 | アイアン
「アイアン……」



私は言葉もなかった。
私に言えって?
あんた結婚してるでしょって
だってあんたカード使えないし
土日全く会いたがらないし
家に呼べないし って?
いや、どう考えたって証拠が足りないじゃん。
そんな弱小チームで攻め入る気にはなれない。
でもどうやら私の曖昧な攻め立てでは、
丸腰で臨んだ試合になってしまったみたいだ。
いやしかし、やっぱりあの時このディティールを伝えなくてよかったと今でも思う。
私は繰り返した。



「アイアン、本当のこと言ってよ。
信じてよ、あたし本当にあんたが困るようなことはしないよ。
あたしはただあんたに正直に告白して謝ってほしいだけ
何なら何か書いてあげる」

「書く?何を」

「なんか……誓約書みたいなやつ」



アイアンは笑った。



「何にも書く必要はないよ。
メイサ、俺は本当に嘘なんかついてない。
俺メイサに嘘ついたことなんかないよ←よう言うたな
何についての嘘だって言ってんの?」

「…………」

「もしかして俺が代わりにカード情報使わせてって言ったから?
あれはしょうがないんだよ。
俺のカード今新しくしてるから、来週まで使えなかったんだ。
それで怒ってるの?」



と訝しげな表情でアイアンは聞いてきたけど
あたしはそれが嘘に違いないと思っていた。
だってさ、あんた2ヶ月ほど前も使えなかったのか?
ていうかさ、あんたが言うこと全部まともにとっちゃダメじゃん?



あたしはその後も何度も正直に言うよう言ったのだが、
アイアンはその度に嘘はついていないと言った。
あたしは言った。




「わかった。あんたはあたしのことちっとも尊敬してない。
ただの人間としてすら考えてない。
あんたにとってあたしってただの穴だったのね」




アイアンは目をひんむいた。



「……何言ってんの?俺君のことそんなひどい風に思ってないぜ?」

「えぇそうね、あたしってすっごくキレイだから
すんごいキレイなタイプの穴だったんでしょ」

「メイサ、聞けよ。
俺マジで君のことそんなただの……言いたくないけど、穴?なんて思ったことないよ。
なんでそんなに怒ってるの?何がそんなに問題なの?
もっとちゃんと説明してよ」



とアイアンは困惑していた。
私は思うのだけど、奴は多分、本当に私に何もバレていないと思っていたんだと思う。
確かに、外人で、英語が完璧じゃなくて、自分のプライベート電話番号も教えてないし
メアドしか知らせてなくて……etc
現金払いと土日のこと、および家に呼ばないくらいじゃ
バレないとたかをくくっていたのだろう。
しかし相手が悪かった。
お水だぜ。





「メイサ、何の事そんなに疑ってるのか言ってよ。
言わなきゃ何もわかんないから、俺たち堂々巡りじゃん」



いやテメーのせいだろ




あたしは




「オッケーわかった。マジで、マジで、マジで時間の無駄だった」




と言った。


悲しかったし
悔しかった。
何がって、ちゃんと謝ってくれなかったことだった。
そして、こんなクソうざいやりとりを
全部自分の母国語以外でやらなきゃいけなかったことが。




私は背を向けて歩き出した。
アイアンも立ち上がり、私を呼んだ。




「メイサ!行くの?ハグは?」

「…………(コツコツコツ去)」

「もう本当に俺に会いたくないってこと?
サヨナラも言わないのかよ!」




ピタ




と足を止めたあたしは



振り返った。






言っとくけど





万が一の場合も考えて来てっから。







私はアイアンに向かって歩きだした。





続きます!!




(疲れて来ました!笑)





絶望

2019-10-19 16:10:08 | アイアン
Hi とアイアンは呟いて私に歩み寄った。
2人の間にはベンチがあって、彼はそれを指しながら座るよう言った。
私は首を横に振った。



「Hi Meisa, how are you? Is everything going okay for you?」

「……」

「Please have a seat. Are you not feeling cold with that jacket? Do you need a coffee?」

「Iron, I didn’t come here to enjoy chatting with you」



OK とアイアンは答えた。
彼だけかけたベンチの前に立ち、あたしは言った。



「もう連絡してこないで」

「……オッケー、でもなんで?俺今回は何をしたの?」

「アイアン、あんたはあたしの彼氏じゃないわ」

「……オッケー」

「だからあんたに会う必要もないし、あたしに執着する必要もないのよ」





会う前に予測していたことがある。
あたしが真剣に問い詰めたところで、アイアンはきっとああだこうだとイチャモンつけたり、
さらに嘘を重ねるだけだと思った。
あたしはこれ以上の嘘は聞きたくなかった。
しかもこれを全部英語でやるわけなので、彼をより饒舌にする材料を与えたくなかった。
なので、シンプルにもう会わないということ、
そして、もう一つだけ言おうと思っていた。





「でも俺は会いたいんだよ。もう本当に俺に会いたくないの?」




アイアンの厄介なところは、こういうところだ。
法律関係で働いたからか、それともそういう役回りとして兄弟の中で育ったからなのか、
相手がイエスと言いづらい質問をしてくる。
でもその時のあたしはどっちかっていうと、
んなこと言うてもなぁと思っていたし
金輪際会わないのかそれともお互いのカードを公開した上で友達として会うのか
自分でもわかっていなかったので、
ただただあたしはしかめっ面をしていた。



あたしが欲しかったのは一つだけだ。



正直に話してほしい。



で、謝ってほしい。





あたしは言った。





「アイアン、あんたあたしが何が嫌いか知ってるでしょ」

「ウソでしょ」



アイアンは勿論と言わんばかりに頷きながら答えた。
ウソつきな男を前にそれを言うのもなんだか滑稽というか
非常に無意味な気もするが、
私も頷いた。





「アイアン、あんたまだあたしに嘘ついてるよ。
本当のこと言って。
あたしは約束するよ、あんたの家族に何か言ったり邪魔したりもしない。
ただ本当のこと言って、ちゃんとあたしに正直に接してほしいだけなのよ。」





アイアンは





顔色一つ変えずに言った。





「何のこと?俺君に、もう嘘なんかついてないよ」





どうして嘘ついてるって思うの?何について?と聞かれ
あたしは静かに絶望していた。




浮気男って、基本的になかなかそれを認めないらしいんだけど
幸か不幸か、あたしは今まで付き合った人には浮気されたことがなかったし
お水だったので、どっちかって言うとこっちが浮気相手だったことなら……。
なので、あたしの世間知らずな戦法は当然に効かなかったのだ。
そしてアイアンは生まれながらのウソつきのようで
本当に顔色一つ変えず、一瞬の間も要さずに
スッキリとしらを切り通したのだ。




続きます!















非通知で電話をかけてくるな!!

2019-10-17 15:49:52 | アイアン
ガチャン!と電話を切り(いや家電じゃないけど)
すぐにまた無視した。
メールをチェックすると案の定彼からメールがあって、今日5分だけ会えない?と書かれていた。
私はプンスカと返事を書いた。



『非通知で電話かけてくんな!!』



ほんで、その後に英語でも同じことを送った。
Googleトランスレーターさんはあまりあてにならないので、
奴がちゃんと意味を取れるか不安だったからだ。



アイアンはすぐに、ごめんよ、会社の電話に出てくれないからと返信してきた。
今日会えないかな?とも。



私は腕を組んで目をつぶった。
こんなにわかりやすく考え事をしている女も珍しい。
オッケーもうこんな非通知合戦で悩むのもヤダ。
謝ってもらってスッキリしたい。
私は返事を書いた。




『いいわ』




約束の時間は5時。
アイアンは奴のオフィス近くのスタバを指定してきた。
けれど私には、考えがあって。
髪を切った時に会いに行った場所を希望した。
駅の上の、小さな広場だ。
そこからはそう、船が見えた。




コツコツとヒール音を響かせながら、私は階段を上っていた。
ほんの1時間前にチャットしていたレオ(ニューキャラ)の言葉が蘇る。



『えー、メイちゃん大丈夫??なんて言ってそいつを振るの??』



レオは日本語がすこぶる上手なので、全部日本語で会話している。
私の英語の勉強にはあまり役立たないが、英語に疲れた時のおしゃべり相手にはちょうどいい。
レオは日本でITセキュリティの専門学校生をしているのだ。
私は答えた。



『まだ決めてないけど、とりあえずもう会う気はないって事は言うつもり。
そもそもあいつ結婚してると思うし』

『まぁそれならそいつは振られて然るべきだよね』

『そーなの』




正直、誰か本命がいるかもしれないなんて冒頭から予想できていたわけで。
それを自分が本気になってきてたからって責め立てるのもなんだか勝手な気がする。
でも例えあたしがあたしなりに悪かったとしても、
アイツはアイツで嘘をついて一発やってるわけだから、
その罪が軽くなるって話にはならない。
そもそもアイツ自体、あたしに対して熱心になってきてたんだから、
ここらでちゃんと正しいレールに戻しとかなきゃいけないだろ。



気をつけてねー!という優しいレオの言葉をバッグにしまい、
ついに例の場所にたどり着いた。
見ると、アイアンが立っているのが見えた。
グレーのパーカーにスーツのパンツ。
首にかけたゴツめのヘッドフォンは初めて見たけど、
ビシッと決めた髪やモジャモジャのヒゲはいつものアイアンだった。
ほんで、背が高くて脚が長くて顔が可愛い。





あぁぁぁぁーーーーーーーーー




ハンサムな男と戦うのんはタフやでーーーーーーー(涙)





アイアンが私に気づき、私はしかめっ面を作った。




戦いの火蓋、切って落とされちゃいました。





続きます!













非通知の電話の主は……

2019-10-04 15:31:10 | アイアン
さて、アイアンは私に無視されることには慣れているのだけど、
その場合も決して諦めず、めちゃくちゃしつこくメールしてくる。
何なら週に5回くらい普通に電話してくる。

そして私がそれを無視し続け、ある日気が向いたり暇だったりするときに
返信or返答するっていう感じだった。



今回の場合も全く同じで、アイアンはひたすらメールしてきたし、
電話してきた。



今度は何に怒ってるの?
なんでー?メイサはどこに消えたのぉー?
体調の悪いアイアンに怒ることなんてできないでしょ?(可愛子ぶった顔の画像添付)
ヘイ、元気?
今日お茶しない?なんで返事してくれないの??



とかなんとか……。



すっかりしょんぼりゲンナリしていた私は、彼の電話番号をブロックすることにした。
ブロックされたことに気づいたのか、
翌日から非通知で日に何回も電話がかかってくるようになった。




「怖っ!!ストーカーじゃん」



と、着信履歴を見た人々が言った(笑)
たしかに。。。



あまり触れていないけど、私はこの国で客商売の仕事をしている。
ある日、ボスと話しているときに私は言われた。



「時々顧客が知らない番号とか非通知で連絡してくることがあるから、どんな電話も全部でろよ」



グェ、という顔をしたのを見て察したのか、
ボスは私を見据えて続けた。




「で、ろ、よ」




ブスーッとブスらしくその場を去ったのだけど、
確かにもしこれが顧客だったらまずい。
どうまずいって、あたしがミスると国へ帰される。
この国にきてまだ一年足らず、帰されるわけにはマジでいかない。
考えた末、でる分にはいいかと思った。
だって、出てアイアンだったら切ればいいだけの話だし、
でる前には絶対にわからないんだもん。



そう決めた、わずか2日後のことだった。




トゥルルルルルル




非通知から着信があった。




う、うぅーーーーーーーーーん





でると決めたものの、まだなんか躊躇する。
でもあたしにとって大事なのはここでのビザで、
無視すりゃ済むアイアンの事はどうでもいいはずだ。




よし!





私は応答ボタンを押した。




すぐに、聞き慣れたちょっと高い声が聞こえた。





「Meisa? Hello, this is Iron」




アイアンだった。





続きます!!







忍ぴょんの活躍

2019-10-03 00:26:23 | アイアン
「日本男児なら、デートで甘いもの食べない方が良いわよ」



そう言った私に、忍はそれは酷だよと答えた。
私は忍とビデオ電話していた。
アイアンを無視し始めて3日ほどの出来事だ。
1人でくすぶっているより、誰かと何かした方がいいと思った。
忍ぴょんは大学生なので、昼間に都合がついた。




さて甘いもののことだが、確かに彼の国や私が今いる国の男性は、
日本の男よりずっと甘いものを食べる。
パフェやケーキを食べることに対して、抵抗が皆無だ。
咲人も翔平も私をアイス屋さんに連れてったしな。
あ、私のため?(いや2人ともアイス大好きだった)





「ま、そうね。でもこれが”デート”のフツーなのよん」

「そうかぁ。。。あ、そういえばね」

「はい?」

「俺が君の国に行った時、バーで皆に君に会うって話をしたら、
デート楽しんできてねって言われたよ。」

「ふん?」




よく聞き取れず変な反応をした私に、
皆しつこかったし面倒くさかったよ、と忍は続けた。




「え、ごめんもう一回説明してくれる?多分聞き取れなかった。」

「え?あ、えーと、だから、俺が」

「ここに来た時だよね?会った日だよね?」

「そうそう。で…」




ともう一度説明してくれた。
どうやら聞き間違えはしていなかったようだ。
忍はただ、私に会うことをデート呼ばわりされたことについて言及しただけか。
私はちょっと笑った。




「なるほどね。で?君はデートは楽しかったの?(笑)」

「(笑)ま、そうね」

「実際私は楽しかったわよ。あなたと話せてすごく良かった。」




実際二回も会ったもんなぁ。
忍は私の発言にちょっと面食らったようだったけど、
そこはその国の男、ポーカーフェイスで返事した。
(咲人と同じ、この国の男はクールでいなければならないのだ。
たとえ忍ぴょんが10個くらい年下だとしても)




「おぉ、それは優しいな」

「別に優しくないわ、ただ正直なだけよ。」

「そっか」




少し笑いあったあと、忍は言った。




「俺は今ちょっと変だな。」

「そう?わからんけど」

「俺は自分のことはよくわかってるよ。自分がどんなふうに変になるのかも。」

「じゃ、あなたは今その変になるレールの上にいるの?」

「多分(笑)」




私は笑った。





「ま、何も不思議じゃないわ。私の磁石がありますから。
あなたも私の磁石に引き寄せられた人の1人よ。」




やめてくれ〜!と忍が声をあげたので、笑ってしまった。
彼はチーム:メイちゃんと変態のことをよく知っているのだ(笑)




「俺は変態じゃないよ、他の奴らみたいに。」

「あらそーお?」

「……まぁ君が望むならなってもいいけど」

「いや、望まないわ」




2人で爆笑して、電話を終えた。
夕方には別の用事があった。




アパートを出て、駅へ急ぐ道は落ち葉でいっぱいだ。
風が冷たくなったこの街は、紛れもなく秋の色をしている。
なかなか乾かないと思った涙の跡は、忍と沢山笑っているうちに消えたようだ。
ふと笑みが溢れた。



仁への当てつけに連絡した忍が、私を助けてくれた。
(彼にはアイアンのことは一切話さなかったけど)
咲人や翔平に出会えたのは仁のおかげと、ポジティブシンキングな私だけど、
本当に運命があるなら、仁に出会わなくても彼らに会えたとも思った。
でも、私が忍に連絡を取ったのは彼が仁と同じ名前だからだ。
だから、





ありがとう仁ちゃん。





誰かを許すのは、時としてすごく難しい。





だけど、彼をどこか一つでも許せたなら

私の心も一緒に幸せになるんだろうな。





そんな軽やかな人になりたい。



なれないけど(笑)





私は思わず走り出した。
青空と街路樹の黄金色が美しいこの季節に泣いていたらもったいない。
早く、元気にならなくちゃ。



その頃アイアンは何も気づいていなくて
単純に私が無視しているだけだと思っていただろう。
(しょっちゅう無視してたし)




朝届いた彼からのメールも
無視していたけど。









私自身、これからどんなことになるのか
まさか想像できなかった。






続きます!!