メイサと7人の外国人たち

アラサー元お水とキャラの濃い外国人達の冒険記

ドライブデートでこんなことに⑤

2019-08-31 22:01:28 | アイアン
「ここで降ろせばいいの?」

「うん」

「ここから家までどれくらい?」

「えーと、10分……」

「10分!?」




アイアンはびっくりした。




「本当にここでいいの?近くなくね?」




私は慌てて



「じゅ、10分ていうのは言い過ぎかも!5分くらい!」

「そう」



事実5分くらいだったと思う。
でもフツーなら家の前とかすぐそこの角とかまでつけてもらう。
あたしがアイアンにそんなとこで降ろしてもらったのは、
コイツに自分の家を教えたくなんかさらさらなかったからだ。
今のご時世、電話番号くらいは仕方ない。
でも住んでるところを、同じ都市に住んでいる得体の知れない奴に、
(いや、たとえ違う国に住んでよーと)教えるのは憚られた。



「So thank you for tonight! Have a sweet dreams hahaha!!!」



と、いつも通りかるぅーく笑ってチューして
アイアンを乗せたバロカーは去って行った。
テキトーに手を振り、私はフンとため息をついた。




ほら見ろ。
自分だって全然彼に真剣じゃない。
好きだったら住所くらい言えそうなもんじゃん。



そしてテキトーな車でテキトーにやってきたアイツも。
私のことなんか好きじゃない。




ベッドに入ってから、短くメールを打った。




『引き止めてごめん。車、延滞料金取られなかった?』




数時間後、映画が終わったのか
アイアンから返事があった。




『ハハハ!大丈夫だったよ!心配しないで。
今日はありがとうね。おやすみ、cheeky monkey』




アイアンから返信が来ると、ホッとした。
目をつぶって、ゆっくりいろいろなことが頭から抜けて行くと、
彼の残したキスの余韻が蘇った。




アイアンのことを




全然好きじゃない




でも嫌いじゃない




でももしできたら




もっと素直になりたい




生意気子猿なんて、呼ばれないような




素直で可愛い顔をして




甘えてみたい。




でも、自分のことを好きでもなんでもない男に




他の女がいるに違いない男に




どうしてそんなことが出来るだろう。




正直言って他の女の影っていうのはない。
影って言える時は、もっとこう、
具体的な物的証拠があるときよね。
それは全然ない。




じゃー何であたしがこの時こんなにも
コイツは独り身じゃないと思っていたか。




カンです。




女の勘ではない。
元お水の勘です。
いろいろ経験してるよねー!(しなくても良いことを)



本当に思うんだけど、男と女は何人(なにじん)でも変わらない。
程度問題はあるものの、いつだって見栄っ張りで強がりな男と、
根は強いけど弱い振りが上手な女が、依存しあって生きている。
恋愛の常套句も同じ。
すれ違う理由も同じ。




少し話が逸れたけど




ウツラウツラとシーツの波間を彷徨っていると
少しだけ自分が素直になるのか
もっと一緒に居たかった、と言うより、
もっと一緒にいたいと思って欲しいという気持ちが




じんわーりと心に広がって行った。





この想いを




なんて呼んだらいいんだろう。







続きます。





















ドライブデートでこんなことに④

2019-08-28 21:44:42 | アイアン
抱きしめたまま、アイアンは息も荒く呟いた。




「メイサ……俺、もう、行かなきゃ……」




私は彼の首に腕を絡ませた。



「ダメ」

「Dame?No?」

「ダメ、行かないで…
アイアン……」




私が彼の名前を呼ぶたび、アイアンはもっと強く私を抱きしめた。
どうしたの、なに、と答えながら、自分が求められることに満足そうだった。





「メイサ俺本当に行かないと……」

「行っちゃヤダ」

「仲間に会う前に車返さなきゃいけないし。バロカーに怒られるよ。
今度はもっと長い時間借りてくるから、ワッ!」




耳を舐められた途端、アイアンは声を上げて苦しそうな顔をした。




「メイサ!ダメだって!」

「ヤダ」

「ちょっ、ほんと……あっ」




ダメダメ言いながらもアイアンは全然止めないし、
私も彼を引き止めるかのように強く抱きしめていた。




「もっと長くいて欲しいの」



長い攻防戦(そんなに防してなかったが)の後、そう呟くと
アイアンはいつも通りの軽い笑顔で




「そう出来たらと思うよ」




とウソをついた。
仲間たちとシアターに行くのは本当らしく、私の目の前でトークアプリを操作した。
グループトーク内で彼は、少し遅れるかもと送っていた。



それをひったくって、ねぇ本当に男友達なの?
なんて聞けない関係がもどかしかった。
こんなの想定外だけど、あんな風に沢山笑いあって、ちょっと嬉しくなるキスをした後で、
なんだか私は
ちょっと悲しい顔でその画面を見つめていた。
あーうん、本当にただのグループトークだったけど。



ま、いーや。
あたしがどんなにしょんぼりしてよーと、
この現状は想定内だしね。
こんなもんだ。




「ふぅ」



私がため息をつくのと同時に、送るよとアイアンは言った。
私はわざと家から3本は離れた通りを指定した。





続きます。


ドライブデートでこんなことに③

2019-08-23 22:55:03 | アイアン
上がる息に調子を合わせるように、アイアンは私を膝から降ろし、押し倒した。



「んっ」


キスの合間に息が漏れると、アイアンのキスは一層激しくなった。


「メイサ、ストッキング脱いで……」


私は答えた。


「無理」

「なんで!?」



私を抱き起こして聞いてきたアイアンに、私は申し訳なさそうに答えた。



「来週ならいいけど……」


あぁ〜……わかった、とアイアンはちょっと笑った。
そして私にまたキスをして、何かをせがんだ。
あっという間にそれが終わると、その瞬間私は、
ハイじゃぁ今日はもうこれでオシマイなのねーと思った。
賢者モードに入ったら好きじゃない女には冷たくなるはず。
ガッカリするのは嫌だ。


アイアンは水のボトルをくれたので、私はそれでスッキリした。
吐いた後で、言った。



「ミッションコンプリート」



ブー!とアイアンは吹き出した。
結構面白かったみたいで、しばらく笑っていた。
それを見ていたら、私も自然と笑顔になった。
誰かが私が言ったことで笑ってくれると嬉しかった。
アイアンはため息をつきながら、
オー、メイサ、君はマジでいい女だよ……と何度も繰り返した。
何度も何度も書いているので誰しもがわかっているだろうけど、
あたしは美女でもないしボインでもないし、なんでもない(真顔)。
加えてテクニシャンでもないので(比べたことはないけど(笑))聞いてみた。




「よかった?」

「うん、めちゃめちゃ……」

「それはよかったわ」



と自慢げに微笑むと、アイアンは
ミッションコンプリートしたね(笑)と答えた。
そのフレーズ、気に入ったのね?(笑)
私はちょっと大げさに答えた。





「そうよ。タフな仕事だったわ」




アイアンはまた可笑しそうに笑った。
二度笑いしたから、余程この手の表現がツボに入ったんだろう。
さっくり隣の席に戻り、軽く髪を直していると、アイアンが私を呼んだ。




「こっちにおいで」




と、抱き寄せ、たくさんたくさん、優しくキスをした。




あれ?そんなにキスするの?
ふーん意外。




私がそう思ってるのが伝わったのか、
いや、多分彼の性格的に気になったら聞かずにいられないから、
彼は質問した。





「メイサは、俺が終わった後にたくさんキスするの変だと思う?」




私は首を傾げた。




「ううん、思わないけど?なんで?思うべきなの?」

「思わないべきだよ(笑)」

「でもちょっとびっくりしたわ。」

「なんで?」



うーん。
これ英語でちゃんと伝わるのか?




「終わった後、あなたはもうキスしたいと思わないだろうと思ったから。」




アイアンは微笑んで答えた。




「キスはいつだっていいことだよ」

「そう……」




あたしは今でも思うんだけど、アイアンは案外ロマンチストなのかなーって思う。
ていうか多分、甘えん坊で、彼女にべったりするタイプの男なんじゃなかろーか。
イチャイチャラブラブしたいんだろうね。
やたらマメだし、執着束縛タイプなんだろうな。



あたしは案外そういう男の人が嫌いではないので(自分さえ相手に本気ならむしろ良い)
この人と普通に出会っていたら良かったのにと思う反面
浮気は地球が割れても治らない病気だから
普通に出会ったのに他の女とセックスされてたらクソ辛いだろうなーとも思った。




たくさんキスしていると、不意にアイアンが聞いた。




「メイサ……今日俺に来て欲しかった?」





私は





正直に





「うん」






と答えた。





スイッチが入ったようにアイアンのキスが激しくなった。





続きます!



ドライブデートでこんなことに②

2019-08-22 23:21:46 | アイアン
しばらく走った後で、車は古くて美しい建物の前に差し掛かった。
真っ白な石だけで築かれたそれは、この地区の演舞場だった。
角を曲がりながらアイアンは聞いた。



「メイサは芝居は見る?」

「へ?今?」



アイアンは笑った。



「今じゃないよ。閉館してなかったらよかったね(笑)」

「あ、そ。まぁたまに行くかな。あんたは?」

「俺もたまにだね。
今夜はこの後、仲間とレイトショー行くんだ。
だから30分くらいここにいられる」

「ふーん。
よく行くの?レイトショー」

「映画見るときは大抵レイトショーだね」

「なんで?」

「静かだから!」




ウソだろうなーと思った。
あれでしょ、子供が寝てから行くんでしょ。
家族サービス終わってから仲間と遊びに出かけられるから、じゃないの?
てかむしろこのあとのそれは、デートなのでは?


とかなんとか思ったけど、フーンとだけ言った。
あたしがアイアンのことが好きなら、
自尊心と今後のために明確にしたほうが良いと思うけど
好きでもなければ好かれてもない男と
そんなことを明確にして何か良い事あんのかな。
ていうか、アイアンは多分本当のこと言わないだろうから、
私が彼を気にしていると思わせそうな質問、
する方がよっぽど恥で無駄だから、
そんなエネルギーないわ(げっそり)


私は車の中をキョロキョロした。



「これ借りたの?」

「そう!バロカーって知ってる?」

「ううん」

「そこら中にあるんだけど、まぁ30分〜円くらい」

「高くはないわね」

「全然高くないよ!まぁ空きがなきゃ借りられないんだけどね」

「ふーん、あなたのうちの近くにあるの?」

「そ。たまに使うのよ」



ふーん。
車種ってひとつだけなのかしら?



アイアンが乗ってきたそれは軽みたいなやつで、
小さな車体に彼の脚は窮屈そうだった。
車体の横に大きくバロカーって書いてあるので、
一目でレンタカーってわかるし、
それがカッコいいと思う人はまずいないだろう。
車持ってないわ、カッコよくない車で来るわ、
全然素敵じゃないなーと心の中で冷静にバカにした。
うん、私は免許すら持ってないけどね←バカにできない



トホホなメイちゃんを乗せた車は、その美しい演舞場の隣で停まった。
メイサこっち向いて、と言ってアイアンはキスした。



「ワンピース着てきたんだね」

「そうよ。あんたが着てきたって言ったんじゃない」



元々何も期待してない。
そりゃ奇跡が起こって花束片手にドライブだけをしたら
私はこのダサいバロカーの中でも恋に落ちたかもしれない。(簡単…)
でも昨今はアイアンの言動から、彼が私に本気でないのは明らか過ぎたし、
私のひどい思考回路が的中しても、ただそりゃそうだと思った。



「メイサ、後ろに来て」



促されるままに後部座席に移動し、アイアンは私を自分の膝の上に乗せた。
先ほども書いたが、バロカーは狭くて、私は彼にピッタリ密着した。
アイアンは聞いた。



「俺に会いたかった?」



私は怪訝な顔をした。
コイツ、よくそんなこと聞けるな……。



「何でそんなこと聞くの?(私がどう思っててもどうでも良いくせに笑)」

「聞きたいだけだよ、ハハハ」



と、いつものように彼は笑った。
ほんとにほんとに、なんて軽いやつなんだろう。
呆れて仏頂面の私に構わず、アイアンは沢山キスをした。
長いキスをしていると、アイアンの息が荒くなってきた。






続きます!

















ドライブデートでこんな事に①

2019-08-19 14:07:08 | アイアン
次の日、自分と車の都合がついたアイアンは、
計画通り21時過ぎに迎えに行くよとメールをよこした。
私は働いていたのだけど、夕方からまた忍ぴょんに会っていた。


もう少し、忍ぴょんとのことついて説明しておく。
忍ぴょんは懐かしの仁と同じ国出身の、わっくわぁーーーーい男の子だ。
ほんで、校外学習で私の国に遊びに来た。
当初は一度会えれば良いねー程度だったのだが
おととい会ったらエライ楽しかったので、
明日帰っちゃう前に会おうぜー!という運びになったのだ。


前にも少し書いたが、私には男友達というものがいなかった。
ていうか、梓のことをそう思っていたけど違ったし。
そんな中で、この10個以上年の離れた忍ぴょんは、唯一ロマンチックが止まっている男なのだ。
ほんで、私は彼と話すのが大好きだった。
(私か彼の精神年齢に問題があるに違いない笑)



「急いで、急いで。乗って!」



会話が盛り上がったせいで、バスに乗り遅れそうになった忍ぴょんは、
あっさりしたハグをして去って行った。
私はといえば、10個以上下の彼に奢ってもらって、
ほんの少しピンクに染まったチークで歩き出した。
見ると、アイアンからメールが来ていた。



『もうすぐつくよ〜。メイサどの辺にいるの?俺どこに行けば良い?』

『あのカフェは?思い出の。』



もちろん、アイアンが私をトイレに連れ込んだあのカフェのことだ。



『ハハハハハ!オッケー、前に停めとく。
トイレに入る準備しといてね(笑)』




入んないわよぉーっだ!と携帯にアッカンベーして、
私は道を急いだ。
暗い住宅街をコツコツ歩いていると、不意にクラクションが鳴った。



「ヘーイ!」



と、窓から見慣れたモジャモジャヒゲと、ハンサムな顔が出てきた。
ブンブン振る手を見ると、コイツは本当にいつも元気だな……と半ば呆れながらも笑える。



「よ、元気!?」

「まぁ、オッケー。あなたは?」

「俺も!今日も綺麗だね!あ、どこ行く?」

「えっ!?ど、どこか決めてよ」

「どこか行きたいとこある?それか、どこかで車停める?」

なんでよ。あっち走れば?海沿いだし」

「オッケー。俺この辺全然知らないからナビしてよ。どっち行けば良いの?」

「……右。」



りょうかーい、とアイアンはエンジンをかけた。
チラリと横顔を盗み見る。
暗くてよくわからないけど、グレーのパーカーと短パン。
もういい年なんだから、綺麗なシャツくらい着ればいいのに。
ま、この人はそういう感じじゃないよね。



と勝手なことを考えていると、アイアンは話し出した。




「で、今日は何してたの?」

「だから、夕方まで働いて、そのあと友達と会ってたんだってば。」

「いいねいいね。日本の友達?」

「違うわよ。あ!あの男の子よ。某国から来てる友達」

「え?」

「木曜にも会った子。あなたより背が高くてぇー。」

「あぁー!あの、俺にヤキモチ妬かせたアイツね!」




そうよ、と答えながら、運転する横顔を見た。
ムカついてるように見えないけど、笑ってもない。




「あなたより背が高くて、脂肪もついてなくて……」

「はいはいはいはい」

「あと若いのよねー」

「いくつ?」

「20歳」

「20歳?ふーーーーん。」




ちょっと考えたあと、
まぁハタチなら俺より背が高くて当たり前なんじゃない?ハハ、とまた負けず嫌いを垣間見せた。




「あとぉ、すっごく紳士だしぃ」

「俺、紳士だよ」

「はぁー?!あなたが?!」

「勿論!なんで?」

「あーそう、なるほどね。
この国では紳士はフツー女の子をトイレに連れ込むのね。」

「ちょ、それは違うでしょ!も…」

「はーそれは知らなんだ。
これがカルチャーギャップなのねー。勉強になるわー」

「だからさ、あれは本当例外で!おい聞けよ」




ガン無視してペラペラとバカにする私に、
アイアンは「ほんとに可愛くねーな」と呟いた。
けれど、納得納得!と私が言うと、彼も思わず笑った。



続きます!