2月初めの受診から3ヶ月空いての診察だった。病院脇の車寄せにコロナ感染者の受け入れ用のようなテントが並んでいてちょっと怖い。


入り口には守衛さんが番号の書かれた小さな紙をくれて、番号の順に体温計を渡されて検温。お母さんを迎えに行った老健もそうだったけれど、その体温計が脇の下で計るタイプ。都度消毒してくれたけれど、最近自分の受診で通院した2ヶ所の病院は非接触型の体温計だったのでなんとなく気持ち悪いと思った。

診察室のドア横にあるパネルに受付番号が表示される。お母さんは糖尿病型緑内障のせいで右目の視野がほとんど欠損しているため左目だけで見ているが、裸眼でもよく見えている。コンタクトレンズを入れているわたしより見えている。
お母さん:「お母さんは何番だ?」
わたし:「13番だよ」
お母さん:「嫌な番号だな、絞首刑だ」
わたし:「デスバーイハンギング!(death by hanging!)ってやつ?」
お母さん:「そうだ。絞首刑台までの階段は13段なんだぞ、知ってるか?」
わたし:「何かで読んだか聞いたかしたけど、それほんと?」
お母さん:「・・・」
お母さんはたまに無言になる。しばらくすると、また繰り返す。お母さんは何番だ?13番だよ、絞首刑だ云々。今回は4回くらいリピート。話す内用があまり気分のいい中身ではないから、わたしはなんとなく小声になるけれどお母さんはお構い無し。昔からお母さんは日本史が好きで、開戦から終戦、終戦処理にも詳しい。巣鴨プリズン系も得意だから、13階段の話もあながち間違ってはいないのかもしれない。ちなみに池袋にあるサンシャインシティは巣鴨プリズンの跡地。巣鴨なのに池袋。
これまで担当してくれたN村先生は転勤してしまい後任のY下先生とご挨拶。
先生:「担当のY下です」
お母さん:「どーも。よろしく」
なんとなく上から。
先生:「どうですか?痛みますか?」
お母さん:「まあね、たまにね」
先生:「転んだりしてませんか?」
お母さん:「たぶんね」
怖いものなしだな。
先生:「レントゲン見ても新しく骨折はしていませんから、このままコルセットはしなくて大丈夫ですね。つけっぱなしだと筋力落ちてしまうので」
お母さん「・・・」
先生:「では。次回は3ヶ月後、骨粗鬆症のお薬と痛み止出しますね」
事務の女性:「次回は8月7日です」
お母さん:「どーも。お世話様でした」
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3ヶ月ぶりに会うお母さんは、また少し痩せたような気がした。老健では4人部屋、食事のテーブルもその4人で、毎日楽しくお喋りをしているそうだ。みんな認知症なので同じ内容を繰り返しても、今初めて聞いたかのように反応して話が尽きないらしい。
老健は室温管理がされているのでそんなに必要ないかもしれないけれど、冬物の服しか預けていないので、夏物の服を用意して預けた。受付までしか入れないので、スタッフのお兄さんにお願いした。持ち物には全てに名前を書く。わたしたちが子供の頃、幼稚園や小学校へ上がるときにお母さんが書いてくれたように。
お母さんは特養老人ホームにはまだ入れないけれど、老健に入れることができて良かった。管理されているからだけれど、体重も減り顔色も良く機嫌も良い。もしも家にいたらどうなっていたことだろう。そしてこのコロナ。考えるだけでも恐ろしい。お陰様でお母さんは元気に暮らしている。ありがたい。

エゴノキの花が咲いていた。下を向いて咲く白い花。エゴノキは5月7日の誕生花で花言葉は壮大だそうだ。種はヤマガラの好物らしい。