徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

ドイツ情報、ヨーロッパ旅行記、書評、その他「心にうつりゆくよしなし事」

ドイツ社会のスケープゴートの変遷~長期失業者から難民へ

2018年07月22日 | 社会

つい先日たまたまドイツの長期失業者(1年以上無職の者)に関する統計を見かけました。ドイツ連邦統計局のサイト「Statista.de」で公開されたものです。それによると過去10年間で長期失業者の数が50万人減り、また全失業者に占める長期失業者の割合も40.7%から34.9%に減ったとのことです。

 

この減った「50万人」の中には、職に就くことなく年金受給年齢に達したために「失業者」とカウントされなくなった人たちが多く含まれています。統計的な意味の「失業者」とは単なる無職者ではなく、労働局に「求職中」である届け出を出し、失業手当などの何らかの支援を受ける人たちのうち、職業(再)訓練などのプログラムに参加していない人たちを指しています。

この定義での「失業」が長期化する典型例は55歳以上の労働者です。このため、過去5年間の平均収入から算出される第1種失業手当の受給はこの年齢層には2年間支給されます。55歳未満の場合の支給期間は1年間のみで、それを過ぎても就職ができない場合は、俗に「ハルツ4」と呼ばれる第2種失業手当が支給されます。これは、就労可能者に支給される生活保護の一種ですが、そのように呼ばれないのはシュレーダー政権時に実施された「アゲンダ2010」プログラムによる生活保護と失業手当の統合改革によります。この改革以降「生活保護(Sozialhilfe)」の受給者は就労不能な者(病人や障碍者、高齢者などでその他の保護が受けれない者)に限定されています。

「アゲンダ2010」が提唱された当時(2003年)、ドイツの失業者は500万人を超え、失業率は10.5%でした。経済は停滞し、ドイツは「ヨーロッパの病人」とさえ言われていました。現在好景気に沸き、3年連続財政黒字を計上しているドイツからは想像もできないかもしれませんが、とにかく失業者対策が喫緊の政治課題だったのです。「保護が手厚すぎる」というのはまだましな批判でしたが、「働けるのにさぼってる怠け者」「金食い虫」「社会の寄生虫」などの失業者バッシングも盛んに行われました。

そして現在、失業率はわずか5.4%、2018年6月現在で228万人です。

 

州別に見ると以下のようになります。数字は失業率のパーセンテージで、カッコ内の数字は前年同月の失業率を表します。出典は労働局サイト

最も失業率が高いのはブレーメン州の9.7%。船舶業の衰退から産業構造の変革が進まずなかなか浮上できない地域です。次が首都のあるベルリン州の7.9%。

旧東独5州の失業率平均が6.6%なのに対して、旧西独11州の平均は5%なので、いかにも東西格差がある感じですが、私の住むノルトライン・ヴェストファーレン州(人口最大の州)の失業率は6.7%で、旧東独平均を上回ります。上の地図を先入観なくパッと見ればお分かりかと思いますが、あるのは東西格差ではなくむしろ南北格差です。

それはともかくとして、ドイツのサクセスストーリーが本当に「アゲンダ2010」によるものなのか諸説があります。実は「アゲンダ2010」は全く無関係の労使協定による実質賃金上昇の抑制によって国際競争力が増したという説もあります(Christian Dustmann, Bernd Fitzenberger, Uta Schönberg, and Alexandra Spitz-Oener, "From Sick Man of Europe to Economic Superstar: Germany’s Resurgent Economy", Journal of Economic Perspectives—Volume 28, Number 1—Winter 2014)。その賃金上昇抑制はすでに1995年に始まっていたので、「アゲンダ2010」とは無関係というわけです。

名目賃金の上昇率だけ見ると、1992年以降概ね上昇し続けたと言えますが(例外は1997、2003、2005年)、実質賃金(名目賃金から物価上昇率を差し引いた賃金)はほぼ横ばいです。下のグラフは1992~2017年の名目賃金の上昇率を表しています。

実質賃金がほぼ横ばいなら、生活がよくはならなくても苦しくもなってないということのはずですが、それはあくまでも「平均」の話で、実は所得格差が拡大しつつあり、「2015年度の下の方の40%の実質賃金は、1995年度のそれよりも低くなっている」と昨年経済事務次官のマティアス・マハニクが警鐘を鳴らしました(Süddeutsche Zeitung, 22. August 2017, "Deutschland hat ein Lohnproblem(ドイツには賃金問題がある)")。要するに低所得層40%は、好景気の恩恵に預かれないばかりか、逆に生活が苦しくなっており、場合によっては仕事を掛け持ちするなどして、何とか生活しているわけです。それに対して上位60%は一部かなりの実質賃金の上昇があったと言います。上位60%は割と広範なので、「富める者はますます富み、貧しいものはますます貧しく」とは言い切れませんが、40%の人たちが置いてきぼりになっているのは確かのようです。

好景気の中、所得格差が拡大し、貧困問題が深刻化する現在のドイツでは、少なくなった失業者はもはやスケープゴートではなくなっています。むしろ忘れ去られていると言っていいほど話題になりません。失業者が減った背景には好景気ばかりでなく、ミニジョブやパートタイムなどを含む低賃金労働者が規制緩和によって増加したこともあります。日本の非正規労働者の割合ほどではありませんが。

現在のスケープゴートは言うまでもなく難民です。昨年の連邦議会選挙でついに連邦議会入りし、野党第一党となったAfDがその荒んだ空気の象徴と言えます。

それにしても、2015年秋から2016年春までのいわゆる「難民危機」の間なら難民バッシングや難民排斥的政策を求めるのも分からなくはないのですが、バルカンルートが封鎖されてからは、ドイツまで来る難民は激減しました。難民危機の間は1日で1万人前後の難民がドイツに流入していましたが、今年の新規難民登録は1か月で1万人ちょっとです(出典は連邦統計局サイト)。

今リビア沖で救出された難民たちの受け入れをイタリアやマルタが拒否して、右往左往の挙句にスペインが入港を認めるなど、難民問題の焦点は地中海に移行しており、既にドイツの問題ではなくなったと言えます。それなのになぜ夏季休会直前の数週間与党内、メルケル首相のCDUとゼーホーファー内相のCSUの間で難民問題について激しいバトルが繰り広げられたのでしょうか?そしてバイエルン州首相マルクス・ゾーダー(CSU)が州のイニシアチブで隣国のオーストリアとの国境の警備強化や難民送還問題を激しく取り上げる理由は何でしょうか?

理由として考えられるのは、まずバイエルン州議会選挙のための布石として、CSUがAfD票を取り戻そうとAfDの主張を横取りしているという側面です。CSUはよく「CSUより右に合法的な政党なし」ということを主張してきました。この主張は、AfDという今のところ合法的な政党の存在によって崩されてしまっています。このため、より右寄りになることでAfDに「不満票」を入れた有権者をCSUに惹きつける戦略を取ったわけですが、あまりにも執拗な難民問題バトルは逆効果だったようで、CSUの支持率は下がり、CSU元党首のホルスト・ゼーホーファーの政治家ランキングはがた落ちしました。

もう一つの理由として考えられるのは、国民の目を難民問題に向けることで他の問題から目を逸らさせようとしている政治的意図です。内政問題から目を背けさせるために外敵を作り、それに対して国民を団結させるというのは歴史的によくある政治の常套手段とも言うべきものです。しかし現在ヨーロッパには適した「外敵」が国としては存在しません。その代わりイスラム系テロリストと難民がその役割を果たしていると言えるのではないでしょうか。イスラム系テロリストのスリーパーは既に数年または十何年も前に国内に入っていましたから、「外国籍危険人物の祖国送還」が検討され、新たにそうした危険人物が流入して来ないように入国管理を強化することが検討されるわけです。それらが対策の必要な問題であることは確かですが、これほど国会議論や国民的議論の比重を占めるに値するものであるかどうかについては疑問を差し挟む余地があると思います。

少子化、医師不足や教師不足、介護士・介護ヘルパー不足、所得格差や子供の貧困、老後の貧困などの深刻な内政問題があるのに、そこに割かれる議論の時間や報道の比重が少なすぎる気がします。

「難民」というスケープゴートは、社会の不満分子、特に置いてきぼりにされている下層40%(の少なくとも一部)のガス抜きに利用されている側面もあるようにも思えます。

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ドイツ:2017年度難民申請&認定数統計~申請総数186,644件

ドイツ:ブレーメンで不正難民認定スキャンダル

ドイツ:2017年連邦議会選挙結果

ドイツ:ヘイトスピーチを取り締まるネット執行法発効、最初の削除対象はAfD副党首のツイート

ドイツ:5人に1人の子供が継続的に貧困 ベルテルスマン財団調査報告(2017年10月23日)


ドイツ:2017年度難民申請&認定数統計~申請総数186,644件

2018年05月23日 | 社会

現在ブレーメンの難民保護不正認定スキャンダルが話題になっており、そういえば2017年度の難民統計を確認していなかったことを思い出したので、こちらに記載しておきます。

2017年度の難民認定申請総数は186,644件で、前年より約524,000件、72.5%減少しました。

出身国別に見ると、シリア・アラブ共和国が最も多く、25.4%(48,974)。イラク11.3%(21,930)、アフガニスタン6.6%(16,423)、エリトリア5.1%(10,226)と続きます。

下の地図は出身国を申請数に応じて色分けしたもので、4,067件以上の上位10か国が最も濃い色になっています。ちなみに10位は国ではなく、「出身国不明」です。

色分けは少ない順に

  1. グレー =0件
  2. 薄オレンジ1=1~500件未満
  3. 薄オレンジ2=500~1,000件未満
  4. 薄オレンジ3=1,000~3,000件未満
  5. オレンジ=3,000~4067件未満
  6. 濃いオレンジ=上位10位

 

申請者のうち男性は60.5%でした。

申請者の75.2%は30歳以下で、18歳以下は45%(89,207人)。

保護者同伴なしの未成年者による難民認定申請は9,084件(2016年度:35,939件)で、うち7,786(85.7%)が男子でした。最も多い出身国はアフガニスタン(24.4%)、エリトリア(17%)、ソマリア(13.3%)でした。

 

2017年度の難民保護審査処理総数は603,428件で、うち123,909件(20.5%)が難民保護認定、 98,074件(16.3%)が二次的保護認定、39,659件(6.6%)が国外退去禁止(つまり滞在容認)、232,307件(38.5%)が保護の却下でした。残りの109,479件(18.1%)は形式的な決断です。保護認定率は43.4%となりました。

詳細は"Das Bundesamt in Zahlen 2017 - Modul Asyl(2017年度統計の難民保護の部)"をご覧ください。

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ドイツ:2016年度難民申請&認定数統計~新規入国者は28万人

ドイツ:ブレーメンで不正難民認定スキャンダル


ドイツ:ブレーメンで不正難民認定スキャンダル

2018年05月23日 | 社会

5月初頭から連邦移民難民庁ブレーメン外局での難民認定手続きに大量の不正があったとして騒ぎになっています。

シュピーゲルの報告によると、犯罪前科のある者やISとのつながりが疑われる者あるいは違法な運び屋なども難民保護認定を受けたらしい。ある難民認定申請者は弁護士に現金1,000ユーロを支払い、数か月後にはブレーメンで難民保護の認定を受けたようです。同様の報告が2017年夏にニュルンベルク連邦移民難民庁本部にメールで送られており、それによれば当該弁護士は事前に難民1人当たらり700ユーロを受け取り、ブレーメンへのバスツアーを手配しているとのことでした。

ブレーメン州検察は現在少なくとも1,176件の不正認定について、連邦移民難民庁ブレーメン市外局長およびヒルデスハイム出身の弁護士を始めとする容疑者6人を調査中です。

5月18日(金)、連邦移民難民庁長官ユッタ・コルトが中間報告を発表し、過去数年の容疑のかかっている弁護士が関わった難民認定4,586件を内部監査した結果、数百件(調査件数の約40%)は認定取り下げの必要があるとしました。

またユッタ・コルト長官は、ブレーメン外局で2000年以降に承認された難民保護認定の約18,000件を再調査すると宣言し、およそ3か月かかるとみられる調査に約70人の人員を投入するとのことです。

ブレーメン外局は当面難民認定の決定を下す権限が凍結され、現在ブレーメン外局で進行中の難民申請については他所に引き継ぐことになっています。ドイツでは稀に見る役所スキャンダルです。

ホルスト・ゼーホーファー内相は省内調査で済まそうとしていますが、野党は国会で査問委員会を開くことを求めています。

参照記事:

Spiegel Online, 18. Mai 2018, "Bremer Flüchtlingsbehörde winkte Schleuser und Geheimdienstler durch(ブレーメン難民当局は運び屋や諜報員の難民保護も深く考えずに判を押した)

Zeit Online, 18. Mai 2018, "Auch Schleuser soll in Bremen Asyl bekommen haben(運び屋にも難民保護か)"

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ドイツ:過労による病欠日の増加

2018年05月05日 | 社会

ドイツというと残業も余りせずに長期休暇を取ることで日本でも随分知られていると思いますが、今日はそのイメージとは反対のデータが報じられていました。左翼政党の質問に対してドイツ連邦健康省が回答したもので、それによると、過労・疲労による病欠日数が2012年の1997万日から2016年の3053万日に上昇したとのことです。2017年の集計はまだ出ていないそうです。診断は一貫していないそうですが、一般に「バーンアウト症候群」と呼ばれる慢性的なストレスによる様々な身体的・精神的な症状で病欠した人たちの統計です。

左翼政党の労働問題担当スポークスマン、ユッタ・クレルマン(Jutta Krellmann)は、労働者を消耗品のように扱っていると雇用者及び政府を非難し、「アンチストレス法」の制定を要求しました。

労働省の統計によると仕事を掛け持ちするケースも増えており、2004年には186万人が複数の雇用主を持っていたのが、2016年には313万人に、2017年には326万人になったそうです。これは一つの雇用先からの収入では生活できないことを意味し、最低賃金の導入では不十分であることの表れと見られています。

仕事の掛け持ちはもちろん、合理化のしわ寄せとして一人一人の仕事の密度が上がったことや、人手不足、常時連絡が取れる状態であることなど、緊張状態の続く時間に対してリラックスする時間が少ないことや、介護や育児・家事などの家庭での負担などが原因として挙げられています。「家庭での負担」を裏付けることになるかどうかは分かりませんが、3053万日の病欠日のうち2006万日は女性のもので、男性の約2倍になっていることは注目に値します。

こうして見ると、長期休暇が取れて、リラックスできるのは仕事を掛け持ちする必要がなく、そこそこの賃金をもらっていて、さほど人手不足でない業界で働く労働者たちに許された特権と言えるでしょう。

ニュースになったのはバーンアウトによる病欠日の増加だけでしたが、病欠日全体も急増しています。下のグラフはドイツ連邦統計局による法定健康保険組合の被保険者の1991~2018年の病欠統計で、病欠日の労働日数に占める割合をパーセンテージで示しています。

確かに2012~2018年という短期のタイムスパンで見ると「急増」と言えますが、1990年代前半のレベルには達していません。また、2018年の数値が高くなっているのは年初めに例年以上に流行したインフルエンザのためです。

こうなると、1990年代の過労による病欠日がどのくらいだったか知りたいですね。もしかすると2016年のレベル以上だった可能性もあります。簡単にデータが入手できないのが残念ですが。

因みにドイツには法定健康保険組合の他に民間の健康保険がありますが、人口約8200万人のうち7270万人(2017年末現在)が法定の健康保険に入ってますので、このデータがドイツ全体の傾向であることはまず間違いありません。

ただ、日本のように過労死や自殺ではなく、バーンアウトで【病欠】するところがドイツらしいと言えるかもしれません。ドイツ人は日本人ほど我慢しませんから(笑)

 

参照記事:

Frankfurter Allgemeine, 5. Mai 2018, "Immer mehr Krankheitstage wegen Überlastung(過労による病欠日ますます増加)"

ZDF heute (Video), 5. Mai 2018, "Zunehmende Überlastung am Arbeitsplatz(増える職場での過労)"

Spiegel, 5. Mai 2018, "Stress im Job: Deutlich mehr Krankschreibungen wegen Überlastung(仕事のストレス:過労による病欠大幅増加)"

Deutsche Welle, 5. Mai 2018, "BURNOUT AM ARBEITSPLATZ: Wenn Arbeit krank macht(職場でのバーンアウト:仕事が病気の原因になる場合)"

De.Statista, "Durchschnittlicher Krankenstand in der gesetzlichen Krankenversicherung (GKV) in den Jahren 1991 bis 2018"

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ドイツ:世論調査(2018年3月16日)~大連立をそこそこ支持

2018年03月17日 | 社会

昨年9月の連邦議会選挙から半年、ようやくドイツに新政府が誕生しました。政府成立にかかった時間は史上最高となりました。「大連立(Große Koalition = GroKo)」と呼ばれるキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)とドイツ社会民主党(SPD)の3党連立政権第3弾となります。3月16日にZDFのポリートバロメータという世論調査では、国民がこの新政府についてどう考えているのかが主なテーマです。

大連立

3期目の大連立政権となることをいいと思う人は45%、よく思わない人は38%、「どうでもいい」は15%。
参画している政党内でも特にSPD内では大連立に対する見方が厳しく、大連立支持はたったの58%です。連立契約に賛成か反対かで寸前まで党内を二分する議論がされただけあって、党内の分断がまだ修復されていないようです。

大連立を「停滞」と見なし、メルケル首相を敵視する右翼ポピュリズム政党であるAfDの支持者たちの大連立支持率は当然一番低いのですが、それでも9%の人が支持しているのがちょっと驚きです。

政府の顔ぶれには45%の人が「満足」と答えており、「不満」と答えた31%を上回っています。また、政府内の協働が「うまくいく」と答えた人が半数で、「うまくいかない」の44%をわずかに上回っています。

大連立政権がドイツの問題解決に重要な貢献をするかどうかについては、意見が真っ二つに分かれ、「はい」も「いいえ」も48%の横並びになっています。「ドイツの問題」をどれだけ切実に感じているかで見方が変わるのではないかと思います。切実に感じていれば、大連立政権には大して期待できない、大きな変化は望めないというふうに考えるのが自然でしょう。切実さがなければ、大連立政権でも「まあ、そう悪くはならない」と考えられるのではないかと。

大連立政府が次の連邦議会選挙まで持つかどうかについては、70%の人が「持つ」と答えています。

大連立が長期的にSPDに悪影響をもたらすかどうかについては、「害がある」の50%が「メリットがある」の41%を上回っています。SPD支持者の間でも「害がある」という回答が49%で、「メリットがある」の45%をわずかに上回っています。

 

メルケル首相

今回で任期4期目に入るメルケル首相ですが、首相選出の投票では必要票数をわずか9票上回っただけの得票で、連立与党内の34人が彼女に投票しなかったことになり、権力基盤は盤石とは言い難いです。

メルケルが再び首相になることを55%の人が肯定的に見ており、否定的な41%を上回ってはいるものの、その差は小さいと言えます。ただし党内支持率は85%で、盤石と言えます。

メルケル首相4期目に対する見方を支持政党別に見ると:

CDU/CSU 85%
SPD 55%
AfD 16%
FDP 46%
左翼政党 33%
緑の党 53%

メルケル首相は意外にも緑の党の支持者にも人気があるようですね。

貧困問題

新しく厚生相に就任したイェンス・シュパーン(37、CDU)が「ハルツ4(就労可能者のための生活保護)の受給者は貧乏ではない」と発言したことで物議を醸し、彼にハルツ4の基本支給額で1か月生活することを求めるオンライン署名運動に約14万筆が集まっているほど、ハルツ4が現在ホットな話題なので、ポリートバロメータでもそれが生きるために必要なものに十分かどうかという質問がなされました。

「十分ではない」という回答が55%で、「十分」と答えた37%を大きく上回りました。

支持政党別に「十分」という回答の割合を見ると、保守(CDU/CSU)、右翼(AfD)そして自由民主党(FDP)にその割合が随分と多いようです。貧困に対する理解が少ないのでしょうね。

 

貧困問題とは少しずれますが、男女間の収入格差をなくすことを掲げる3月18日のEqual Pay Dayに合わせて先日ドイツ連邦統計局が発表したところによると、2017年度のドイツにおける男女間の収入格差は21%で、女性は男性に比べて時間当たり4.41€少ない給料をもらっているとのことでした。その傾向は旧西独の方で強く、22%でしたが、旧東独では男女格差は7%だけでした。

世論調査では、「女性と男性は同じ業務に対して同じ給与をもらっているか」という質問に対して87%の人が「いいえ」と答えました。

連邦議会選挙

もし、次の日曜日が連邦議会選挙なら、どの政党に投票しますか:

CDU/CSU(キリスト教民主同盟・キリスト教社会主義同盟) 32%
SPD(ドイツ社会民主党) 19%
AfD(ドイツのための選択肢) 13%
FDP (自由民主党) 9%
Linke(左翼政党) 11%
Grüne(緑の党) 12%
その他 4%

1998年10月以降の連邦議会選挙での投票先回答推移:

 

政治家評価

政治家重要度ランキング(スケールは+5から-5まで):

  1. ヴォルフガング・ショイブレ(元財相)、+2.0(↑)
  2. ジーグマー・ガブリエル(元外相)、+1.5(↓)
  3. アンゲラ・メルケル(首相)、+1.4(→)
  4. チェム・エツデミール(元緑の党党首)、+1.0(↓)
  5. ホルスト・ゼーホーファー(CSU党首・新内相)、+0.3(↑)
  6. サラ・ヴァーゲンクネヒト(左翼政党党首)、+0.3(↑)
  7. マルクス・ゼーダー(新バイエルン首相)、+0.2(↓)
  8. クリスティアン・リンドナー(FDP党首)、+0.2(→)
  9. アンドレア・ナーレス(SPD新党首)、+0.1(↓)
  10. マルチン・シュルツ(SPD前党首・前欧州議会議長)、-0.1(↓)

経済

ドイツ経済の絶好調ぶりは世論調査にも表れており、昨年秋の数値よりもさらに良くなっています。

ドイツにおける一般的な経済状況:

いい 67%
悪い 5%
どちらでもない 27%

自分自身の経済状況:

いい 67%
悪い 6%
どちらでもない 26%

 

参照記事:

ZDF Politbarometer, 16. März 2018, "Verhaltene Zustimmung zur Großen Koalition(大連立の支持率は大きくはない)"

Pressemitteilung Nr. 099 vom 15.03.2018, "Verdienstunterschied zwischen Frauen und Männern in Deutschland 2017 bei 21 %(2017年のドイツにおける男女間の収入格差は21%)"


ドイツ:2017年連邦議会選挙結果


ベルギー・ティアンジュ原発の危険性調査~実はもっと危険だった!

2018年02月01日 | 社会

 ドイツ公営放送WDRの今日(2018年2月1日)放映された「Monitor」という報道番組で、ベルギー原発の実態が明らかにされました。

これまでティアンジュ原発の危険と言えば、主に2号機の圧力容器に発見された「ひび」が問題にされてきましたが、新たなWDRの調査では、実は1号機の方が危険であることが判明しました。問題とされているのは「前触れ事象(Precursor-Fälle)」と言われる事象で、過去3年間だけでベルギー国内に14回起こり、そのうちの8回がティアンジュ原発2号機だったという事実です。ドイツ側の専門家たちはこれらの「前触れ事象」は原子炉の安全性を評価する上で重要なことであり、わずか3年の間に8回も原子炉の基本的機能にかかわる部分(例えば冷却装置など)で不具合を起こした1号機は、明らかに技術的な問題を抱えており、このまま行くと炉心溶融の危険性が高まるという意見ですが、ベルギーの原子力安全庁(FANC)はこれを真っ向から否定し、「前触れ事象は原子炉の安全性を評価するのには適していない。ベルギーの原発は厳格に監視されており、安全である」と主張するばかり。

こうした前触れ事象がチェルノブイリ原発事故の前にもあったと言います。もしその時にもっと詳しくそれらの事象の原因を解明しようとしていれば、あの過酷事故は起こらなかったのではないか、と考える専門家もいます。

ドイツ・ベルギー両国は昨年原子力安全に関する協定を結び、定期的に情報交換などをすることに合意したにもかかわらず、現在までに会合は1回しか開かれておらず、また、その際にはティアンジュ原発2号機の停止について議論されたが、1号機の前触れ事象8件についてはベルギー側から一切情報が提供されなかったそうです。前触れ事象が起こるたびに原子炉を緊急停止していたにもかかわらず、その情報が近隣住民にも提供されなかったことは、改めてベルギー側の住民保護の姿勢の弱さを浮き彫りにさせたと言えます。この1号機は1960年代の技術で建設された非常に古い原子炉で、本来ならばとっくに廃炉になっていたはずなのですが、ベルギー政府は直前で10年間の運転延長を認可してしまいました。

もしベルギーの原発が過酷事故を起こせば、ベルギー国内ばかりでなくオランダ全土およびドイツのノルトライン・ヴェストファーレン州ほぼ全域が放射能汚染されることになるため、特にティアンジュ原発に近いアーヘン市では住民にヨードが配布されました。オランダの安全院も独自調査をし、オランダ・ベルギー・ドイツの防災対策の連携が不十分であるという報告を今年1月に出し、3国の防災対策の見直しを求めました。ただし、その報告書では「事故が起こる確率は低い」とされ、「ベルギーの安全対策と監視はうまく機能している」という疑問の残る評価がされています。

ベルギーの原子力安全庁(FANC)は安全にかかわる情報はすべてホームページで発表しているというスタンスをWDRに対して示しましたが、実際にホームページを調べてみると、「前触れ事象」に関してひと言も言及されていないことが明らかになりました。意図的な隠蔽なのか、前触れ事象に対する見方の違いによるものなのかよく分かりませんが、近隣住民が不安になるような姿勢であることは確かです。

ドイツ連邦環境相は今後もベルギーに古い原発の停止を強く求めていく姿勢を示しましたが、欧州裁判所に提訴することは控えるとのことです。

もう一つWDRの「Monitor」で指摘されたことは、ティアンジュ原発に使用される燃料棒がドイツのウラン濃縮プラントから提供されているということです。これはドイツの「脱原発」政策の矛盾を表すもので、反原発団体からも批判されていることです。つまり、ドイツの「原発」は2022年までにすべて停止する予定ですが、ウラン濃縮プラントに関してはその限りではないという矛盾です。脱原発はあくまでもドイツ国内のことであって、他国が原発を稼働させることについては異存はなく、燃料棒を提供することで、間接的に他国の原発推進に貢献しているわけです。

参照記事:

Zeit Online, 1. Februar 2018, "Tihange: Risse, Pannen, aber kein Plan zum Katastrophenschutz(ティアンジュ原発:ひび、故障、なのに防災計画なし)"

Dutch Safety Board, "Cooperation on nuclear safety", Den Haag, January 2018(ドイツ語版:Untersuchungsrat für Sicherheit, "Zusammenarbeit auf dem Gebiet der nuklearen Sicherheit(原子力安全分野における協力体制)", Den Haag, Januar 2018)

WDR1 "Monitor", 1. Februar 2018(ビデオ)


ベルギー・デゥール原発、またしても事故

ベルギー・ティアンジュ原発の暗黒史


ドイツ:ヘイトスピーチを取り締まるネット執行法発効、最初の削除対象はAfD副党首のツイート

2018年01月02日 | 社会

フェイクニュースやヘイトスピーチが野放図に拡散されるSNSの無法状態に終止符を打つためにできたドイツの新法「ネット執行法(Netzwerkdurchsetzungsgesetz)」が2018年1月1日に発効しました。

ネット執行法とは

「ネット執行法(Netzwerkdurchsetzungsgesetz)」の正式名称は「ソーシャルメディアにおける法執行改善のための法律(Gesetz zur Verbesserung der Rechtsdurchsetzung in sozialen Netzwerken)」といい、正式略称は「NetzDG」ですが、Facebook法とも呼ばれることがあります。この6条からなる法案は2017年6月30日に可決されました。

同法の適用範囲は、ユーザーが任意の内容を投稿できるプラットフォームを提供するいわゆるソーシャルメディアのプロバイダーで、報道機関等のジャーナリストによる投稿しか許されないサイト、個人通信のためのプラットフォームや特定の内容の発信のためのプラットフォームはソーシャルメディアとは見なされず、同法の対象外となります(NetzDG第1条第1項)。

ユーザーが2百万人以下のソーシャルメディアのプロバイダーは同法第2条及び第3条の報告・削除義務が免除されます(NetzDG第1条第2項)。

報告・削除対象となる「違法な内容」とは、ドイツ刑法が定めるところの違憲団体の宣伝材料の拡散(刑法86条)、違憲団体のトレードマークの使用(刑法86a条)、国家を脅かす重大な暴力行為の準備(刑法89a条)、国家を脅かす重大な暴力行為の手引き(刑法91条)、売国的偽造(刑法100a条)、違法行為への公開呼びかけ(刑法111条)、違法行為を行うという脅迫による治安紊乱(刑法126条)、犯罪組織の結成(刑法129条)、テロ組織の結成(刑法129a条)、国外の犯罪およびテロ組織との関わり(刑法129b条)、民衆扇動(刑法130条)、暴力の表現(刑法131条)、違法行為に対する報奨およびその容認(刑法140条)、信教、宗教結社、世界観結社に対する侮辱(刑法166条)、放送・テレメディアを通じた児童ポルノ的内容の提供(刑法184d条)との関連での児童ポルノの拡散・取得・所有(刑法184b条)、侮辱(刑法185条)、中傷(刑法186条)、名誉棄損(刑法187条)、画像撮影による個人の生活領域の侵害(刑法201a条)、恐喝(刑法241条)および証拠となるデータの偽造(刑法269条)に抵触する内容です(NetzDG第1条第3項)。

こうして見ると、必ずしもヘイトスピーチやフェイクニュースだけが取り締まり対象ではないことが明らかになります。

同法第2条でソーシャルメディアのプロバイダーの「違法内容に関する苦情」の報告義務(年間100件以上の場合)が定められ、第3条で「違法内容に関する苦情」の取り扱い方、すなわち苦情が来てから24時間以内に「明らかに違法な内容(offensichtlich rechtswidriger Inhalte)」を削除することなどが規定されています。

同法第4条は罰金規定。最高5百万ユーロまでの罰金が可能です。

同法第5条にはソーシャルメディアのプロバイダーがドイツ国内に通達委任者を置き、その連絡先をプラットフォームに分かりやすく明記することなどが義務付けられています。

第6条は過渡的規定で、第2条の報告は2018年の上半期に対するものを最初の報告とする旨や、第3条の違法内容に関する苦情の取り扱い態勢を同法発効後3か月以内に整えることが規定されています。

 

ネット執行法の問題点

ネット執行法案は議会でもかなり議論が紛糾しましたが、様々な変更が加えられ、法案が可決された後も批判の声は収まっていません。IT業界団体であるBitcomは同法を「法執行に繋がるどころか法令による刑法執行妨害だ」とこき下ろし、ドイツ基本法およびEU法に違反していると鋭く批判しています。

表現及び報道の自由を定めるドイツ基本法第5条第1項には「検閲は、これを行わない(Eine Zensur findet nicht statt)」とあります。その一方でこの権利は絶対不可侵というわけではなく、同条第2項で「これらの権利は一般法による規定、青少年保護のための法規制および個人の名誉権に関する法によって制限される(Diese Rechte finden ihre Schranken in den Vorschriften der allgemeinen Gesetze, den gesetzlichen Bestimmungen zum Schutze der Jugend und in dem Recht der persönlichen Ehre)」というように一応限定可能な権利です。このドイツ基本法との整合性を保つために重要なキーワードが上述の「明らかに違法な内容(offensichtlich rechtswidriger Inhalte)」です。つまり「ネット執行法はあくまでも違法行為の取り締まりのための法律であって、検閲ではない」ということを表すのが「明らかに違法な内容の削除」という限定性なわけです。

しかしながら、一番問題とされているのが、投稿内容が違法であるか否かの判断が一私企業に委ねられていることです。SNSのプロバイダーはとにかく苦情が来てから短時間で対応し、苦情対象となった内容を削除しないと罰金が科せられるため、慎重な判断よりも疑わしきは削除するという方針をとる可能性が大きく、これによって言論の自由が制限されると懸念されています。この判断責任を最も嫌がっているのは当のプロバイダー自身です。「自己規制に関する公的機関」に苦情のあった投稿内容の判断を預けた場合は削除するまでに24時間ではなく7日間の猶予が与えられることになっていますが、まだそのような機関が存在していないので、プロバイダー側は過剰削除に走らざるを得ない状況です。

また、「明らかに違法な内容(offensichtlich rechtswidriger Inhalte)」の解釈というか、境界線がやはり曖昧であることが問題です。そこには対象となっている違法行為の定義自体の曖昧さ、例えば侮辱・中傷・名誉棄損や画像撮影による個人の生活領域の侵害の判断の難しさも含まれます。

 

最初の削除対象はAfD副党首のツイート

新年早々大騒ぎになったのは、右翼政党「ドイツのための選択肢(AfD)」副党首であるベアトリクス・フォン・シュトルヒのムスリムを侮辱していると見られるツイートが削除されたことでした。

事の起こりはケルン市警察が新年のあいさつをドイツ語・英語・フランス語以外にアラビア語でもツイートしたことです。


それに対して「ドイツのための選択肢」(AfD)副党首のベアトリクス・フォン・シュトルヒが「いったいこの国では何が起こっているの?なぜノルトライン・ヴェストファーレン州の公式な警察サイトがアラビア語でツイートするの?そんなことで野蛮なムスリムの集団強姦する男どもを大人しくさせられるとでも思っているのかしら?(Was zur Hölle ist in diesem Land los? Wieso twittert eine offizielle Polizeiseite aus NRW auf Arabisch. Meinen Sie, die barbarischen, muslimischen, gruppenvergewaltigenden Männerhorden so zu besänftigen?)」とツイートで批判しました。この「野蛮なムスリムの集団強姦する男ども(die barbarischen, muslimischen, gruppenvergewaltigenden Männerhorden)」があっという間に炎上し、Twitterは彼女のアカウントを「ヘイト内容に関する規則に反する」として12時間閉鎖しました。

フォン・シュトルヒは自分のツイートのスクリーンショットをFacebookにも投稿しましたが、そこでは「ドイツ刑法第130条民衆扇動に相当する」として投稿記事が削除されました。

ケルン市警察は昨年も同様にアラビア語で新年のあいさつをツイートしていたため、今回の騒ぎには驚きを隠し得ないでいます。これまで数百件のフォン・シュトルヒに対する告発が提出されているとのことですが、実数はまだ明らかにされていません。ケルン市警察は既にフォン・シュトルヒに対して違法告発をし、民衆扇動罪の疑いで捜査を開始しています。

AfD議員団代表のアリス・ヴァイデルはこの件に関してやはり過激なツイート「我が国の役所は、輸入された、匪賊の、手癖の悪い、殴ったりナイフで刺したりする移民暴徒に服従している。@Beatrix_vStorch (フォン・シュトルヒのアカウント)がドイツ国旗を掲げる警察がアラビア語でツイートしたことに対する批判は正当。なのにアカウント閉鎖された!(Unsere Behörden unterwerfen sich importierten, marodierenden, grapschenden, prügelnden, Messer stechenden Migrantenmobs. @Beatrix_vStorch kritisiert zu Recht, dass die (Deutschlandflagge) Polizei auf Arabisch twittert – und wird gesperrt!)」を投稿し、やはりTwitterから記事が削除されました。

両者は「検閲の犠牲者だ」と記者会見やSNSで主張しています。

両者のツイートは私から見れば偏見に満ちた実に低俗な内容ですが、「明らかに違法な内容」であるかと言えば、決してそうとは言えないと思います。ドイツの警察がアラビア語でツイートしたこと自体に対する批判は言論の自由の範囲です。問題の「野蛮なムスリムの集団強姦する男ども」は、必ずしもムスリム全体を指した差別的発言とは言えませんし(差別的内容と解釈する余地ももちろんあります)、文脈からこれらの人たちに対して何らかの攻撃を正当化して呼びかけるような民衆扇動と解釈するのには無理があります。同様にヴァイデルの「...する移民暴徒」も移民全体を指した差別的発言ではなく、あくまでも「そういうことをする移民」という限定的な解釈が成立するため、一概に中傷や侮辱と解釈できませんし、全体の内容はケルン市警察とTwitterに対する批判であるため、民衆扇動的な要素を証明するのはかなり難しいと思います。

今後この新法がどのように運用されていくのか厳しく観察してかなくてはなりません。


参考資料・参照記事: 

buzer.de, "Gesetz zur Verbesserung der Rechtsdurchsetzung in sozialen Netzwerken"(法文)

golem.de, 01.01.2018, "Das große Löschen kann beginnen(大規模な削除が始まる)"

Frankfurter Allgemeine, 31.12.2017, "Löschgesetz verlangt Facebook-Nutzern viel ab(削除法はFacebookユーザーに多大なる要求を突きつける)"

Die Welt, 02.01.2018, "Muslim-Tweet: Strafanzeigen gegen AfD-Politikerin von Storch(ムスリムツイート:AfD議員フォン・シュトルヒに対する告発)"

Frankfurter Allgemeine, 02.01.2018, "Von Storch und Weidel sehen sich als Zensuropfer(フォン・シュトルヒとヴァイデルは検閲の犠牲者だと主張)"


ドイツ:グントレミンゲン原発、本日(2017年12月31日)計画通り停止

2017年12月31日 | 社会

本日(2017年12月31日)、南ドイツ・バイエルン州にあるグントレミンゲン原発の原子炉Bが、脱原発計画に従って停止しました。福島第一原発と同じ型の沸騰水型軽水炉で1984年3月に運転開始しました。

同原発の原子炉Cは同じ1984年の数か月後に運転開始したにもかかわらず、2021年末まで稼働していいことになっています。

グントレミンゲン原発は今日までドイツで唯一稼働中の原子炉が2基ある原発でした。

原子炉Bの発電容量は1.2ギガワットで、現在建設中の世界最大の風力発電の発電容量に相当しますが、だからと言ってドイツが電力を輸入しなければならないことになるわけではありません。ドイツは2011年ですら電力輸出超過でしたし、それ以降も輸出量記録を伸ばし続けています。

それはともかく、残る原子炉Cの即時停止も環境団体から求められています。理由は、この原子炉も福島第一原発と同じ沸騰水型軽水炉で技術的な不安があるということと、使われているMOX燃料がプルトニウムを多く含む危険なものであるということで、まさに「時限爆弾」と言えるからです。

参照記事:

ZDF heute, 31.12.2017, "Meiler in Gundremmingen geht vom Netz(グントレミンゲンの原子炉が運転停止)"

Frankfurter Allgemeine, 31.12.2017, "Atomausstieg in Gundremmingen(グントレミンゲンの脱原発)"


ドイツ:百万年の耐久性を求めて~核のごみ最終処分場選定手続きの提案

ドイツの脱原発、核廃棄物の処理費用は結局納税者持ち~原子力委員会の提案

ドイツ:原発事業者4社、本日(2017年7月3日)核廃棄処理基金へ240億ユーロ振り込み

ドイツ:憲法裁判所で脱原発公判開始

ドイツのエネルギー法改正

ドイツの脱原発~その真実と虚構、現状 (1)

ドイツの脱原発~その真実と虚構、現状 (2)

ドイツの脱原発~その真実と虚構、現状 (3)

ドイツの脱原発~その真実と虚構、現状 (4)― 事後責任法案本日閣議決定

ドイツ:2015年度国外電力取引統計ー脱原発の現状


ドイツ:5人に1人の子供が継続的に貧困 ベルテルスマン財団調査報告(2017年10月23日)

2017年10月23日 | 社会

ドイツ・ベルテルスマン財団が今日発表した貧困調査報告によると、ドイツの子供の21%、つまり5人に1人が継続的又は繰り返し貧困であるという。ここでいう「継続的」は少なくとも5年以上を指しています。「貧困」とされるのはドイツの平均収入の60%以下の収入しかない家庭です。

この21%の内訳は下記のグラフによると、11.6%が「継続的に生活が確保されていない」、5.8%が「継続的に保護を受給」、3.7%が「不安定な収入状況」となっています。

またそれ以外にも9.9%が「一時的な貧困状況」にあります。

 

実際にドイツでの貧困は何を意味しているかを、手に入れられない・諦めなければならない項目を数えることで表現するという調査が行われました。その際23項目の物品および社会的参加の観点について、それらの項目が経済的な理由で欠けているかどうかについて聞き取り調査されました。それら23項目には十分な大きさの住居や洗濯機、ネット接続可能なコンピューターや毎月一定額を貯金できるか、また社会的な観点として毎月映画館に行くことや友達を家に呼んで食事をごちそうするなどの項目が含まれています。

調査の結果、継続的に貧困にある子供には平均的に23項目のうち7.3項目、一時的貧困の場合は3.4項目欠けていることが判明しました。それに対して安定収入が確保されている家庭の子供は平均的に1.3項目諦めるだけで済んでいます。

こうした欠落・諦めは長期的な影響があります。

ベルテルスマン財団代表イェルク・ドレーガーは「子どものうちに貧困によって社会的生活に参加できないと、学校でもチャンスに恵まれにくいことが実証されている。それは後に貧困を乗り超えて自己決定可能な生活をする可能性が低くなるということだ」と主張しています。従って、今後の家族・貧困政策は子供を中心に考えるべきだということです。

 

参照記事:

Bertelsmann Stiftung Studie, 23.10.2017, "Kinderarmut ist in Deutschland oft ein Dauerzustand(子どもの貧困はドイツでは継続的状態であることが多い)"


ドイツ:貧富の格差はヨーロッパ最大

ドイツ:持たざる者ほど多い税等負担~ベルテルスマン財団調査

ドイツ:最新貧困統計(2016年度)


オーストリア:2017年国民議会選挙結果 強烈な右傾化

2017年10月20日 | 社会

 

 

今年のヨーロッパは選挙続きです。ドイツに続いてお隣のオーストリアでも10月15日に国民議会選挙が行われました。19日に郵便投票を含めた最終結果が出ましたのでここに簡単に報告します。

投票率は2013年より5.09%ポイント上昇して80%となり、その上昇率は史上最高だそうです。

一番の勝者はÖVPことオーストリア国民党で31.5%(2013年比+7.5)。

現与党のSPÖ(オーストリア社会党)は選挙翌日の結果ではFPÖ(オーストリア自由党)に負けていましたが、郵便投票分で若干挽回し、得票率26.9%の第2勢力となりました。

右翼政党であるFPÖは得票率26%(2013年比+5.5)で第三会派になりました。

その他議会入りしたのはNEOSおよびピルツ・リストの2党で、緑の党は4%の壁を超えられませんでした。ピルツ・リストというのは元緑の党議員で「対汚職戦士」として知られていたペーター・ピルツが独自に立ち上げた候補者リストのことです。

ÖVPはドイツのCDU/CSU(キリスト教民主・社会同盟)の姉妹政党で、今回の史上最年少の党首セバスティアン・クルツ(31)による右翼を抱き込むような選挙戦略が特にCSUから注目されていました。CSU党首であるホルスト・ゼーホーファーはかねてより「CDU/CSUより右の合法的政党はない」という意見の持ち主で、AfDに負けないように右翼受けする政策を掲げるべきだと主張してメルケル首相と衝突していました。ÖVPの大勝利はもはやゼーホーファーの党内地位を強めるものとはなり得ませんが、メルケル首相の立場を弱めることにはなりそうです。

ÖVPは右翼政党であるFPÖと連立政権を形成するものと見られ、クルツがすでにFPÖ党首ハインツ・クリスチアン・シュトラッヘと会談しています。両党は2000-2002年に連立政権を形成し過去があり、今回はその右翼連合政権の復活となります。

FPÖの得票率26%と比べればドイツの右翼政党AfD(ドイツのための選択肢)が得た13%弱の得票率がかわいく見えて来るものです。FPÖは基本的に反ヨーロッパの立場なので、首相候補のクルツが「オーストリアのEU離脱はない」と主張しているものの、EU政治において、特に難民政策においてはメルケル・ドイツに敵対するものと予想されています。

国民議会選挙の一番の争点は難民政策でした。党首討論を見ましたが、セバスティアン・クルツは他に問題がないかのようにどんなことも難民政策に結び付けて強引に議論を進めているように見受けられました。彼の若さとさわやかな外見による人気がÖVPの得票率の伸びに貢献したという部分もあるでしょうが、彼が煽った難民に対する不安も得票に繋がったことは否定できないでしょう。難民も殆どおらず、直接問題が起こっているとは考えられない地区で特にÖVPの得票率が上がったことがそのことを示しています。

参照記事:

Die Presse, 19. Oktober 2017, "Wahl: Das Endergebnis inklusive Wahlkarten(選挙:郵便投票を含む最終結果)"

Die Presse, 19. Oktober 2017, "Nationalratswahl 2017: Gesamtergebnis, Detailergebnisse, Wahlbeteiligung, Koalitionsrechner und Wählerstromanalyse(2017年国民議会選挙:総合結果、詳細結果、投票率、連立カルキュレータ、有権者動向分析)"


ドイツ:2017年連邦議会選挙結果