徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

ドイツ情報、ヨーロッパ旅行記、書評、その他「心にうつりゆくよしなし事」

書評:伸井太一著『創作者のためのドイツ語ネーミング辞典 ドイツの伝説から人名、文化まで』(ホビージャパン)

2020年02月28日 | 書評ー言語


発売されてから少々時間が経ってますが、伸井太一著『創作者のためのドイツ語ネーミング辞典 ドイツの伝説から人名、文化まで』(ホビージャパン)には発売当初からちょっと注目していて、つい先日割引セールで電子書籍版を購入して読んでみました。

「無駄にかっこいいドイツ語」にあやかってクリエーターが自分のキャラなどのネーミングに使えるように作られた辞典で、ドイツ語学習とは一見関係ないニッチな本のように見えますが、読んでみるとこれがなかなか面白いんです。

本書は、
  • 幻想の章(幻想世界の住人、武器・防具、魔法)
  • 言霊の章(闇の言葉、光の言葉、行動・状態)
  • 人間の章(ドイツの人名、人物表現)
  • 人の営みの章(食文化、生活用品・道具類、街と交通、職業、暦と時間)
  • 人の英知の章(学問、音楽、色彩、人体と医療、国防・軍事)
  • 空と大地の章(大地、天候・自然現象、生物、植物・鉱物、星空と宇宙)
以上6章構成で、それぞれの分野の特徴的な単語(主に名詞)が集められています。採用基準は日本人の耳に「かっこよく聞こえる」かどうかだそうです(笑)

その作成目的はともかくとして、単語リストには日本語・ドイツ語のカタカナ表記・ドイツ語スペル・解説の4項目あり、解説の部分がなかなか勉強になります。このネーミング辞典を機にドイツ語を本格的に学び始めようとする人のために、名詞の性が明記されています。
そして、実にプロフェッショナルで良心的な点は、ドイツ語の発音をカタカナ表記するものの、「ドイツ語の発音を日本語のカタカナで表記するのは厳密的には不可能」と断っていることと、実際の発音を確認したい場合は、Dudenのオンラインサイト duden.de で単語を検索し、その単語の Aussprache の近くにあるスピーカーアイコンを押して正確な発音を聴くように勧めていることです。
ドイツ語は、アルファベットをそのまま読めばいいとか、カタカナ表記を読めば通じるとか主張する人が少なくない中で、この良心的な態度は画期的で、より専門性が高いと言えるでしょう。
カタカナ表記にはいくつか不適切なもの(aや uの後のchをところどころ「ヒ」と表記したり、bの音を「ヴィ」と表記したり)や表記の揺れ(hoch に「ホホ」「ホーホ」「ホッホ」などの表記)がありましたが、「正確な発音はDudenのオンラインサイトで」と言っているので許容範囲かなと思います。「カタカナで大丈夫」と言っておきながらその表記にとんでもない間違いがあるようなどこぞのドイツ語サイトに比べれば、格段に高品質です。

個人的に興味深いと思ったのは幻想の章や言霊の章などの普段のドイツ生活では縁遠い世界の名称やそれにまつわる神話・伝説に関すること、人名の由来・意味の一部、暦の旧名、都市名の由来・意味の一部などでした。また、動物・植物・鉱物ではドイツ語は知っていても日本語の名称を知らないものが結構あったので、私には日本語の勉強になりました(笑)
収録単語数は約4000語だそうで、なかなかボリューミーです。

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ドイツの健康保険がリハビリスポーツ費用負担の申請書を超スピードで処理した話

2020年02月22日 | 健康


持病のリウマチ性関節炎のため、2月18日(火)にリウマチ専門医のところへ定期検診に行き、その際に週一のリハビリスポーツを処方することもできるけどやってみるか聞かれたので、週一ならやってみようかと思い健康保険組合に提出するための書類を作ってもらいました。
この処方付き費用負担申請書(Antrag auf Kostenübernahme Rehasport)を翌日の夕方にスマホで写真を撮って保険組合のアプリで提出しました。
そして、今日すでに50回分(18か月以内)の費用を保険が出してくれるという通知がポストに入っていたのです。

その通知は20日付。つまり、保険組合は申請書を受け取ってすぐに許可を出したことになります。
この処理スピードが凄すぎると驚いています。😲 
リハビリスポーツをどこでやるかは自分で決めていいようですが、費用負担ができるのは、法定健康保険組合と契約しているところだけだそうです。
施設のリストでも同封してくれればもっと親切だったのに、とも思いますが。
それにしても、こういう申請書をアプリでチャチャっと送れちゃうだけでもすごい進んでいると思うのに、なおかつこの処理スピード!
凄いですね~😲 

こんなに早く処理されるとは思っていなかったので、まだどこでそういうのができるのか全く調べていませんでした。なるはやで調べないといけませんね。

書評:アンナ・キャサリン・グリーン著、『医師とその妻と時計』(世界推理短編傑作集1、創元推理文庫)

2020年02月13日 | 書評ー小説:作者カ行


江戸川乱歩編『世界推理短編傑作集1』の6番目に収録されている作品は、アンナ・キャサリン・グリーン著、『医師とその妻と時計(The Doctor, His Wife, and the Clock)』(1895)です。1851年のニューヨークが舞台で、高名で尊敬されている市民、ハスブルック氏が夜中に高級アパートの自宅で射殺された事件についての推理短編です。
犯人の痕跡は(当時の捜査方法では)まったく見つからず、事件は迷宮入りしそうになっていたところ、担当刑事エベニサー・グライスが突然「ハスブルック氏の変死を知らせる最初の声を立てたのは誰だ?」という疑問がわき、再度聞き込みを開始すると、ハスブルック氏の隣人で盲目だが腕の良いザブリスキー医師が「犯人は自分だ」と自供しだします。しかし、動機も銃の入手経路も、犯行後に銃をどこに捨てたかなど、彼の犯行を裏付けるような事実を何一つ言えないし、盲目であるという事実も相まってとても信じられるものではないため、医師は精神異常をきたしているものと見なされます。
医師の主張は果たして真実なのか、もしそうなら、どうやって犯行が可能だったのか、動機は何だったかなどの謎が解かれていきます。
結末は悲劇的です。短編なのに濃厚な人間関係ドラマが詰まっていて、味わい深いミステリーになっています。

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書評:アーサー・モリスン著、『レントン館盗難事件』(世界推理短編傑作集1、創元推理文庫)

2020年02月09日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行

江戸川乱歩編『世界推理短編傑作集1』の4番目の作品としてアーサー・コナン・ドイル著の『赤毛組合(The Red-Headed League)』が収録されていましたが、これは原文で読んだので飛ばして、5番目の収録作品アーサー・モリスンの『レントン館盗難事件』を読みました。
ジェイムス・ノリス卿の館で1年弱の間に3件も盗難事件が起こったので、秘書のロイドが探偵のマーチン・ヒューイットに事件解決を依頼します。
3件の盗難事件にはマッチの燃えカスが残されていたという共通点があり、それをヒントに現場検証と聞き込みで一見不可能に見えるトリックを解き明かすことになります。
短編なのでちょっとあっけない感じもしますが、ソコソコ意外性とユーモアがあっていいですね。

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書評:アントン・チェーホフ『安全マッチ』(世界推理短編傑作集1、創元推理文庫)

2020年02月06日 | 書評ー小説:作者サ・タ・ナ行


チェーホフは『桜の園』などで知られる戯曲作家ですが、実は推理短編小説も書いていたようで、この江戸川乱歩編『世界推理短編傑作集1』の3番目に収録されています。
1885年10月6日、S郡第二警察分署長の官房にプセコーフという技師が、主人である「マルク・イワーヌヴィッチが殺された」という知らせをもたらすところから話が始まります。
捜査を担当するのはニコライ・エルモラーエヴィチ・チュビコフ予審判事とその助手兼書記のデュコーフスキィ。
予審判事はやる気があるのか疑わしい感じで、若手の助手のヒントや提案に対して口汚くののしり、「自分の仕事だけをしろ」「余計な口をはさむな」というようなことばかり言うのですが、自分の捜査を進めているのかどうか作中では言及されていません。推理を進めているのはもっぱらデュコーフスキィの方で、現場に残されていた珍しい安全マッチやを手掛かりに事件を追います。

「なーんだ」とちょっとがっかりするような、ほっとするような、そういう感じのオチです。

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書評:ウィルキー・コリンズ著、『人を呪わば』(世界推理短編傑作集1、創元推理文庫)

2020年02月01日 | 書評ー小説:作者カ行


ウィルキー・コリンズという作家は今まで知らなかったのですが、この『人を呪わば』は江戸川乱歩による「世界推理短編傑作集」1の2番目に収録されています。
舞台は19世紀のロンドンで、捜査課シークストン主席警部と同パルマ―部長刑事、そしてとあるいきさつからひとまず捜査課預かりとなった人物シャーピン氏の間でやり取りされる書簡によって、とある商店主の盗難事件を追います。
シャーピン氏の無能ぶりとそれに見合わぬ自信過剰なところが皮肉に面白いです。
オチはそれほど意外ではないのですが、皮肉なスパイスが効いている結末です。


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