徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

ドイツ情報、ヨーロッパ旅行記、書評、その他「心にうつりゆくよしなし事」

書評:林成之著、『脳に悪い7つの習慣』(幻冬舎新書)

2020年11月22日 | 書評ーその他


audiobook で聞き放題対象になっていたので1.5倍速で本書を聴いてみました。
脳に悪い7つの習慣とは、
(1)「興味がない」と物事を避けることが多い、
(2)「嫌だ」「疲れた」とグチを言う、
(3)言われたことをコツコツやる、
(4)常に効率を考えている、
(5)やりたくないのに、我慢して勉強する、
(6)スポーツや絵などの趣味がない、
(7)めったに人をほめない。
これらをやめるだけで頭の働きが倍増する理由を、脳のしくみからわかりやすく解説しています。

このところ脳科学関係の動画を見たり本を読んだりしていたので知っていることも結構あったのですが、順序だった説明で分かりやすく非常に勉強になりました。
内容を自分なりにまとめると、脳の本能は「生き(のび)たい」「知りたい」「仲間になりたい」という欲求で成り立っている。
記憶には作業記憶(ワーキングメモリーと言われることも多い)の他に体験記憶、エピソード記憶、学習記憶、運動記憶の4種類がある。そのうちいわゆる「記憶力」として重要なのは体験記憶、エピソード記憶、学習記憶の3つ。
まず、脳はあらゆる外界からの刺激を作業記憶にとどめて、作業が終了した後あるいはしなくても自分にとって(特に自分の生存と報酬)重要かどうかを判断し、重要でないと判断されたものは長期記憶に移行することなく消えていく。記憶が形成されるには、3つのルートがある。
「好き」「興味」:入ってきた情報に対して、A10神経群というところで好き・嫌いのレッテルが貼られ、好きのレッテルのついた情報では思考が進み、イメージ記憶として残る。
または「自分にとって嬉しい」と思える情報に対しては、報酬系の神経群が活性化されてやはり長期記憶に残りやすい。報酬系は損得の判断の場合もあるが、基本的には「仲間になりたい」本能に従った利他的な欲求、たとえば、「社会に貢献できる」「誰かを助けられる」などの見通しの方が、利己的な欲求よりも強く反応する。
または心を込めてしたこと。強い自主性に基づいて「これをしよう」と思って取り組んだことは記憶に残る。
この3つのうち最初の「好き」「興味」は入り口として重要であり、ここで「嫌い」「面倒くさい」というネガティブなレッテルが貼られてしまうと後の2つのルートも閉ざされてしまう。だから、まずはどんなことにも興味を持ち、好きになる、楽しいと思うことが重要。
興味深いと思ったのは、ネガティブな言葉や愚痴を言うことによって脳の力がどんどん衰えるということ。それは、様々な情報に対して「嫌い」のレッテルを貼ることに相当するので、記憶も思考も生まれなくなるのだという。

考えたことは随時文章や図にしてまとめると、もやもやと頭の中だけで考えているよりもずっと脳が活性化されるため、記憶力・思考力の向上につながるということが文中で指摘されていましたが、これに関しては最近とみに実感していますね。ブログなど公なところでは書けないようなことも個人的な日記のようなものに書きつけることで考えが整理され、新たな気づきがあり、精神的にも安定を維持しやすくなります。

本書の最後にはチェックリストがあり、自分がどれだけ脳に悪い習慣を克服できたかをチェックできるようになっています。これだけでもすごく価値がありますね。

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書評:五来重著、『仏教と民俗 仏教民俗学入門』(角川ソフィア文庫)

2020年11月19日 | 書評ー歴史・政治・経済・社会・宗教


五来重著、『仏教と民俗 仏教民俗学入門』は、2・3か月前に読み出して、読みかけのまま別のものに手を付けてしまってしばらく放置していたのですが、今日なんとか読み終えました。
非常に興味深い日本人の精神性に関する考察が含まれており、学術的な教義仏教とは全く異なる素朴な人々の信仰、土着の文化に仏教的要素が加わり、様々な祭や習俗の形で残されているものが、非常に優しい目線で紹介されています。
五来重氏は、地位や肩書に胡坐をかいて仏教徒(または僧侶)を名乗る方々がたいそうお嫌いなようで、庶民の信仰に対する優しさとは打って変わって情け容赦ない厳しいお言葉でバッサリと切ってしまっています。そういう激しさも本書の読みどころかもしれませんね。

目次
I 現代と民俗
II 年中行事と民俗
III 祖先崇拝と民俗
IV 庶民信仰と民俗
V 聖と民俗
VI 修験道と民俗



書評:石田リンネ著、『十三歳の誕生日、皇后になりました。4』(ビーズログ文庫)

2020年11月16日 | 書評ー小説:作者ア行


『十三歳の誕生日、皇后になりました。』の第4弾が出ていたので、『茉莉花官吏伝 9 虎穴に入らずんば同盟を得ず 』と一緒に購入し、あっという間に一気読みしてしまいました。

もう『茉莉花官吏伝』と重なる部分はなく、完全に独立した赤奏国のお話になっています。後宮の幽霊話と現在進行形の皇帝・皇后・皇太子暗殺計画などを絡めた、ほどよいサスペンスス―トーリーです。
13歳の皇后・莉杏がとてもけなげで、一生懸命に考えて、ちゃんと大人の気づかいができるのが、ちょっとできすぎのような気がしないでもありません。皇帝・暁月がだんだんそんな彼女に真剣に惹かれ始めて、ちょっと嫉妬してしまうところがかわいらしいですね。
『茉莉花官吏伝』は立身出世物語&恋物語なのでゴールの方向性が見えますが、この皇后を主人公にした、好きな相手とすでに結婚してしまっている設定の物語はそういう明確なゴールは見えません。このまま赤奏国の事件と莉杏の成長物語として展開するのでしょうか?

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茉莉花官吏伝

書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝 皇帝の恋心、花知らず』(ビーズログ文庫)

書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝 2~ 百年、玉霞を俟つ 』(ビーズログ文庫)

書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝 3 月下賢人、堂に垂せず』(ビーズログ文庫)

書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝 4 良禽、茘枝を択んで棲む』(ビーズログ文庫)

書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝 5 天花恢恢疎にして漏らさず』 (ビーズログ文庫)

書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝 6 水は方円の器を満たす 』(ビーズログ文庫)

書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝 7 恋と嫉妬は虎よりも猛し 』(ビーズログ文庫)

書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝 8 三司の奴は詩をうたう 』(ビーズログ文庫)

書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝 9 虎穴に入らずんば同盟を得ず』(ビーズログ文庫)


十三歳の誕生日、皇后になりました

書評:石田リンネ著、『十三歳の誕生日、皇后になりました。 』(ビーズログ文庫)

書評:石田リンネ著、『十三歳の誕生日、皇后になりました。 2』(ビーズログ文庫)

書評:石田リンネ著、『十三歳の誕生日、皇后になりました。3』(ビーズログ文庫)


おこぼれ姫と円卓の騎士

書評:石田リンネ著、『おこぼれ姫と円卓の騎士』全17巻(ビーズログ文庫)


書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝 9 虎穴に入らずんば同盟を得ず』(ビーズログ文庫)

2020年11月16日 | 書評ー小説:作者ア行


『茉莉花官吏伝 9 虎穴に入らずんば同盟を得ず』は、叉羅(サーラ)国に派遣されていた茉莉花が、サーラ国に侵攻しようとする隣国があるために急ぎ帰国命令に従って帰国しますが、その際に司祭の1人で彼女がそもそもサーラ国に行くことになった原因であるラーナシュもともに白楼国の皇帝・珀陽に同盟を求めるために白楼国に行きます。
いろいろな紆余曲折の結果、同盟は叶い、外敵も追い払い、残るのは初めからあった二重王朝問題となります。こうなったときに内乱が勃発しかけて、ラーナシュともう一人の司祭シヴァンともども茉莉花もかなり危機的な状況に陥ってしまいます。
まあ、予想通り茉莉花はサーラ国の司祭たちに恩を売って帰国できるわけですが、そうすると今度は白楼国がきな臭い状況になっていて、「次巻に続く」となっています。
今回は発売早々に買ってしまったので、次巻発売までかなり間がありますね。先が気になって悶絶ものです(笑)
この巻では脇役のちょっとしたエピソードも挟まれていて、ストーリーもなかなか濃いものとなっています。

 

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書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝 皇帝の恋心、花知らず』(ビーズログ文庫)

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書評:アルボムッレ・スマナサーラ著、『現代人のための瞑想法―役立つ初期仏教法話〈4〉』(サンガ新書)

2020年11月14日 | 書評ーその他


慈悲の瞑想』に続いて、アルボムッレ・スマナサーラの『現代人のための瞑想法―役立つ初期仏教法話〈4〉』を読んでみました。
本書では、心を落ち着かせるためのサマナ瞑想と悟りに導くヴィパッサーナ瞑想が分かりやすく紹介されています。
慈悲の瞑想がサマナ瞑想の一種であることを知りました。
心を落ち着かせるのであれば、写経や読経、ひいては音楽やスポーツなどの没頭できるものなどもサマナ瞑想の一種と言えるそうで、なかなか目から鱗が落ちるようなステイトメントでした。
つまり、難しく考える必要はないということですよね。
ヴィパッサーナ瞑想にしても、思考=妄想=悪という価値観の元に思考をしないように、ただあるがままを観察する(または念じる)のが基本で、日常生活のどの瞬間でもやろうと思えばできるという言葉には驚きました。
確かに今ここでしていること、たとえば「息を吸います」「お腹が膨らみます」「息を吐きます」「お腹が縮みます」などという観察をしていちいち心の中で唱えていれば、邪念というかありがちな悩みなどの思考が入る余地がなくなります。
そして、不思議なもので、そのような思考をしない時間が増えると心が穏やかになるのですね。
さすがに上級者向けのヴィパッサーナ瞑想で「無」を体験するというのは想像しがたいですが。
とりあえず簡単なところ、できるところから実践していきたいと思いました。





書評:中井信之著、『美人な「しぐさ」』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

2020年11月05日 | 書評ーその他


5000人以上のモデル、タレントを育ててきた著者が教える、誰でも「美人」に見える「しぐさ」の法則。。。という触れ込みの本書は、本当に誰でもちょっとした心がけ、意識の仕方でできることを分かりやすく教えてくれます。
姿勢、歩き方、ちょっとした手や腕の使い方、服装など。
そしてハイライトはやはり最後の写真の撮られ方でしょう。
その章には「スターキャラクター分析」というテストがあり、恋愛観や仕事でどう評価されたいか、および趣味についての価値観を7つのカテゴリーの質問に点数をつけることで、自分が本当にありたい姿の系統(自然体系、体育会系、癒し系、エレガント系、お嬢様系、セクシー系、アーティスト系)が分かり、それに応じた写真での決め顔・決めポーズをアドバイスしてくれます。
これは、ポージングの専門家である著者ならではの内容ですね。
今後SNS用に撮る写真ではぜひ参考にしようと思ってます。

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書評:齋藤孝著、『質問力 話し上手はここがちがう』(筑摩eブックス)

2020年11月01日 | 書評ーその他


齋藤孝著、『質問力 話し上手はここがちがう』は中田敦彦のYouTube大学の動画で紹介されていた本です。動画では主に中田敦彦の話芸を楽しみ、紹介本は「ネタ」という感じですが、このテーマは興味があるので、もっと詳細に読んでみたいと思って本を買って読んでみました。

目次
プロローグ
第1章 「質問力」を技化する
第2章 いい質問とは何か?―座標軸を使って
第3章 コミュニケーションの秘訣―①沿う技
第4章 コミュニケーションの秘訣―②ずらす技
第5章 クリエイティブな「質問力」
エピローグ

この著者のスタンスは、「話し上手とは聞き上手のことである」という考え方をもっと具体的に「質問力こそがコミュニケーション力のカギ」だというところにあります。
つまり、ただ相槌をうって聞いていれば聞き上手というわけではなく、相手からいい話・深い話を引き出す質問をすること、ひいては相手が自分で気が付いていなかったようなことを質問によって気づかせ、インスピレーションを与えることができるのが目指すべき理想的な聞き上手(質問上手)だということです。こうした質問するという積極的な行為によってコミュニケーションを自ら深めていく能力がコミュニケーション力の神髄であるから、本書はそのための提言という位置づけです。
この大前提のもとに、ではどういう質問が「いい質問」なのか、第2章でいくつかの座標軸を使って説明します。例えば「具体的―抽象的」の縦軸と「本質的―非本質的」の横軸で作る座標軸では、「具体的+本質的」のところがストライクゾーン、「具体的+非本質的」のところは「普段何をしていますか」的なスモールトークゾーン。「抽象的+本質的」な質問は答えにくく、タイミングが悪ければまったく歓迎されないもの。「抽象的+非本質的」が最悪のパターンで、どうでもいいことを抽象的に聞くこと。そして、この最悪パターンの質問をする人が実は一番多く、職業としてインタビュアーをやっている人にも少なくなく、質の悪いインタビューを量産していると、著者はどうやらご立腹のような印象を受けます。
他に3つの座標が提示されています。
  • 縦軸「自分が聞きたいー聞きたくない」、横軸「相手が話したい、答えたいー相手は話したくない、答えたくない」
  • 縦軸「現在の文脈にあっているーいない」、横軸「相手の経験世界、過去の文脈に沿っているー沿っていない」
  • 縦軸「自分が知りたいー知りたくない」、横軸「読者・他の聴衆が知りたいー知りたくない」
この座標軸を使った分析で、おべっか・気配り・大人ゾーン(自分は聞きたくない+相手が話したい)、や相手の知識や状況を考えずに何でもどうしてどうしてと聞くような子どもゾーン(自分が聞きたい+相手は答えたくない)などが浮き彫りになるところが非常に秀逸です。

これらの座標軸を質問の質を見極める指標として、3章4章で具体例を見ていきます。
そして最後の章で、究極の質問というべき、クリエイティブな質問、相手に考えるインスパイアを与える質問とはどういうものかを具体例を挙げてみていきます。
共通して言えるのは、相手のことをよく勉強・観察し、その人しか語れないようなことは何か、今の文脈で重要なポイントは何かを考えてから質問するということだと思います。
細かい聞く技法としては、たとえば相手の言葉を引用して繰り返すことで共通の基盤を築いたり、相手の言葉を自分の言葉で言い換えて「きちんと聞いて理解している」ということを示し、相手の信頼を得たりするのが基本形で、そこから微妙にずらして、第三者の視点を入れてみたり、比喩を使ってみたりして話を発展させていくのが応用編という感じでしょうか。具体例が紹介されているので、分かりやすく、かなり親切な本だと思います。