『石の宗教』に続き、今度は『山の宗教』です。重なる部分もありますが、こちらは特に修験道に焦点を当て、世界遺産に登録された熊野や日光をはじめ、古来崇められてきた全国九箇所の代表的な霊地を巡って、それぞれの縁起や信仰・祭の他、各地に共通する信仰の根底にあるものについて考察します。
平易な言葉で書き下ろされたものらしいですが、固有名詞だから仕方がないとはいえ、やはり漢字が多いですね。特殊な読みにはフリガナがふってありますが、それ以外にもちょっと私には読めないものがありました。
目次
第一講 熊野信仰と熊野詣
第二講 羽黒修験の十界修行
第三講 日光修験の入峰修行
第四講 富士・箱根の修験道
第五講 越中立山の時刻と布橋
第六講 白山の泰澄と延年芸能
第七講 伯耆大山と地獄信仰と妙法経
第八講 四国の石鎚山と室戸岬
第九講 九州の彦山修験道と洞窟信仰
まず、熊野修験道が一番有名なのではないかと思います。少なくとも私が前から知っていたのはこれだけで、他の修験道修行場は全く未知で、修験道の全国的な広がりに驚きました。
また、狭い洞窟を通って一度死に、出てきて生まれ変わったことになる「胎内めぐり」も何かの怪談ミステリーで読んだことがありましたが、それが修験道の洞窟信仰に繋がるとは想像もしていませんでした。
それはともかく、修験道の根底には日本古来の死生観、すなわち、「死後に霊は山に帰る」というもの、異界・黄泉の世界としての山があると著者は考察します。
しかし、罪を犯した者の霊はきちんと山に帰れず、彷徨いながら苦しむので、それを子孫が供養して山へ送ろうとする。これに伴うしきたりがさまざまある。洞窟籠であったり、供花であったり、仏教化して以降は納経であったり。
山で修行して、他人の分の罪まで一緒に滅罪する行者のように、修験道というと山伏・行者のイメージが強いですが、それだけではないということをこの本から学びました。