積読本を消化しようと先月から民俗学関係の本を読み出しましたが、『魔除けの民俗学』はその4冊目となります。
前回読んだ『しぐさの民俗学』と一部重複するところはありますが、〈魔除け〉や〈厄除け〉に焦点を当てているところが違います。
個々のエピソードは非常に興味をそそられますが、やや事典的な羅列で、類似する各地の俗信の根底にある心意に関する考察が弱いような印象をぬぐえません。
目次
はじめに―俗信と魔除け
I 家屋敷と俗信
第一章 生死と境界の空間ー屋根と床下
第二章 植物と家の盛衰ー庭木の吉凶
第三章 他界への出入り口ー井戸
II 生活道具と俗信
第一章 人生の節目を象徴ー箒
第二章 祓う・拒む・鎮めるー蓑
第三章 禁忌と魔除けの呪具ー鍋
第四章 欺く・招く・乞うー柄杓
III 災害と俗信
第一章 地震と唱え言
第二章 幕末土佐の人と動物ー『真覚寺日記』より
第III部で引用されている宇佐村の真覚寺住職・井上静照(1816~69)による『真覚寺日記』は安政地震の惨状を克明に伝える一方、蚊や蚤、鼠などに悩まされる日常もユーモラスに語られているようでかなり面白そうです。
鼠を狩るために猫を飼っているのに、猫が仕事をしないと叱ってその役割を諭そうとしたり、家中蚊だらけになり、払っても無駄なので家を一時蚊に明け渡し、自分はよそへ避難したり、当時の生活がよく描かれているようです。
地震の時は井戸の水位を見て、津波が来るかどうかを判断するのが宇佐浦では普通だったことを批判して、地震が起きたら財産に執着せずにさっさと逃げないと助からないと繰り返し説いているのも興味深い。