民俗学つながりで積読本を消化してきたので、内容的に近い本書『図解 日本人なら知っておきたい しきたり大全』もついでに消化しようと手に取りました。ざっと全体に目を通し、興味を覚えた記事だけを読み込んだだけに留めました。
というのは、本書はカラー図鑑百科事典のようなもので、通しで読めるような代物ではないからです。けれども一家に一冊置いておくべき本だと思います。
挿絵もきれいで、レイアウトも見やすく、説明も分かりやすいです。
まあ、昨今では誰でもスマートフォンを持ち、何か分からないことがあればググることで、冠婚葬祭等のやり方や作法、あらゆるものの金額の相場が調べられるので、一冊の本として本当に必要かというと、そこはちょっと自信を持って断言できないのですが、世の中にはネット検索が苦手な人もいるので、一定の需要はあるのかなと考えます。
本書にも一部のしきたりに関してはその起源や歴史的な意味に軽く触れられていますが、大部分は作法やマナーとして「かくあるべし」的な説明に始終しているため、歴史的背景や民俗学的考察に興味がある人間には全く不向きですが。
それにしても疑問に思うのは、「二十四節季と七十二候」という季節の区分は一体どこの地域が基準になっているのでしょうか? 南北に細長い日本列島は気候の地域差がかなり激しく、旧暦・新暦のずれだけではなく、そもそも全国旧暦だった時代もこれにぴったり合った季節を味わえる地域は実はごく狭い範囲に限られていたのではないでしょうか。
というか、そもそもしきたりというのは歴史を遡るほど地域差が大きくなるので、共通項を探せばかなり大雑把なものしかないはずです。それなのに「日本のしきたり」とあたかも全国一律有効のような表現を使うことに少々違和感が否めません。明治期の国民国家形成期に新たに導入されたものや画一化されたものが相当あるので、どれもこれも何百年も受け継がれてきた文化というわけではないことも意識すべきではないかと思います。
目次
はじめに
本書について
季節のしきたり
旧暦について 二十四節季と七十二候
暮らしと暦 年中行事
人生儀礼 人生の節目のお祝い
赤ちゃんのお祝い
子どものお祝い
おとなのお祝い
長寿のお祝い
慶事のしきたり
婚礼のしきたり
挙式の形式
挙式後のお礼と贈り物
結婚を祝う
日常 お祝い・お礼・お返しの基本
弔事 大切な人を送るとき
臨終から葬儀まで
葬儀の流れ 仏式・神式・キリスト教式
弔事の表書き一覧
お付き合いのしきたり
挨拶挨拶とお辞儀の作法
和室の作法
訪問とおもてなし
食にまつわるしきたり
日常の心遣い
贈答・手紙のしきたり
季節の贈り物
贈り物とお返しのしきたり
手紙のしきたり
巻末付録