集英社文庫
2017年5月 第1刷
459頁
解説・原武史
舞台は東京
地中に潜む「地霊」が歴史の暗黒面を生きた鼠や人間に憑依して、自らの来歴を軽妙洒脱に語りだします
唯一無二の原理は「なるようにしかならぬ」
明治維新、第二次世界大戦、バブル崩壊から福島第一原発事故まで
首都・東京に暗躍した「地霊」の無責任一代記
史実の裏側で、滅亡に向かう東京を予言します
2020年のオリンピッック開催地決定について
実に喜ばしい話です
なんといっても廃墟にこそ浮かれ騒ぎはふさわしいから
幽霊たちが祭りの興奮に煽られ、狂ったように踊り出す様子が眼に見えるようです
派手やかな書割の裏側を走り回る原子鼠が漏らす糞の異臭や、折り重なる死骸の腐臭を異国の客人らに気取られぬよう、せいぜい芳香剤をまき散らすのだけは忘れないで欲しいものです
マァ、そのあたりは「おもてなしの国ニッポン」のことだからうまくやるんだろう
的確な指摘に肯くばかり
コロナ禍真っただ中の東京、ニッポンの姿を予見しています
原さんの解説冒頭
フランスの記号学者、ロラン・バルトが東京の中心、皇居は空虚である、と述べているとあります
本作の主人公=東京は本物なのでしょうか
その場凌ぎの思い付きの結果発展してきた大都会・東京
高い空から俯瞰すれば、人や車の蠢きはまるで鼠か地下動物のように見えるのかもしれません
近い将来必ず起こるとされている首都直下地震か、人為的か偶発的な事故が原因になるのか
全てが崩壊し廃墟になった後、再びこの土地に植物が芽を出し、虫が飛び小動物が走り回るだろう、とは全くの絵空事とは思えない怖さがありました
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