文春文庫
2009年10月 第1刷
解説・三浦雅士
259頁
タイトル「真鶴」は神奈川県にある港町の名です
小田原から清水まで東海道線に乗ったとき、素敵な名前の駅があるものだと思いました
車窓から真鶴半島を眺めただけでしたが、本書を読んだ後だったらまた違う感慨があったことでしょう
12年前に失踪した夫・礼(れい)が日記に残した「真鶴」という言葉に惹かれるように何度か真鶴を訪れるようになった京(けい)
執筆業で生計をたて、実母と礼との間の一人娘・百(もも)と3人で暮らしている
不在の夫への心を残しつつ、出版社の担当者で家族のいる青茲との不倫関係も続けている
誰にも話していないけれど『ついてくる者』がいる
特に真鶴で『ついてくる女』は、はっきりとその姿を見せ会話も成り立ち、礼のその後を知っているらしい
彼女は京に何を伝えようとしているのか
『ついてくる者』は幻聴・幻覚で、彼女は精神を冒されかけているという設定
真鶴で現実に向き合うことが出来るようになり、回復に至るまでの春から翌年春までの一年の物語です
現実から乖離しかけた主人公の精神世界は、現実より現実的な光景を見せてくれます
幽霊を見た、とか臨死体験とか、脳科学で解明されつつあるようですが、人というやっかいな生き物の不透明な部分は曖昧なままにしておいて欲しい、という気もします
このような小説を読む楽しみは残しておいて欲しいので
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