小学館
2020年12月 初版第1刷発行
358頁
認知症を患う80歳の母・万津子を自宅で介護しながら妻とバレーボール部でエースとして活躍する高校2年生の娘と暮らす佐藤泰介
ある時、万津子がテレビのオリンピック特集を見て「私は…東洋の魔女」「泰介には秘密」と呟きます
泰介は九州から東京へ出てきた母の過去を何も知らないことに気づきます
1956年、15歳の時に福岡県大牟田市から集団就職で愛知県一宮市の紡績工場へやってきた万津子
それから2年半が過ぎ、仕事はキツイけれど、仕事の後のバレーボール部の練習は楽しく、休みの日に寮の仲間たちと外出して映画を観たりして日々を過ごしていました
そんな万津子に見合い話が持ち上がり、退職、故郷に戻り19歳で三井鉱山の職員と結婚します
幸せな結婚生活を夢見ていた万津子でしたが、現実は真逆
夫の暴力と子育ての難しさに悩み、実家の母親に相談しますが、夫に尽くし自分は辛抱するのが当たり前、と聞く耳を持ってもらえません
夫が鉱山の事故で亡くなり、2人の息子とともに実家に戻ります
しかし、実家に居場所は無く、さらに幼い泰介が起こした事件をきっかけに、東京へ向かうことにします
1964年と2020年
2度の東京オリンピックの時代を生きる万津子
万津子の女工時代から東京へ出るまでと佐藤家の現在が交互に語られます
東京オリンピックで盛り上がる東京で必死に働き子育てをし、辛かった故郷での暮らしについては一切子どもたちに愚痴もこぼさなかった万津子の『強さ』に頭が下がります
母の過去を探り始めた泰介は同時に自身が日頃から感じている生きづらさに向き合うこととなります
泰介の家庭や会社、外出先での言動が酷いのです!
身勝手なんてものじゃありません
冒頭から不愉快極まりなく、読むのを止めようかと思ったほどなのですが万津子の物語で何とか読み進み、終盤になって発達障害であることが判明
そういうことだったのかぁ
しかし、60歳も近くなってようやくなんて…辛かったでしょうね
ただ、その後の改善ぶりが上手く行き過ぎで引きました
あと、妻と娘の出来が良すぎなのも気になりました
ま、ある意味、泰介の引き立て役かもしれませんけど
母親が自分に厳しくバレーボールを仕込んだ理由を悟った泰介
会社でも自分に合う部署への異動が叶うようで、ようやく落ち着いて暮らせそうです
他人からどう見られようと我が子を信じきった万津子の人生
苦労は多かったけれど悪くなかったと思います
仕事が出来る出来ない、協調性の有無などで安易に人を判断してはいけません
肝に銘じます
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