角川文庫
2008年4月 初版発行
解説・大島一洋
324頁
昭和8年
東京・巣鴨の水道屋の次男・嚝吉は家業を手伝いながら川口松太郎のような小説家を夢見ていた
しかし頭の中に浮かぶのは美しい女との××のことばかり
嚝吉は様々な女と出会い、魅かれ、人生の愉しさ儚さを知り、一歩ずつ大人への階段を上っていく
昭和初期の東京の下町・巣鴨を舞台に都々逸や小唄を挿みながら男女の情をミステリー仕掛けで描いています
テレビなどで見る現代の巣鴨とは随分風情が違うようですね
戦前の巣鴨に記憶のある方には嚝吉の暮らす町の様子が手に取る様に浮かぶのではないでしょうか
嚝吉という、頭で考えるより行動が先にきてしまう困ったやんちゃ坊主が愛おしく思えてくる不思議なお話です
久世さんは川口松太郎の「人情馬鹿物語」「続人情馬鹿物語」に匹敵する大長編にするつもりで
続編を終戦まで書いて、第二作は戦後、第三作は東京オリンピックまで、という構想を持っておられたそうですが惜しくも2006年逝去
それはそれは読み応えのある大長編が読めたことでしょうに…
残念です
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