読書と映画とガーデニング

読書&映画&ガーデニング&落語&野球などなど、毎日アクティブに楽しく暮らしたいですね!

辻堂ゆめ「トリカゴ」

2023年04月16日 | た行の作家


東京創元社
2021年9月 初版
390頁

蒲田署刑事課強行犯係巡査部長の森垣里穂子は殺人未遂事件の捜査中に無国籍者が隠れ住むコミュニティを発見します
そのコミュニティ、通称“ユートピア”のリーダーはリョウと呼ばれる青年、事件の容疑者・ハナは彼の妹でした
無国籍者を取り巻く状況を知った里穂子は捜査によって彼らが唯一安心して暮らせる場所を壊してしまうのではないかと苦悩します
しかし、24年前に日本中を震撼させた“鳥籠事件”との共通点に気づき、特命捜査対策室の羽山と共に捜査を進めます

児童虐待や無国籍問題に真剣に取り組んだ社会派ミステリー
里穂子が警官になろうと考えた直接の動機は6歳の時にテレビニュースで見た鳥籠事件でした
まるで鳥籠の中のようにアパートの一室に閉じ込められていた3歳の男の子と1歳の女の子が救出され児童養護施設に送られたという事件で、母親は保護責任者遺棄の疑いで逮捕されていました
それから一年、施設で暮らしていた鳥籠事件の被害幼児2人が何者かに誘拐されるという事件が発生
再びマスコミを賑わしますが、2人は消息不明のまま時が流れ捜査本部は解散していました

里穂子は、捜査を始めた当初は鳥籠事件の捜査の役に立ちたいという下心がありました
しかし、それはやがて無国籍に苦しむユートピアの住人たちを支えたいという純粋な思いに変わっていきます
それなのに一部の住人には拒絶されてばかりで何度も心が折れそうになります
そんな彼女を支えてくれるのは夫と1歳になる一人娘
刑事という職業柄、家事、育児のほとんどを夫に任せている里穂子
夫に申し訳ないと思い離婚も考えるのですが、夫さんはそんな狭量な男性ではなかったのです
彼女にとっては夫と娘のいる家庭こそががユートピアなのだと気づくところは読んでいてこちらも嬉しくなりました

細かく張られた伏線が終盤に向け収束していくのはお見事
読みながら引っ掛かっていたもの全てが解決してスッキリしました
読んで良かったと思った理由は、ミステリーを楽しめたのと、本書のテーマである無国籍という単語は知っていても、実際の無国籍者の方々の苦労や苦悩については全くといっていいほど知らなかったこと、自分がこれまで日本国民として生きてきたことが当たり前でないことに気づかされたから、でした
最近では丸山茂樹さんのデフヴォイスシリーズから同じように多くの気づきを貰っています


辻堂さん初読
他作品も読みたいです



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« おうち映画(日本)・雨鱒の... | トップ | 宇佐美まこと「羊は安らかに... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

た行の作家」カテゴリの最新記事