みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0256「引きこもりの神様」

2018-07-11 18:58:24 | ブログ短編

「なあ、どうして天岩戸(あまのいわと)に引きこもっちゃったんだ?」神様(かみさま)の一人が訊(き)いた。
「なんか、時(とき)を数えるのに嫌気(いやけ)がさしたんだって」女神(めがみ)の一人が答(こた)えた。
「だって、時の神だろ。それが仕事(しごと)じゃないか。嫌になったからって、無責任(むせきにん)だよ」
「じゃ、俺(おれ)が岩戸(いわと)を壊(こわ)して、引きずり出してやるよ」闘(たたか)いの神が言った。
「壊したらダメよ。ここは私に任(まか)せて」水の神が言った。「水攻(ぜ)めにすれば出てくるわ」
 神様たちは、あれやこれやと知恵(ちえ)を絞(しぼ)ってみたが、なかなか意見(いけん)がまとまらない。
「こうなったら、昔(むかし)やったみたいに、みんなでどんちゃん騒(さわ)ぎして開けさせようよ」
 神様たちは、それがいいと賛成(さんせい)の手を上げた。でも、時の神をよく知る神様が、
「無理(むり)よ。あの神様、そういうの興味(きょうみ)ないし。どっちかっていうと静かな方が好きでしょ」
「そうだな。ほんと、時の神って付き合い悪(わる)いからなぁ」
「それは仕方(しかた)ないわ。時の神様が楽しんじゃうと、時間が早く進(すす)んじゃうじゃない」
「何とかしないと、時が止まったままじゃ大変(たいへん)なことになるぞ」
 美(び)の女神が控(ひか)え目に口をはさんだ。「ここは、様子(ようす)を見た方がいいんじゃないかなぁ。しばらく、そっとしておいてあげようよ」
 田(た)の神が美の女神に駆(か)け寄って言った。「あんたは、時が止まった方がいいからそんなことが言えるのよ。まさか…。純情(じゅんじょう)な時の神に、ちょっかいとか出したりしてないでしょうね」
<つぶやき>神様の世界でも、いろんなことがあるんです。人間と変わらないのかもね。
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