やっと落ち着いた典子(のりこ)は、この世界(せかい)のことを動物(どうぶつ)たちから聞かされた。今、この世界を支配(しはい)しているのはモドキと呼(よ)ばれる連中(れんちゅう)で、彼らは地面(じめん)の下からやって来ていた。そして、地上(ちじょう)にいるものをさらって行くという。まさに、典子もさらわれるところだったのだ。
今まで典子と同じ人間が大勢(おおぜい)連れて行かれ、誰(だれ)一人戻って来ることはなかった。ただ一人を除(のぞ)いて。その一人というのが、動物たちがヒロシと呼ぶ人物(じんぶつ)だった。
ヒロシは町外れの研究所(けんきゅうしょ)にいたようだ。典子は、そんな研究所があるなんて全く知らなかった。彼女は動物たちに訊(き)いてみた。
「そのヒロシという人は、まだそこにいるの?」
「ああ、そこで眠(ねむ)っているよ。――俺(おれ)たちのところへ戻って来たときには瀕死(ひんし)の状態(じょうたい)で、もうどうすることもできなかった。ヒロシは最後(さいご)に言ったんだ。ゲートを捜(さが)せと」
「ゲート? それは、何なの?」
動物たちは鳴(な)き声を上げた。小さな犬は、典子の手に前足を置くと、
「別の世界とつながる入口さ。あんたは、その別の世界から来たんじゃないのか?」
「うん、たぶん。ねえ、そのゲートが見つかれば、私は自分の世界へ戻れるのかな?」
「やっぱりそうか――」犬はひと声吠(ほ)えると、「反撃(はんげき)のときが来た!」と叫(さけ)んだ。
<つぶやき>これからどうなるのか? ヒロシという人物がカギをにぎっているのかも。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。