小学生の娘(むすめ)が両親(りょうしん)を前にして質問(しつもん)した。「ねえ、パパと、ママと、どっちが偉(えら)いの?」
両親は一瞬(いっしゅん)ビクッとしたが、すかさずパパが先手(せんて)をとった。
「そりゃ、パパの方(ほう)なんだぞ。なんたって、この家の総理大臣(そうりだいじん)なんだから」
「あら、そうとは限(かぎ)らないのよ」ママは抜(ぬ)け目なく、「この家の大蔵大臣(おおくらだいじん)がいなきゃね」
娘は二人の顔を見較(みくら)べて、何か考えているようだ。パパは父親の威厳(いげん)を見せようと、
「パパには、家族(かぞく)を守(まも)るという大切(たいせつ)なお仕事(しごと)があるんだ。そのためにパパは、毎日遅(おそ)くまで働(はたら)いているんだぞ」
ママはせせら笑(わら)って言った。「守るって。――パパのお仕事だけじゃやっていけないのよ。だから、ママもパートで頑張(がんば)ってるの」
「なに言ってんだよ。どうせ、暇(ひま)つぶしでやってるだけじゃないか」
「あなたこそ、無駄遣(むだづか)いばっかして。そんなんだから、いつまでたっても…」
娘は大きくため息(いき)をついて、もういいからと自分(じぶん)の部屋へ行ってしまった。
「あなたがいけないのよ。毎晩(まいばん)飲み歩いてるくせに、偉(えら)そうなこと言って」
「何だよ。お前だって、子供ほっといて好き勝手(かって)してるじゃないか」
その時、娘が部屋から顔を出して言った。「静(しず)かにして、勉強(べんきょう)してるんだから。私、偉くなることに決(き)めたの。普通(ふつう)の人生(じんせい)がいかにつまらないかって、よーく分かったから」
<つぶやき>人生を考えるのに、早過(はやす)ぎるってことはないのかも。大きな夢(ゆめ)を持ちましょ。
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