みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0259「一途な思い」

2018-07-14 18:55:24 | ブログ短編

「なんで…、何でよ」妃美香(ひみか)は洋一(よういち)の腕(うで)をつかんで訴(うった)えた。
 洋一は彼女の手を振りはらい、「お前とは別れるってことだよ。もううんざりなんだ」
 そこへ安男(やすお)か息(いき)を切らして駆(か)けつけて来て、「洋ちゃん、やめろよ」
 安男が妃美香を見ると、彼女は唇(くちびる)をかみしめて目に涙(なみだ)をためていた。安男は狂(くる)ったように洋一につかみかかり、
「妃(ひめ)は、お前のことほんとに好きなんだぞ! それを…」
 洋一は殴(なぐ)りかかってきた安男を、難(なん)なく打ちのめした。力の差は歴然(れきぜん)としていた。
 洋一は吐(は)き捨(す)てるように、「お前には関係(かんけい)ねえだろ。そうか、お前もこいつのこと…」
「こいつって言うな。妃は…、妃は…」
「好きにしていいぞ。こんな女、お前にやるよ。お前ならお似合(にあ)いかもな」
 洋一は、妃美香を無視(むし)して行ってしまった。妃美香の目から涙がこぼれる。
「何でよ。何で来るのよ」妃美香はかすれた声で言うと、安男の前にしゃがみ込んだ。
「だって、約束(やくそく)しただろ。妃を泣かす奴(やつ)がいたら、僕(ぼく)がぶん殴(なぐ)るって」
「いつの約束よ。そんな子供のときの約束なんて…。あたし、忘れたわ。もうやめてよね。あたし、あなたとなんか付き合うつもりないから」
 妃美香は立ち上がり、安男に背(せ)を向けてゆっくりと歩き出す。安男は彼女の心に届(とど)くように叫(さけ)んだ。「それでもいいんだ。僕は、忘れないから。絶対(ぜったい)、忘れない!」
<つぶやき>子供の頃に何があったのでしょ。彼の気持ちが、彼女に届くといいのですが。
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