みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0271「もうひとつの世界9」

2018-07-27 18:59:02 | ブログ短編

 典子(のりこ)は聞き覚(おぼ)えのある声を聞いた。何度(なんど)も何度も自分の名前(なまえ)を呼んでいる。
 典子は大きく息(いき)をつくと、目を覚(さ)ました。彼女の目の前にいたのは、
「神谷(かみや)君…。神谷君なの? どうしてここに…」
 典子が驚(おどろ)くのも無理(むり)はない。そこにいたのは、彼女の恋人(こいびと)だったのだ。その青年(せいねん)は、
「もう大丈夫(だいじょうぶ)。あいつらは逃(に)げて行きましたから。しばらくは戻って来ないでしょう」
 典子は涙(なみだ)があふれてきて、思わず彼に抱(だ)きついた。その時だ。どこからか声が聞こえた。
「お取り込み中、申(もう)し訳(わけ)ないんだが…。お邪魔(じゃま)してもいいかな?」
 突然(とつぜん)、装置(そうち)のパネルが外(はず)れて、中から白髪(はくはつ)の老人(ろうじん)が顔を出した。老人は装置の中から這(は)い出すと大きく伸(の)びをして、「やれやれ、やっとそろったな。これで、仕事(しごと)に取りかかることができる」
「あなた、誰(だれ)なの?」典子は恐(おそ)る恐る訊(き)いた。
「わしか? わしは、神崎(かんざき)じゃ。あいつらにはヒロシと呼ばれていた。まあ、時の番人(ばんにん)ってとこかな。ちなみに、その青年はあんたの恋人じゃないぞ。あんたの孫(まご)だ」
 典子は青年の顔を見た。青年はにっこり微笑(ほほえ)む。彼には分かっていたようだ。
「さあ、始めるぞ。あいつらが戻って来る前に修正(しゅうせい)するんだ」
 老人と青年は装置の前に立って、ボタンを押(お)したりダイヤルを回したり、忙(いそが)しく動き回る。それにつれてランプの点滅(てんめつ)が変化(へんか)していく。典子はあっけにとられるばかりだった。
<つぶやき>何がどうなっているの? でも、やっと信用(しんよう)できる人たちが現れて、一安心(ひとあんしん)?
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