みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0626「未来の話」

2019-08-13 19:22:15 | ブログ短編

 彼は思いつめた顔で彼女に言った。「君(きみ)といても、僕(ぼく)たちの未来(みらい)が見えてこないんだ」
 彼女は信じられないという顔で、「どうして? あたしにはちゃんと見えてるわよ」
「君が見てる未来って、どんな感じなのかな?」彼は恐(おそ)る恐る訊(き)いた。
「そうね…。あたしは、やりがいのある仕事(しごと)をもっとやって、会社(かいしゃ)に認(みと)められるでしょ。で、もっと重要(じゅうよう)な仕事を任(まか)されるの。それで――」
「その君の未来に、僕はいるのかな?」
「もちろんいるわよ。あなたがいなくちゃ、あたし困(こま)るわ。だって、家のことは誰(だれ)がやるの? あなたの方が、家事(かじ)とか得意(とくい)じゃない。だからあたし、あなたと…」
 彼は悲(かな)しげな目をして言った。「そこには、愛(あい)はあるのかな?」
「あい? それは…、あるわよ。決(き)まってるじゃない。あたし、あなたのこと、こんなに愛してるのよ。そうでしょ? だからあたし、あなたのプロポーズを受けたのよ」
 彼は立ち上がると、自分の感情(かんじょう)を押(お)し殺(ころ)すように言った。
「それは、違(ちが)うよね。君は、僕のことなんか愛してなんかいない。君が愛してるのは…」
 彼女は彼をなだめるように言った。「なに言ってるの? もう、あたしが愛してるのはあなただけよ。そうでしょ? あたしがいっぱい稼(かせ)いでくれば、あなただって嬉(うれ)しいはずよ。今よりも、良い暮(く)らしができるの。二人で幸(しあわ)せになりましょ」
<つぶやき>愛とは何なんでしょうね? 二人が、同じ未来を描(えが)けるといいのですが…。
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