みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0629「リセット言葉」

2019-08-16 18:47:07 | ブログ短編

「僕(ぼく)たち、もうダメだよ。別れよう。もう君(きみ)とは付き合えない」
 彼女は、彼から唐突(とうとつ)に別れを切り出された。彼女にとっては青天(せいてん)の霹靂(へきれき)、雷(かみなり)に打たれた以上(いじょう)の衝撃(しょうげき)だった。彼女は絞(しぼ)り出すように言った。「ちょっと待ってよ」
 彼女の意識(いしき)が突然(とつぜん)飛んだ。時間が巻戻(まきもど)り、気づけば彼が別れ話を切り出す前に戻(もど)っていた。――最初(さいしょ)、彼女は戸惑(とまど)った。しかし何度も同じことを繰(く)り返すうち、彼女は冷静(れいせい)さを取り戻した。そして気づいたのだ。〈ちょっと待ってよ〉って言えば、時間が戻ってしまうことに。彼女は考えた。どうすれば、彼を思いとどまらせることができるのか…。
「わたし、絶対(ぜったい)別れないからね!」彼女は先制攻撃(せんせいこうげき)を仕掛(しか)けたが、これは逆効果(ぎゃくこうか)だった。
 次はしおらしく、「わたしに悪(わる)いところがあったら言って。わたし、なおすから…」
 彼は、彼女の悪いところを羅列(られつ)して…、結局(けっきょく)、別れ話に突入(とつにゅう)してしまった。
 彼女は、もう何も思いつかなかった。彼と別れたくない。彼のことこんなに大好きなのに、何で別れなきゃいけないのよ。彼女はやけくそのように言った。「結婚(けっこん)して! わたしには、あなたしかいないの!」
 これには、彼もひるんだようだ。別れようと思っていた相手(あいて)から、こんな言葉(ことば)が出るなんて…。彼は戸惑いながら言った。「僕で…、僕なんかでいいのか?」
「もちろんよ。こんなわがままで、何にもできないわたしだけど、お願(ねが)いします!」
<つぶやき>これで元通(もとどお)りになったのか…。結局、別れ話の原因(げんいん)って何だったんでしょう?
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