あかねは悩(なや)んでいた。突然(とつぜん)、職場(しょくば)の人に告白(こくはく)されて…。思わず、「はい」と言ってしまったのだ。そして、明日、初めてのデート…。あかねはベッドの上へ服(ふく)を並(なら)べたまではよかったが、どれを着ていけばいいのか…。そもそも、何で私なんかに告白したんだろう?
あかねが溜息(ためいき)をついたとき、妹(いもうと)が部屋(へや)に入って来た。あかねは妹に彼のことを話した。
「お姉(ねえ)ちゃん、やったじゃない。じゃあ、あたしの服、貸(か)してあげるよ。お姉ちゃんって、地味(じみ)な服しか持ってないでしょ。そんなんじゃ嫌(きら)われちゃうよ」
妹は自由奔放(じゆうほんぽう)な性格(せいかく)で、誰(だれ)からも好(す)かれて、いつも輪(わ)の中心(ちゅうしん)にいるような娘(むすめ)だった。それに比(くら)べてあかねは、周(まわ)りに気をつかって何事(なにごと)も無難(ぶなん)に生きてきた。あかねは、
「ダメよ。あなたのは派手(はで)すぎるわ。それに、あの人が私のこと何で好きになったのか…」
「もっと自信(じしん)を持ちなよ。お姉ちゃんは、あたしと顔立(かおだ)ちも似(に)てるし、スタイルだってあたしより良いじゃない。――じゃあ、あたしがその人のこと見てあげる。紹介(しょうかい)してよ」
「それは…、イヤよ。そんなことしたら、彼、あなたのこと好きになっちゃうかも…」
「でしょ! やっぱりあたしの服を着ていった方がいいよ。お姉ちゃんも、その人のこと気になってるんでしょ。あたしに任(まか)せて。お姉ちゃんにぴったりの服、持ってくるから」
妹は部屋を出るとき振(ふ)り返って言った。「女は本能(ほんのう)よ。自分の直感(ちょっかん)を信じなきゃ」
<つぶやき>好きの基準(きじゅん)は性格重視(せいかくじゅうし)って男は言うけど、綺麗(きれい)な娘(こ)に目が行くのも事実(じじつ)です。
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