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Tシャツとサンダルの候

霧の三俣山


キャンプ二日目の朝。



私達は長者原にいる。

登る山は三俣山。

西峰、本峰、北峰と周り、鍋底に降りて紅葉を見上げたい。

ただし、私と長崎の義兄の体調と天候次第だが。

私のお腹の具合を言えば、今のところ小康状態と言ったところだ。



指山はいい具合に色づいている。

問題はこの雲だ。

目標の三俣はスッポリと雲に覆われ、その姿を見ることが出来ない。






今年のくじゅうの紅葉は、色づく前に落ちてしまうんじゃないか。

そんな声も聞こえてきたが、

どうしてどうして。



この数日で、急速に色づきを見せている。

三俣の鍋底から見上げる紅葉は、さぞかしきれいな事だろう。



鉱山道路の両脇には、去年の大規模土石流の土砂が積み上げられている。

同時に砂防堰堤の工事も行われていた。






現場事務所前を通りかかる。


「この先、通れますよね?」

「通れますよ。但し、自己責任でお願いします。あのー、誠に申し訳ありませんが・・・」


自己責任通行の由を説明した写真を撮らせてくれと言う。

この道路は諏峨守越えへと続く道である。

我々の安全のために、日夜頑張ってくれているのだ。

嫌だ!なんて言える筈なかろう。


「どうぞどうぞ、こんな顔でよかったら。なんなら30枚ぐらい撮ってもかまいません。」



鉱山道路をショートカット。

笹を分け入って進む。



ガレ場を登り、




再び鉱山道路へ合流する。




諏峨守越え。

前を行く義兄を見て欲しい。

恐るべき事に、何もかも脱ぎ捨てて、半袖のTシャツ一枚である。

かなり風も出てきたし、体感温度は一桁だ。

しかも私と同じで、体調万全とは言いがたいのに。


「ダウン着てる人すらおるのに。半袖やら一人もおらん。着なはれ!」

「だって、暑いんだもん。」


人並み外れた暑がりと自認する私ですら、口を開けてあんぐりするほか無い。



季節を忘れたミヤマキリシマ。

義兄と同じである。



三俣山取り付き。

10m先が見えない。

やれやれだ。



西峰稜線が見えてきた。




到着。




続けて本峰到着。

言っておく。

私のこの表情は、この天候状態に歯がみしている訳ではない。

怒ってもいない。

これでも爆笑しているのだ。


さてさて、10m先も見えないこの状況。

北峰まで行っても、肝心の紅葉など見られる筈がない。

ましてや、この風と寒さである。


「今回はここで帰ろう。」



と言う事で、本峰から降りてⅣ峰へ。




すると・・・・・






晴れて来てやんの。




見る間に雲がとれ、全く見えなかった中岳や久住山までバッチリである。



『降りたら晴れる!』

鉄則が炸裂した。



「どうする?」

「戻ってまたガスガスになったら、100倍悔しか。帰ろう。」



取り付きまで降りてきた。

同じアングルで撮った、登る前の画像と比べてみて欲しい。

何たる皮肉か。


鉱山道路まで降りてくると、目標だった三俣北峰が見えてきた。


フンだ。

悔しくなんかないやい!



それより何より、無事下山できた事が何よりである。





・・・粗相もせずに。

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