旅の途中、風の便りに聞こえてきたのは、
『今年のくじゅうの紅葉は素晴らしい!』
である。
中でも大船山の御池が良かったようだが、現在、見頃は過ぎてしまったらしい。
ひょっとしたら三俣なら。
そんな淡い期待を抱きつつ、大曲登山口へと向かう。
どっしりとした三俣の山容が、目の前に見えてきた。
いつものように、すがもりのガレ場を越え、
三俣山西峰取りつきへ。
軽登山を含めて、1か月ぶりの山登りである。
若干、スタミナを心配していたが、存外に足取りも軽く、、、
というより、むしろ普段より絶好調と言っていい。
サクッと西峰到着。
山頂標識付近にいた若者から、
「ずっと向こうに雲から浮かんでる、あの山なんすかね。」
「ありゃ、普賢岳たい。」
「ひょえー、オイ、普賢岳だって!」
若者の質問に答えたら、さっさと本峰へ。
イエーイ、本峰到着だぜ。
と、ここら辺りまでは調子よかったのだが・・・
久住別れから、ポカンと顔を出す根子岳。
こちらは大船だ。
確かに頂上付近には紅葉は見えない。
段原から坊がつるに向かって、紅葉前線は降りてきているようだ。
さて、お目当ての北峰だ。
大鍋を覗き込むと、
おお!
遠目にはまだまだ良さそうじゃないか。
では、北峰への激坂を下るとするか。
ニューシューズよ。頼んだぞ。
奈落へと落ちて行くような傾斜が続き、
やっと、北峰への鞍部まで降りてきた。
ホッと一息である。
北峰南斜面の紅葉、中々いいじゃないか。
ホッと一息ついたら、当然、登り返しが待っている訳で。
北峰山頂到着だ。
狭い登山道が続く。
灌木に体を擦られながら進んでいくと、
鍋底への降り口が見えてきた。
実は北峰の山頂付近から、股関節と右膝に若干の違和感が生じて来ている。
これまでの経験だと、早晩右膝には、歩きづらい程の痛みがやって来る筈だ。
どうしよう。
急坂だし、膝に負担が・・・
えーい、降りたれ!!
てな訳で、鍋底である。
先着していたグループが、反対側の登山道へ引き返している。
どうやら鍋底にいるのは、私一人になったらしい。
ワーイと鍋底を一周、スキップしたいところだが、我儘な右膝がいつ怒り出すかも分らぬ。
無駄な動きは、厳に慎みたい。
一カ所に留まり、シャッターを切るに留めた。
鍋底から戻ると、今度は南峰への登り返しが始まる。
途中、坊がつるが眼下に。
南峰到着だ。
少し休憩しよう。
それにしてもだ。
股関節と膝に違和感が出て、ここまで随分歩いて来ている。
先程も書いたように、とうに膝が傷みだしてもいい頃なのだが。
不思議な事に、まだ普通に歩けている。
とは言え、なるべく膝へ負荷を与えないようにした方がよさそうだ。
大事を取って、Ⅳ峰はスルーしよう。
西峰方向へ。
途中からガレ場を降りて北千里へ。
ゴリラ岩を振り返り、
スガモリ小屋で昼食だ。
『もう一杯 がおーーー』by 北野日奈子
こらこら、荒ぶるんじゃない、日奈子ちゃん。
結局右膝は、痛みとは言えない違和感は続いたものの、最後まで足を引きずらずに、普通に歩く事が出来た。
一か月の山登り休憩が、結果的に良かったのか?
初めて施したテーピングが功を奏したのか?
いずれにせよ、膝が痛いと泣きべそをかかずに済んだし、ギリギリだが、くじゅうの紅葉を見れた。
誠に目出度い事である。