山田修の「展望!ビジネス戦略」
イオンに異変、業績悪化で株価急落
総合スーパー、消費者離れ深刻化で迫る終焉
文=山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役
【この記事のキーワード】イオン, スーパー, 流通
イオンモールの店舗(「Wikipedia」より/わたらせみずほ)
1月13日の東京証券取引市場でイオン株が急落した。
約1カ月ぶりの安値となる1,126円まで売られ、
終値は前日比6%安の1,143円50銭となった。
この日の東証1部値下がり率ランキング上位である。
主因は前週9日に発表した2014年3~11月期の連結決算が市場予想を下回り、
警戒感が広がったこと。連結営業利益は、
前年同期比48%減の493億円となった。
15年2月期の通年見通しは営業利益2,000億円から2,100億円のまま見直しされなかったが、
市場はそれを絶望的と見たわけである。
イオン全体の業績不調の主因は、本業である総合スーパー(GMS)事業である。
GMS中核事業子会社であるイオンリテールの営業損益が、
14年3~11月期は182億円の赤字に転落(前期は57億円の黒字)。
同年3~8月期は75億円の赤字だったが、
直近3カ月で107億円の赤字がさらに上乗せされた格好だ。
大型化など改装店舗は一部好調だが、
既存店売り上げが前期比2.4%減と不振。
特に衣料品が4.1%減と大きく落ち込んだほか、
食品も2.3%減と苦戦した。
イオンの岡崎双一・専務執行役GMS事業最高経営責任者は
「改装は順次していくが、(店舗数が多く)分母が大きいのでどれぐらい早くできるか」
(今月9日の発表)と述べている。岡崎専務はまた、
「価格政策で消費増税後の対応に失敗した。
値上げしたのではないかと思われる値付けをしてしまった」
と敗因を語った。
●曲がり角迎えたGMS
しかし、イオンの不調は、大型小売店舗をチェーン展開するGMSの業態が
いよいよ曲がり角に来ていることの現れともいえる。
ここ最近、消費者が大型GMSを訪れる頻度は少なくなりつつある。
日常の買い物は、コンビニエンスストアや、アマゾン、
楽天などのインターネット購入へシフトしてきた。
リアル店舗で探し回るより、ネットでの大量一括比較、
そして検索型のショッピングが効率的となってきた。
もしくは、専門店チェーンへ行くこともあり、
野菜や総菜などの日々の購買なら中小規模のスーパーで済ませることも多い。
逆に贈答品などの一部高級品は、
伝統的なブランド力がある百貨店で購入する。
つまり、GMSはあらゆる業態に消費者を奪われているのだ。
日本の小売業態はここ20年ほどの間に大変貌を遂げてきた。
それは「大から小へ、さらに無店舗(ネット)へ」という大きな流れだ。
この流れを象徴する大きな出来事が昨年重なった。
まず7月28日にそごう前会長だった水島廣雄氏が亡くなった。
一度は「地域一番の巨艦店主義」でそごうを日本最大のデパートに育て上げた経営者だが、
そごうは2000年に民事再生法を申請し、
事実上の経営破綻に追い込まれる。
水島氏は翌年、強制執行妨害容疑で逮捕され、
06年には有罪判決が確定した。水島氏の逝去と共に、
デパート時代は終息したともいえる。
昨年12月26日には、ダイエーの上場が廃止された。
半世紀以上日本の小売業界を牽引してきたダイエーは、
支援を受けてきたイオンの完全子会社となった。
18年にはダイエーのブランド、屋号そのものが消滅する予定だ。
GMSで最大のプレイヤーだったダイエーが倒産し消滅していくわけだが、
実は吸収したイオン自身も同じ業態なので、
その将来が万全というわけではない。GMSという業態の未来は暗い。
(文=山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役)
●山田修(やまだ・おさむ)
経営コンサルタント、MBA経営代表取締役。
20年以上にわたり外資4社及び日系2社で社長を歴任。
業態・規模にかかわらず、不調業績をすべて回復させ
「企業再生経営者」と評される。
実践的な経営戦略の立案指導が専門。
「戦略カードとシナリオ・ライティング」で各自が戦略を創る
「経営者ブートキャンプ第11期」が5月より開講。
1949年生まれ。学習院大学修士。米国サンダーバードMBA、
元同校准教授・日本同窓会長。法政大学博士課程(経営学)。
国際経営戦略研究学会員。
著書に 『本当に使える戦略の立て方 5つのステップ』、
『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』(共にぱる出版)、
『あなたの会社は部長がつぶす!』(フォレスト出版)、
『MBA社長の実践 社会人勉強心得帖』(プレジデント社)、
『MBA社長のロジカルマネジメント-私の方法』(講談社)ほか多数。
「有限会社MBA経営 公式サイト」
http://senryaku.p1.bindsite.jp/
「山田修の戦略ブログ」
http://yamadaosamu.blogspot.com/
http://biz-journal.jp/2015/01/post_8708.htmlより
イオンに異変、業績悪化で株価急落
総合スーパー、消費者離れ深刻化で迫る終焉
文=山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役
【この記事のキーワード】イオン, スーパー, 流通
イオンモールの店舗(「Wikipedia」より/わたらせみずほ)
1月13日の東京証券取引市場でイオン株が急落した。
約1カ月ぶりの安値となる1,126円まで売られ、
終値は前日比6%安の1,143円50銭となった。
この日の東証1部値下がり率ランキング上位である。
主因は前週9日に発表した2014年3~11月期の連結決算が市場予想を下回り、
警戒感が広がったこと。連結営業利益は、
前年同期比48%減の493億円となった。
15年2月期の通年見通しは営業利益2,000億円から2,100億円のまま見直しされなかったが、
市場はそれを絶望的と見たわけである。
イオン全体の業績不調の主因は、本業である総合スーパー(GMS)事業である。
GMS中核事業子会社であるイオンリテールの営業損益が、
14年3~11月期は182億円の赤字に転落(前期は57億円の黒字)。
同年3~8月期は75億円の赤字だったが、
直近3カ月で107億円の赤字がさらに上乗せされた格好だ。
大型化など改装店舗は一部好調だが、
既存店売り上げが前期比2.4%減と不振。
特に衣料品が4.1%減と大きく落ち込んだほか、
食品も2.3%減と苦戦した。
イオンの岡崎双一・専務執行役GMS事業最高経営責任者は
「改装は順次していくが、(店舗数が多く)分母が大きいのでどれぐらい早くできるか」
(今月9日の発表)と述べている。岡崎専務はまた、
「価格政策で消費増税後の対応に失敗した。
値上げしたのではないかと思われる値付けをしてしまった」
と敗因を語った。
●曲がり角迎えたGMS
しかし、イオンの不調は、大型小売店舗をチェーン展開するGMSの業態が
いよいよ曲がり角に来ていることの現れともいえる。
ここ最近、消費者が大型GMSを訪れる頻度は少なくなりつつある。
日常の買い物は、コンビニエンスストアや、アマゾン、
楽天などのインターネット購入へシフトしてきた。
リアル店舗で探し回るより、ネットでの大量一括比較、
そして検索型のショッピングが効率的となってきた。
もしくは、専門店チェーンへ行くこともあり、
野菜や総菜などの日々の購買なら中小規模のスーパーで済ませることも多い。
逆に贈答品などの一部高級品は、
伝統的なブランド力がある百貨店で購入する。
つまり、GMSはあらゆる業態に消費者を奪われているのだ。
日本の小売業態はここ20年ほどの間に大変貌を遂げてきた。
それは「大から小へ、さらに無店舗(ネット)へ」という大きな流れだ。
この流れを象徴する大きな出来事が昨年重なった。
まず7月28日にそごう前会長だった水島廣雄氏が亡くなった。
一度は「地域一番の巨艦店主義」でそごうを日本最大のデパートに育て上げた経営者だが、
そごうは2000年に民事再生法を申請し、
事実上の経営破綻に追い込まれる。
水島氏は翌年、強制執行妨害容疑で逮捕され、
06年には有罪判決が確定した。水島氏の逝去と共に、
デパート時代は終息したともいえる。
昨年12月26日には、ダイエーの上場が廃止された。
半世紀以上日本の小売業界を牽引してきたダイエーは、
支援を受けてきたイオンの完全子会社となった。
18年にはダイエーのブランド、屋号そのものが消滅する予定だ。
GMSで最大のプレイヤーだったダイエーが倒産し消滅していくわけだが、
実は吸収したイオン自身も同じ業態なので、
その将来が万全というわけではない。GMSという業態の未来は暗い。
(文=山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役)
●山田修(やまだ・おさむ)
経営コンサルタント、MBA経営代表取締役。
20年以上にわたり外資4社及び日系2社で社長を歴任。
業態・規模にかかわらず、不調業績をすべて回復させ
「企業再生経営者」と評される。
実践的な経営戦略の立案指導が専門。
「戦略カードとシナリオ・ライティング」で各自が戦略を創る
「経営者ブートキャンプ第11期」が5月より開講。
1949年生まれ。学習院大学修士。米国サンダーバードMBA、
元同校准教授・日本同窓会長。法政大学博士課程(経営学)。
国際経営戦略研究学会員。
著書に 『本当に使える戦略の立て方 5つのステップ』、
『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』(共にぱる出版)、
『あなたの会社は部長がつぶす!』(フォレスト出版)、
『MBA社長の実践 社会人勉強心得帖』(プレジデント社)、
『MBA社長のロジカルマネジメント-私の方法』(講談社)ほか多数。
「有限会社MBA経営 公式サイト」
http://senryaku.p1.bindsite.jp/
「山田修の戦略ブログ」
http://yamadaosamu.blogspot.com/
http://biz-journal.jp/2015/01/post_8708.htmlより