スタバの「フラペ」が1日40万杯売れる理由
なぜ好調なのか?関根純CEOに聞く(上)
06:00
東洋経済オンライン
スタバの「フラペ」が1日40万杯売れる理由 なぜ好調なのか?関根純CEOに聞く(上)
スタバ日本法人は、上場廃止後も絶好調を維持している (撮影:尾形文繁)
(東洋経済オンライン)
米国本社のTOB(株式公開買い付け)で、
完全子会社化されたスターバックス コーヒー ジャパン。
2015年3月の上場廃止後も成長は続いているのか。
足元の業績動向をはじめ、コンビニコーヒー台頭の影響など、
販売戦略全般について関根純CEO(最高経営責任者)に聞いた。
――前2015年3月期は売上高1,378億円、
純利益80億円といずれも過去最高を記録した。
上場廃止後も勢いは続いているのか。
米本社の子会社となり、数字の部分を大っぴらにできない。
が、(上場廃止後も)既存店売上高は前年比でプラスが続いている。
トップに就任して4年半になるが、
売り上げ、利益とも過去最高を更新する見通しだ。
牽引役は夏場に売れる氷菓飲料の「フラペチーノ」。
特に季節限定の商品が好調に推移している。
2015年7月に発売したピーチのフラペ商品は
1日あたり1店舗で380杯提供した。
全国のスタバで40万杯を売ったことになる。
米国や中国など他国のスタバでも
季節商品は販売されているが、
1日30〜40杯売れれば良い方だと聞く。
日本ではツイッターなどSNSによる拡散効果も大きい。
新商品の発売初日には店舗に並んで、
いち早くSNSのアップするのが
一つのムーブメントになっているようだ。
新しい商品に共感してもらうと同時に、
スタバがファッションブランド化
している側面もあるかもしれない。
コンビニコーヒーとどう戦うのか?
――フラペ商品が強すぎて、
夏場に利益が集中してしまう面もある。
強いところは落とす必要はないし、
落として比率を変える必要もない。
今年の秋冬はドリンカブルフルーツといって、
果物の果肉を入れたティー商品を
1カ月単位で投入している。
新商品の投入で、フード関係も良くなっている。
全体的に数字は上昇している。
――コンビニエンスストアでは
カウンターコーヒーが市民権を得ている。対策は?
コンビニ全体では100円コーヒーを
年間15億杯売っているそうだが、
そこに引っ張られてわれわれの数字が
落ちていることはない。
コンビニコーヒーは非常に美味しいし、
フレッシュな味だ。
コーヒーの裾野を広げたことは間違いない。
だが、それに対抗して100円コーヒーを出そうという考えは
まったくない。われわれの数字が落ちていないのは、
味や品質に自信があるのはもちろん、
店舗環境の充実やサービスを徹底してきたことが大きい。
――スターバックスというブランドが
確立したことも、対コンビニの優位性なのでは?
われわれがクオリティを下げた途端に、
お客様はすぐに気づく。
ブランド価値を向上させるには、
消費者の店の使い方に合わせて
店舗のあり方も変えていかなくてはならない。
タブレット端末やスマートフォンを使用する人が
この数年で一気に増えた。
そういう方のために、Wi-Fi環境を整えたり、
コンセントを設置してきた。
これはTOB後にしたわけではない。
この4〜5年間でそういうことをやってきたことが、
今の成果につながっている。
――2015年は「ブルーボトルコーヒー」や
「コーヒービーン」といった米国初の
コーヒー店が相次いで日本への進出を果たした。
生意気な言い方かもしれないが、
よそ様と比べて何かをしようということはない。
自分たちをブラッシュアップさせることに注力してきたし、
これからもそれを続けていく。
日本にはもともと喫茶店という文化があるし、
「コメダ珈琲」やすかいらーくが運営する
「むさしの森珈琲」という郊外型の店も出てきた。
いろんな形態がどんどん広がっている。
サードウェーブのコーヒーは
われわれとはタイプが異なり焙煎は浅い。
それを好む方はいいが、
スタバは焙煎がしっかりしたものを提供している。
各社がそれぞれのやり方で戦っているということだ。
米・シアトル辺りでは
コーヒー屋さんはスタバしかなく、
他社をほとんど見ない。そのかわり、
コンビニ以上にスタバがある。
それは米国ブランドによる攻めの手法で、
一気に面でおさえることでライバル勢を排除している。
この手法はスターバックスに限らない。
日本は人口密度の高いところに競合がたくさんある。
競合をいちいち気にすると自分たちが潰れてしまう。
その中で際立ったブランドのイメージ性を保つには、
かなりの努力をしなければならない。
スタバ独自の接客とは?
――人口減少とともに日本市場も縮小傾向にある。
少子高齢化による人口減は避けて通れない。
それに対し、どういう具体策をとっていくのか。
流通や小売りの世界では当たり前だが、
自分たちのユーザーがどういう人で
何を求めているかをしっかり分析する。
それは店ごと、地域ごとによっても異なる傾向がある。
われわれはチェーン店であることは間違いないが、
チェーン的なことはしていないつもりだ。
――チェーン的でないというのは、具体的にどういうことか?
通常のメニューやドリンクは一緒だが、
1,000店舗あれば1,000店舗の個性がある。
お客様をしっかり見据えて、
ニーズに応える店舗が集まったチェーンが
今のスタバだと思う。
飲食店の形態はセルフとフルサービスがある。
スタバはセルフだが、
サービスをしていないわけではない。
オペレーションを効率化するために、
お客様に並んでいただき、商品をお渡ししているが、
できるだけお客様と
コミュニケーションをとるようにしている。
接客は「こんにちは」という会話からスタートするし、
毎日来るお客さんとの会話も楽しむ。
手が空いていればカウンターの前に出て行って
直接サ-ビスをすることもある。
オフィス街と地方のショッピングモール内の店舗では
雰囲気が違うので、サービス、オペレーション、
店作りにしても、変えていく必要がある。
チェーン店でも、そういうことを
柔軟に考えてやってきたということだ。
――現在の出店状況は?
ハイペースで出店している。
今、多いのは地方のドライブスルー併設店が多い。
ツタヤとの取り組みも増えており、
ライセンス店も増加傾向にある。
都心ではJRの駅ナカなど、
今まで出店がしにくかったところから
声をかけてもらっている。
特に地方は力を入れていて、
会社全体を支えてくれる存在となりつつある。
地方の人口動態やお客様の年齢層も含めて
展開していく必要があるが、
正直「ここは大丈夫か?」
といった立地でも調子が良い(笑)。
――人手不足や建築費の高騰で出店を抑える外食チェーンが目立つ。
抑制どころかお尻をたたいている。
地方では大学があるところでは、
学生アルバイトが多く集まる。その反面、
学校がないと若い働き手がいなく
人手に苦労する地域があるのも事実だ。
ショッピングモール内に出店すると、
最初はモール全体で2,000〜3,000人を雇用する。
スタバでも最初は20〜30人くらいほしいけど、
実際に集まるのは10人ちょっと。
オペレーションが始まり、
評判が広まって徐々に増えてくるパターンが多い。
新期出店はバランスを重視する
東京のスタバで働く従業員のうち、7割は学生の方。
全国平均でも6割を占める。以前は
マクドナルドで働くことが社会現象だったが、
今はスタバで働くことがそうなりつつある。
地方ではシニアの方も活躍しており70歳近くの従業員もいる。
人手は十分ではないが、他社ほどの不足感はない。
全国1,000以上の店舗で働く人が3万人いて、
その人たちがブランドを作ってくれている。
従業員調査では約90%の方が満足している、
と回答した。そういう意味でも従業員を裏切れないし、
彼らが自信を持って案内できる商品を開発していくことが重要だ。
――都心では駅ナカ以外でも出店しているのか。
売り上げが著しく高い店舗の近くには、
新しい店を早く作って競争させる。
売り上げを下げないと、いつ行っても
席が空いていない状況が続くからだ。
都心の繁華街では土日に席を確保できないことが目立つ。
従業員のストレスも増えてしまう。
一方で「またスタバかい」となると、
ブランド価値を下げてしまう。
店数が増えてもプレミアムな存在であり続けるのが、
今のテーマでもある。
毎週火曜日には出店の審議会を行う。
事前に開発担当が場所を探して、
契約の1歩手前にきた案件を最終審査するのが目的だが、
それを精査するレベルも上がってきた。
失敗したケースはゼロではないが、
非常に少なくなった。
20年近くやってきているので、
ノウハウも身についてきたと感じる。
後日、インタビュー後編を掲載予定です。
http://news.goo.ne.jp/article/toyokeizai/business/toyokeizai-98226.html
なぜ好調なのか?関根純CEOに聞く(上)
06:00
東洋経済オンライン
スタバの「フラペ」が1日40万杯売れる理由 なぜ好調なのか?関根純CEOに聞く(上)
スタバ日本法人は、上場廃止後も絶好調を維持している (撮影:尾形文繁)
(東洋経済オンライン)
米国本社のTOB(株式公開買い付け)で、
完全子会社化されたスターバックス コーヒー ジャパン。
2015年3月の上場廃止後も成長は続いているのか。
足元の業績動向をはじめ、コンビニコーヒー台頭の影響など、
販売戦略全般について関根純CEO(最高経営責任者)に聞いた。
――前2015年3月期は売上高1,378億円、
純利益80億円といずれも過去最高を記録した。
上場廃止後も勢いは続いているのか。
米本社の子会社となり、数字の部分を大っぴらにできない。
が、(上場廃止後も)既存店売上高は前年比でプラスが続いている。
トップに就任して4年半になるが、
売り上げ、利益とも過去最高を更新する見通しだ。
牽引役は夏場に売れる氷菓飲料の「フラペチーノ」。
特に季節限定の商品が好調に推移している。
2015年7月に発売したピーチのフラペ商品は
1日あたり1店舗で380杯提供した。
全国のスタバで40万杯を売ったことになる。
米国や中国など他国のスタバでも
季節商品は販売されているが、
1日30〜40杯売れれば良い方だと聞く。
日本ではツイッターなどSNSによる拡散効果も大きい。
新商品の発売初日には店舗に並んで、
いち早くSNSのアップするのが
一つのムーブメントになっているようだ。
新しい商品に共感してもらうと同時に、
スタバがファッションブランド化
している側面もあるかもしれない。
コンビニコーヒーとどう戦うのか?
――フラペ商品が強すぎて、
夏場に利益が集中してしまう面もある。
強いところは落とす必要はないし、
落として比率を変える必要もない。
今年の秋冬はドリンカブルフルーツといって、
果物の果肉を入れたティー商品を
1カ月単位で投入している。
新商品の投入で、フード関係も良くなっている。
全体的に数字は上昇している。
――コンビニエンスストアでは
カウンターコーヒーが市民権を得ている。対策は?
コンビニ全体では100円コーヒーを
年間15億杯売っているそうだが、
そこに引っ張られてわれわれの数字が
落ちていることはない。
コンビニコーヒーは非常に美味しいし、
フレッシュな味だ。
コーヒーの裾野を広げたことは間違いない。
だが、それに対抗して100円コーヒーを出そうという考えは
まったくない。われわれの数字が落ちていないのは、
味や品質に自信があるのはもちろん、
店舗環境の充実やサービスを徹底してきたことが大きい。
――スターバックスというブランドが
確立したことも、対コンビニの優位性なのでは?
われわれがクオリティを下げた途端に、
お客様はすぐに気づく。
ブランド価値を向上させるには、
消費者の店の使い方に合わせて
店舗のあり方も変えていかなくてはならない。
タブレット端末やスマートフォンを使用する人が
この数年で一気に増えた。
そういう方のために、Wi-Fi環境を整えたり、
コンセントを設置してきた。
これはTOB後にしたわけではない。
この4〜5年間でそういうことをやってきたことが、
今の成果につながっている。
――2015年は「ブルーボトルコーヒー」や
「コーヒービーン」といった米国初の
コーヒー店が相次いで日本への進出を果たした。
生意気な言い方かもしれないが、
よそ様と比べて何かをしようということはない。
自分たちをブラッシュアップさせることに注力してきたし、
これからもそれを続けていく。
日本にはもともと喫茶店という文化があるし、
「コメダ珈琲」やすかいらーくが運営する
「むさしの森珈琲」という郊外型の店も出てきた。
いろんな形態がどんどん広がっている。
サードウェーブのコーヒーは
われわれとはタイプが異なり焙煎は浅い。
それを好む方はいいが、
スタバは焙煎がしっかりしたものを提供している。
各社がそれぞれのやり方で戦っているということだ。
米・シアトル辺りでは
コーヒー屋さんはスタバしかなく、
他社をほとんど見ない。そのかわり、
コンビニ以上にスタバがある。
それは米国ブランドによる攻めの手法で、
一気に面でおさえることでライバル勢を排除している。
この手法はスターバックスに限らない。
日本は人口密度の高いところに競合がたくさんある。
競合をいちいち気にすると自分たちが潰れてしまう。
その中で際立ったブランドのイメージ性を保つには、
かなりの努力をしなければならない。
スタバ独自の接客とは?
――人口減少とともに日本市場も縮小傾向にある。
少子高齢化による人口減は避けて通れない。
それに対し、どういう具体策をとっていくのか。
流通や小売りの世界では当たり前だが、
自分たちのユーザーがどういう人で
何を求めているかをしっかり分析する。
それは店ごと、地域ごとによっても異なる傾向がある。
われわれはチェーン店であることは間違いないが、
チェーン的なことはしていないつもりだ。
――チェーン的でないというのは、具体的にどういうことか?
通常のメニューやドリンクは一緒だが、
1,000店舗あれば1,000店舗の個性がある。
お客様をしっかり見据えて、
ニーズに応える店舗が集まったチェーンが
今のスタバだと思う。
飲食店の形態はセルフとフルサービスがある。
スタバはセルフだが、
サービスをしていないわけではない。
オペレーションを効率化するために、
お客様に並んでいただき、商品をお渡ししているが、
できるだけお客様と
コミュニケーションをとるようにしている。
接客は「こんにちは」という会話からスタートするし、
毎日来るお客さんとの会話も楽しむ。
手が空いていればカウンターの前に出て行って
直接サ-ビスをすることもある。
オフィス街と地方のショッピングモール内の店舗では
雰囲気が違うので、サービス、オペレーション、
店作りにしても、変えていく必要がある。
チェーン店でも、そういうことを
柔軟に考えてやってきたということだ。
――現在の出店状況は?
ハイペースで出店している。
今、多いのは地方のドライブスルー併設店が多い。
ツタヤとの取り組みも増えており、
ライセンス店も増加傾向にある。
都心ではJRの駅ナカなど、
今まで出店がしにくかったところから
声をかけてもらっている。
特に地方は力を入れていて、
会社全体を支えてくれる存在となりつつある。
地方の人口動態やお客様の年齢層も含めて
展開していく必要があるが、
正直「ここは大丈夫か?」
といった立地でも調子が良い(笑)。
――人手不足や建築費の高騰で出店を抑える外食チェーンが目立つ。
抑制どころかお尻をたたいている。
地方では大学があるところでは、
学生アルバイトが多く集まる。その反面、
学校がないと若い働き手がいなく
人手に苦労する地域があるのも事実だ。
ショッピングモール内に出店すると、
最初はモール全体で2,000〜3,000人を雇用する。
スタバでも最初は20〜30人くらいほしいけど、
実際に集まるのは10人ちょっと。
オペレーションが始まり、
評判が広まって徐々に増えてくるパターンが多い。
新期出店はバランスを重視する
東京のスタバで働く従業員のうち、7割は学生の方。
全国平均でも6割を占める。以前は
マクドナルドで働くことが社会現象だったが、
今はスタバで働くことがそうなりつつある。
地方ではシニアの方も活躍しており70歳近くの従業員もいる。
人手は十分ではないが、他社ほどの不足感はない。
全国1,000以上の店舗で働く人が3万人いて、
その人たちがブランドを作ってくれている。
従業員調査では約90%の方が満足している、
と回答した。そういう意味でも従業員を裏切れないし、
彼らが自信を持って案内できる商品を開発していくことが重要だ。
――都心では駅ナカ以外でも出店しているのか。
売り上げが著しく高い店舗の近くには、
新しい店を早く作って競争させる。
売り上げを下げないと、いつ行っても
席が空いていない状況が続くからだ。
都心の繁華街では土日に席を確保できないことが目立つ。
従業員のストレスも増えてしまう。
一方で「またスタバかい」となると、
ブランド価値を下げてしまう。
店数が増えてもプレミアムな存在であり続けるのが、
今のテーマでもある。
毎週火曜日には出店の審議会を行う。
事前に開発担当が場所を探して、
契約の1歩手前にきた案件を最終審査するのが目的だが、
それを精査するレベルも上がってきた。
失敗したケースはゼロではないが、
非常に少なくなった。
20年近くやってきているので、
ノウハウも身についてきたと感じる。
後日、インタビュー後編を掲載予定です。
http://news.goo.ne.jp/article/toyokeizai/business/toyokeizai-98226.html