迷走著しいマクドナルドがそれでも安泰な意外な理由
HARBOR BUSINESS Online
1月2日(土)16時21分配信
迷走著しいマクドナルドがそれでも安泰な意外な理由
閉店が相次ぐマクドナルド。ネット上では、街のシンボルだった店舗を名残惜しむ声も相次いだ
赤字が過去最悪の数字に。
11月11日、日本マクドナルドが
「1~9月の最終赤字292億円」と発表したことが、
各方面で取り沙汰された。しかし、
このような危機的状況を思わせる中、
「まだまだ安定飛行」と見るのは、
店舗経営コンサルタントの佐藤昌司氏だ。
「現時点で、業績が相当に厳しい状況なのは
間違いありません。業績悪化の原因は明らかで、
2014年7月の賞味期限切れ問題、
2015年1月の異物混入問題です。
なぜなら、不祥事直前の’14年第2四半期決算では
純利益18.5億円の黒字であり、
業績が下がりつつも利益を確保し続けていました。
しかし、不祥事を発端に売上が激減、
赤字に転落したのです」
安全性や企業イメージの影響は、
想像以上の大きさなのだ。しかし、
決算内容を見てみると、回復の兆しも見えるという。
「赤字額は第1四半期約146億円から
第2四半期約262億円と大幅に増えましたが、
第3四半期では約292億円と下げ幅を縮小しました。
また、8月の直営店売上は
前年比2.8%増という発表もあり、
客足が戻ってきていることがうかがえます」
もちろん、これだけで楽観視しているわけではない。
「業績を回復するには、さまざまな方策が必要でしょう。
地に落ちたイメージの改善、魅力的な商品の提供、
店舗のクリンリネスの向上など課題は山積みです。
しかし、日本マクドナルドの強みは、
業績立て直しに長期戦で挑めることです。
なぜなら、会社としての体力が
非常に優良だからです」
◆マックの体力は長期戦を可能にする
“優良”とはどういうことなのか?
「まず資金調達力の強さです。
今年の第1四半期に220億円の借り入れを決定したのですが、
借入条件が凄いんです。なんと
無担保無保証、利率0.5%ほど。
これほど銀行から信用されているわけですから、
もっと借りることも可能ということですね。
しかも、この借入金は、
第2四半期、第3四半期には減っていっています」
また、株価の下落も見られないのもプラス要素だ。
「不祥事後も大きな影響はなく、
2,600円前後を維持しています。
11月には株価が上昇し3,000円を一時超えたほど。
この業績にもかかわらず、
投資家はマクドナルドを支持しているわけです」
表
さらに、財務状況が良好なのもプラスだという。
表は、外食産業の上位4社を比較したもの。
「日本マクドナルドの企業体力がどれだけ優れているのか。
同業他社と比較すると、わかりやすいです。
ここでは長期借入金に注目しましょう。
ゼンショー884億、すかいらーく1,398億、吉野家115億。
マクドナルドの187億が、決して
法外ではないことがわかります。さらに、
負債が自己資本に対する割合=負債比率も重要です。
この数字が大きければ、市場での評価が低く、
借り入れに頼らざるを得ない=負債利子が
経営を圧迫することを意味します。
日本マクドナルドは50.8%と他社に比べて
優良なので、余力があるとみるのが妥当でしょう」
また、佐藤氏が財務状況を調べる中で、
面白い傾向を見つけたという。
それは原田前会長が推し進めたFC化の効果だ。
「原田体制下でFC店舗率は30%から
約70%になりました。これが
サービス低下の一因と指摘されていますが、
一方で経営の安定化に一役買っているフシが見えます。
これはロイヤルティの仕組みのおかげです。
決算書やFC契約書から試算したところ、
FCのロイヤルティは25%前後。
うち5%はインフラサービス費と広告費、
20%はレントロイヤルティ(いわゆる家賃)と推測されます。
レントロイヤルティは固定金額型と売上パーセンテージ型があり、
“いずれか高い金額”が適用されます。
ここがキモで、売上高にかかわらず、
一定の利益は確保できるのです」
実際、売上が苦戦していることもあり、
FC店による利益は直営店を上回っている。
「非常にうまいビジネスですよね。もしかしたら、
原田前会長は市場が伸び悩むとにらんで、
FC店による経営の安定化を目指していたのかもしれませんね」
http://hbol.jp/73987より
【佐藤昌司氏】
店舗経営コンサルタント。
クリエイションコンサルティング代表。
店舗経営、マーケティング政策の立案、
店舗オペレーションの改善などを得意としている。
ハーバー・ビジネス・オンライン
HARBOR BUSINESS Online
1月2日(土)16時21分配信
迷走著しいマクドナルドがそれでも安泰な意外な理由
閉店が相次ぐマクドナルド。ネット上では、街のシンボルだった店舗を名残惜しむ声も相次いだ
赤字が過去最悪の数字に。
11月11日、日本マクドナルドが
「1~9月の最終赤字292億円」と発表したことが、
各方面で取り沙汰された。しかし、
このような危機的状況を思わせる中、
「まだまだ安定飛行」と見るのは、
店舗経営コンサルタントの佐藤昌司氏だ。
「現時点で、業績が相当に厳しい状況なのは
間違いありません。業績悪化の原因は明らかで、
2014年7月の賞味期限切れ問題、
2015年1月の異物混入問題です。
なぜなら、不祥事直前の’14年第2四半期決算では
純利益18.5億円の黒字であり、
業績が下がりつつも利益を確保し続けていました。
しかし、不祥事を発端に売上が激減、
赤字に転落したのです」
安全性や企業イメージの影響は、
想像以上の大きさなのだ。しかし、
決算内容を見てみると、回復の兆しも見えるという。
「赤字額は第1四半期約146億円から
第2四半期約262億円と大幅に増えましたが、
第3四半期では約292億円と下げ幅を縮小しました。
また、8月の直営店売上は
前年比2.8%増という発表もあり、
客足が戻ってきていることがうかがえます」
もちろん、これだけで楽観視しているわけではない。
「業績を回復するには、さまざまな方策が必要でしょう。
地に落ちたイメージの改善、魅力的な商品の提供、
店舗のクリンリネスの向上など課題は山積みです。
しかし、日本マクドナルドの強みは、
業績立て直しに長期戦で挑めることです。
なぜなら、会社としての体力が
非常に優良だからです」
◆マックの体力は長期戦を可能にする
“優良”とはどういうことなのか?
「まず資金調達力の強さです。
今年の第1四半期に220億円の借り入れを決定したのですが、
借入条件が凄いんです。なんと
無担保無保証、利率0.5%ほど。
これほど銀行から信用されているわけですから、
もっと借りることも可能ということですね。
しかも、この借入金は、
第2四半期、第3四半期には減っていっています」
また、株価の下落も見られないのもプラス要素だ。
「不祥事後も大きな影響はなく、
2,600円前後を維持しています。
11月には株価が上昇し3,000円を一時超えたほど。
この業績にもかかわらず、
投資家はマクドナルドを支持しているわけです」
表
さらに、財務状況が良好なのもプラスだという。
表は、外食産業の上位4社を比較したもの。
「日本マクドナルドの企業体力がどれだけ優れているのか。
同業他社と比較すると、わかりやすいです。
ここでは長期借入金に注目しましょう。
ゼンショー884億、すかいらーく1,398億、吉野家115億。
マクドナルドの187億が、決して
法外ではないことがわかります。さらに、
負債が自己資本に対する割合=負債比率も重要です。
この数字が大きければ、市場での評価が低く、
借り入れに頼らざるを得ない=負債利子が
経営を圧迫することを意味します。
日本マクドナルドは50.8%と他社に比べて
優良なので、余力があるとみるのが妥当でしょう」
また、佐藤氏が財務状況を調べる中で、
面白い傾向を見つけたという。
それは原田前会長が推し進めたFC化の効果だ。
「原田体制下でFC店舗率は30%から
約70%になりました。これが
サービス低下の一因と指摘されていますが、
一方で経営の安定化に一役買っているフシが見えます。
これはロイヤルティの仕組みのおかげです。
決算書やFC契約書から試算したところ、
FCのロイヤルティは25%前後。
うち5%はインフラサービス費と広告費、
20%はレントロイヤルティ(いわゆる家賃)と推測されます。
レントロイヤルティは固定金額型と売上パーセンテージ型があり、
“いずれか高い金額”が適用されます。
ここがキモで、売上高にかかわらず、
一定の利益は確保できるのです」
実際、売上が苦戦していることもあり、
FC店による利益は直営店を上回っている。
「非常にうまいビジネスですよね。もしかしたら、
原田前会長は市場が伸び悩むとにらんで、
FC店による経営の安定化を目指していたのかもしれませんね」
http://hbol.jp/73987より
【佐藤昌司氏】
店舗経営コンサルタント。
クリエイションコンサルティング代表。
店舗経営、マーケティング政策の立案、
店舗オペレーションの改善などを得意としている。
ハーバー・ビジネス・オンライン