「大地よ!-アイヌの母神、宇梶静江自伝」宇梶静江 藤原書店
著者は1933年アイヌを両親とし、6人姉妹の次女として生を受ける。北海道生まれで浦河郡姉茶村の倭人も混在するアイヌ集落で過ごす。札幌の私立中学校を卒業直後に上京、喫茶店などで働く。その後1959年に27歳で結婚2児の母となる。
近所の奥さんに誘われ詩作に目覚め、「詩人会議」という同人誌に発表、壺井繁治さん(同栄さん-映画24の瞳の作者-のご主人)から「詩人会議(1966年月1日)」で「彗星のように現れた詩人」といって褒められた(213頁)。
1972年2月8日に東京「朝日新聞」生活欄「ひととき」にアイヌ同胞へ「ウタリたちよ、手をつなごう」と呼びかけの投稿が掲載される(228頁)。翌年「東京ウタリ会」を設立、アイヌの権利獲得のための活動を始める。都に陳情を重ねアイヌ実態調査の予算が付く。1975年・89年調査の結果は最初が700人弱、2回目が2,700人に増えた(241頁)。アイヌとの関わりはその後25年に及ぶが、いろいろ悩みは尽きなかった。
1996年初夏63歳の時、その後の生きがいとなる「古布絵」と出会うことになる。それは友達に誘われデパートで催されている古布、ぼろ布の展示のことだった。A4程の額縁に納まった「布絵」2点に、私の目は釘付けとなった。この時、私は幼児期から求めていた何かが、目の前に出現し、今この時とぴったりと重ね合っていることを感じていました(247頁)。その後古布絵作家として全国巡回個展を開くようになった。
著者の活躍はこればかりでは無く、なんと世界と繋がることになる。2001年に米国の先住民支援NGOの招待で弟の浦川治造・木彫家の星野工と共に訪れ、ハーバード大学とマサチュウセッツ工科大学で「アイヌー私たちのアイデンティティと望み」と題する講演を行ったのである。公演記録は262~272頁に掲載。2008年には洞爺湖で行われたサミットに先立って日本初の「先住民サミット」が開催された(講演録は281~284頁)。
なお本書は2020年3月に第一刷9月には第3冊が発行されている。著者の多才ぶりは勿論、いつも前向きな生き方が素晴らしい。古布絵の写真も数点掲載されていて楽しませてくれる。
「メインテーマは殺人」アンソニー・ホロヴィッツ 山田 欄 訳 創元推理文庫
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自らの葬儀の手配をしたその日に、資産家ダイアナ・D・クーパー老婦人は殺害された。
ロンドン警視庁の元刑事で、現在は同庁顧問のダニエル・ホーソンから、小説家アンソニー・ホロビッツは自分が捜査する状況を本にしないかと誘われ、これを受け2人で行動を共にすることになる。
操作状況は逐一記述されていて、妖しいのは何人か浮かび上がる。
本書の解説(杉江松恋)は、486頁で「ホームズとワトソンを念頭に置いたコンビ探偵で、クリスティ張りの心理トリックも武器とする、あくまでフェアプレイを念頭に置いた謎解き小説」と述べている。
その通りかも知れない、久し振りにミステリーを堪能した。
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近所の奥さんに誘われ詩作に目覚め、「詩人会議」という同人誌に発表、壺井繁治さん(同栄さん-映画24の瞳の作者-のご主人)から「詩人会議(1966年月1日)」で「彗星のように現れた詩人」といって褒められた(213頁)。
1972年2月8日に東京「朝日新聞」生活欄「ひととき」にアイヌ同胞へ「ウタリたちよ、手をつなごう」と呼びかけの投稿が掲載される(228頁)。翌年「東京ウタリ会」を設立、アイヌの権利獲得のための活動を始める。都に陳情を重ねアイヌ実態調査の予算が付く。1975年・89年調査の結果は最初が700人弱、2回目が2,700人に増えた(241頁)。アイヌとの関わりはその後25年に及ぶが、いろいろ悩みは尽きなかった。
1996年初夏63歳の時、その後の生きがいとなる「古布絵」と出会うことになる。それは友達に誘われデパートで催されている古布、ぼろ布の展示のことだった。A4程の額縁に納まった「布絵」2点に、私の目は釘付けとなった。この時、私は幼児期から求めていた何かが、目の前に出現し、今この時とぴったりと重ね合っていることを感じていました(247頁)。その後古布絵作家として全国巡回個展を開くようになった。
著者の活躍はこればかりでは無く、なんと世界と繋がることになる。2001年に米国の先住民支援NGOの招待で弟の浦川治造・木彫家の星野工と共に訪れ、ハーバード大学とマサチュウセッツ工科大学で「アイヌー私たちのアイデンティティと望み」と題する講演を行ったのである。公演記録は262~272頁に掲載。2008年には洞爺湖で行われたサミットに先立って日本初の「先住民サミット」が開催された(講演録は281~284頁)。
なお本書は2020年3月に第一刷9月には第3冊が発行されている。著者の多才ぶりは勿論、いつも前向きな生き方が素晴らしい。古布絵の写真も数点掲載されていて楽しませてくれる。
「メインテーマは殺人」アンソニー・ホロヴィッツ 山田 欄 訳 創元推理文庫
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自らの葬儀の手配をしたその日に、資産家ダイアナ・D・クーパー老婦人は殺害された。
ロンドン警視庁の元刑事で、現在は同庁顧問のダニエル・ホーソンから、小説家アンソニー・ホロビッツは自分が捜査する状況を本にしないかと誘われ、これを受け2人で行動を共にすることになる。
操作状況は逐一記述されていて、妖しいのは何人か浮かび上がる。
本書の解説(杉江松恋)は、486頁で「ホームズとワトソンを念頭に置いたコンビ探偵で、クリスティ張りの心理トリックも武器とする、あくまでフェアプレイを念頭に置いた謎解き小説」と述べている。
その通りかも知れない、久し振りにミステリーを堪能した。