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三菱電機レディス2024

2024-10-29 17:55:00 | 日記
三菱電機レディス2024
岩井千怜さんの優勝。今季3勝目、お見事だ。
彼女はサービス精神も旺盛だし、積極果敢な攻めのプレーをする女子プロだ。直ドラを観させて頂いた。

実は観戦に行った。
先週はかなり疲れていたが、ちゃんと観るにはそれなりに早起きしなければならない。辛いところだが、推しの選手を観たい、応援したい。
自分の予定と天気予報をみて検討していた。結局初日のチケットを購入。
予選なのでその気になれば全選手を観ることができる。


飯能駅前のコンビニで飲み物、食べ物を調達。
幸いクラブバスの1人席に座れたので発車前に座席でサクッと朝飯をとった。
朝少しグズグズし、乗り継ぎ2回もあり会場到着は9時30位になってしまった。最初のスタート組はハーフ終わりそう。

スタートホール前に練習場がある。
ドライビングレンジ、その隣がパッティンググリーン。  
すぐ目に飛び込んできたのは山下美夢有さんだ。おおー!心のなかで叫ぶ。
美夢有さんはアイアンの練習をしていた。オリンピックで惜しくも4位、金メダルだって狙えた、好位置にいたから後半のミスはさぞ悔しかったろう。国内では2年連続賞金王。5分位見惚れていた。背は低くとも足腰はしっかり鍛えているのが分かる。
お団子ヘアーにチャンピオンのウェアが似合っている。

隣のパッティンググリーンでは竹田麗央さんが練習していた。麗央さんもやがてはアメリカに行っちゃうだろう。近くで見られるチャンスはなくなるかもしれない。
普通の若いお嬢さんという感じだが、今季は圧倒的な強さで7勝だ。

思い起こせば、当トーナメントでは、宮里藍、不動裕理、イボミ、大山志保、馬場ゆかり、キムハヌル、諸見里しのぶ、佐伯三貴、大江香織、勝みなみ、古江彩佳、西村優菜、西郷真央、渋野日向子さん…を間近でみた。

一昨年は柏原明日架さんとすれ違いドキドキした。今季は好成績。美しく素敵な女性だ。

小雨が降っていたが、薄手のレインウエアでしのごうと傘を持っていかなかった。

スタートホールでまずOUTスタートの14組から3組を観戦した。
観覧席は満杯、右サイドのロープ際も一杯。初日の予選日で雨模様なのに随分人が入っているのにはやや驚き。
女子ゴルフ人気は今最高調ではないか。

オーロラビジョンに大写し出される。 
何と言っても三菱電機だから綺麗な画面だ。
でもやはり生の方がいい。
14組=岩井千怜、安田祐香、リハナさん。
15組=岩井明愛、河本結、桑木志帆さん。
16組=山下美夢有、小祝さくら、竹田麗央さん。
人が多くちょっと見えにくいが何とかみえた。
横からは飛球は追えない。カメラが追ってくれてオーロラビジョンではちゃんと観られる。全選手いい弾道で素晴らしい。

安田さんはミヤギテレビ杯ダンロップオープンで初優勝してくれたので嬉しい。リハナさんは昨年の優勝者。
河本さんはお洒落で笑顔がいい。彼女も優勝し今季の成績は上位安定だ。
岩井ツインズは髪型で判別するしかないが、所作まで似ている。 
ティーグラウンドにツインズが現れると、地元埼玉の顔馴染みのファンなのか、あるご婦人が帽子を振ったり、応援タオルを取り出したりするので、後ろで観ている僕らは見えなくなり閉口した。迷惑行為だ。

最終組の山下さん、小祝さんは幾度か観てるが竹田さんは初めてだ。弾道がちょいと他の選手と違う。

暫くすればインコーススタート組が現れるだろう。インなら観覧席も空くんじゃないかと思いつつ、1Hと9Hの間にある喫煙所でIQOSを2本。

アウトスタートが終わって観覧席を退席する人の波。こちらは逆に席に向かう。2番前の真ん中辺りの席を確保。間近でよく見える。相撲で言えば砂被り席だ。
しかし雨足が強くなってくる。
傘がないからキャップを被りその上にフードも被る。汚れてもいいようGパンできたが、綿だから濡れるのはいささか辛い。

インスタート組がやって来た。彼女たちにとっては10H目になる。
スコアボードを持つボランティアが現れ、各々のキャディ、選手の登場だ。
かつて一番前の席で、目の前で後ろを振り向いた金澤志奈さんと視線が合ったことがあった。

17組=笠りつ子、山内日菜子、永峰咲希さん。笠さんは相変わらずプレーが速い、キレがあり潔いプレースタイルは好みだ。山内さんは努力の人で表情から性格が良さそうな印象をもつ。
18組=全美貞、仁井優花、宮里美香さん。
ベテランの全さんは高身長で脚腰は相当鍛えていることが窺える。大腿筋が美しい。まだまだトッププロは張れると思った。仁井さんは山下さんと同じくチャンピオンのウェア。宮里さんもプレーは速い。
19組=藤田かれん、稲垣那奈子、仲宗根澄香さん。藤田さんは可愛いい女性、仲宗根さんは身体がガッチリしてる。
20組=岡山絵里、大西葵、葭葉ルミさん。
3人とも中堅か。岡山さんのスイングは見習いたい。葭葉さんは何故飛ぶのか注意して観ていたが分からない、体重移動とシャフトの使い方が上手なのだろうか。大西さん、彼女もママさん選手。
21組=三ヶ島かな、政田夢乃、永井花奈さん。政田さんはルーキー、愛くるしい笑顔が素敵でファンが多い、正確なショットをする。永井さんは2017年の優勝者。可愛い顔に、相当負けず嫌いなんだろうなという表情をみせることがある。
22組=横峯さくら、山路晶、後藤未有さん。
横峯さんは何回も見ている。髭を生やしたイケメン旦那のキャディぶりはだいぶ板に着いてきた感じ。山路さんは筋肉質の身体で生来の飛ばし屋なんだろうな。後藤さんは性格良さそうで推し候補。
23組=工藤遥加、竹内美雪、上野菜々子さん。工藤さんはいつも半袖で帽子も被らないこともある。力一杯振りスカッとする。
竹内さん、もう少しパターが入ってくれればいいのに。上野さんは成長株だ。

スタートに間があるのはやむなしだ。
隣りの9番Hから歓声があがり、オペラグラスで隣りの9番Hを眺めてみる。
幸い雨が止んできた。1時間おきの予報は当たっている。 
席を離れ、9番Hの林の方に移動。 

Par5のロングホール。セカンドショットの飛び具合とアプローチが観られる。

吉田優利、鈴木愛、阿部未悠さん。
優利さんを観なければ来た意味がなくなる。彼女のゴルフに対する姿勢等々にはマジ尊敬の念を抱いている。当然応援したくなる。

新垣比菜、佐藤心結、川崎春花さん。
新垣さんは本当に礼儀正しくて性格がとてもいい女性だと思っている。ヨネックスレディスでの2回目の優勝には拍手だった。佐藤さんは子どものような顔をしてるが飛ばす。川崎さんは京美人の色白の顔に似合わずステディなゴルフ。3人とも普通の若いお嬢さんという感じだが、今季全員優勝している。
 
プロゴルファーは全員アドレスが美しい。

ここで、よしゃ弁当買いに行くか。ビールはやめる。トイレが近くなるのは回避したい。雨が降ったせいか気温は20度を下回っている。グリーンは止まりやすくゴルフには丁度いいかもだが、身体を動かさない人には寒い。

今週は訳あって、足、脚がとにかく疲れているので、あちこち動くのをやめ、9番Hの隣の18番Hのグリーンに向かう。

グリーン奥のラフは、20度か30度位の坂というか崖で丁度いい天然スタンドになっている。もうかなりの数のギャラリーが陣取っている。大抵の人はシートか折りたたみ椅子を持参している。用意して来なかったので、杉の木の根が露出してるとろにスポーツ新聞を敷き座わる。まず昼飯とする。

18番Hも1、9番と同じくPAR5。飛ばし屋は当然2オンを狙うが、右のバンカー前から3打目、アプローチという攻略がセオリーなのだろう。
砲台グリーンなのでショートする選手が多かったが、ピンを刺してくる積極派も勿論いた。2オンならずバンカーに入る人も少なくない。花道ならベターなのかもだが。

2021年、優勝目前のペソンウさんが3パットし9アンダーでプレーオフになった18番H。
プレーオフでは渋野日向子さんが2オンに成功。見事にイーグルをとり劇的な大逆転優勝したホールだ。
あの時、生で観ていた。興奮したというか感激したというか泣けたというか。シブコ様はやはり持っている。 

1組=堀琴音、柏原明日架、穴井詩さん
穴井さんの2オンを期待していた。
2=脇元華、小林夢果、川岸史果さん
3人とも飛ばすから面白い組だ。  

3=菊地絵理香、宮田成華、金澤志奈さん
宮田さんは最近好成績。密かに金澤さんを応援。絵理香さんはピンを刺してきた。
4=木戸愛、ささきしょうこ、鶴岡果恋さん
木戸さんはバンカーだった。鶴岡さんは推しだ。ささきさんの器用さは見もの。

5=馬場咲希、蛭田みな美、臼井麗香さん。
いよいよ馬場さん、背が伸びた。当然2オン狙う。270Y飛ばすという。蛭田さんのヒヤヒヤ初優勝の場面を思い出す。臼井さんも初優勝してる。
6=ウーチャイエン、小林光希、吉本ひかるさん。吉本さん推しだ、山下さんと同じよう小柄だがゴルフは上手い。

7=藤田さいき、渡邊彩香、青木瀬令奈さん 
青木さんはピンを刺してくる、素晴らしい。
渡邉さんのフェイド打ち教えて欲しい。藤田さん、世代交代などまだまだだと頑張っている。
8=森田遥、金田久美子、櫻井心那さん
キンクミこと金田さんも頑張っている。パターの名人で2022年の優勝者だ。森田さんも名人だ。心那さん、昨年4勝の飛ばし屋。

9=菅沼奈々、高橋彩華、尾関彩美悠さん 
自称アイドルの菅沼さん。グリーンで他の選手のプレーを待つ姿勢、態度がいい。スイングがぶれない高橋さん。デビューした一昨年、住友生命で優勝した尾関さん。

誰が優勝してもおかしくないプレイヤーばかりで満足だ。

帰りの混雑を避けたいと思った。
他の選手には申し訳ない。
東京OP銀メダリストの稲見萌寧、
先週優勝のイミニョン、
アンラッキーで2位続きの佐久間朱莉さん
はじめ30名弱の選手の方には申し訳なかったが、応援出来ずごめんなさいだ。

トイレも我慢していた。IQOS吸って退却とすることにした。

クラブハウス前に大勢の人がいた。
選手にサインや写真を求めるファンたちだ。

そこを過ぎたら、柏原明日架さんを間近で拝見することになった。
彼女は笑顔でファンのサインに応じていた。





徒花

2024-10-22 17:30:00 | 映画
新次(井浦新)はかなり重症、というか死期迫っているのだろう。クローンの「それ」から、たぶん臓器移植するために、とある療養施設に入院している。
医師(永瀬正敏)は、言葉少なに臨床心理士まほろ(水原希子)に指示をする。



まほろが新次のケアを担当、状況をヒアリングしてサインをもらう。
新次は「それ」との対面を懇願する。

井浦さんは当然「それ」と二役。
対面したことにより新次の心に疑念が生まれ葛藤がはじまる。
「それ」の知的で純粋さに新次の心は揺れ動くのだ。

映画冒頭の説明、「あるウイルスの蔓延による人口激減、一部の上層階級の人間だけに、延命治療として云々」
とスーパーが流れたが、
不要ではなかろうか。
労働人口が足りないなら富裕層(上層階級)ではなく、労働者層が必要なのではないかな、と思うからである。
やや白けた。

音楽と映像はいいが、
内容は伝わりにくいと思う。近未来を想定というが、セリフも小道具も何かしら近未来と思わせるものがなかったような気がする。



舞台劇をみる感覚で観ていたから、特段時間軸とか場面転換が余りないこと、説明的台詞がないことに不満はない。が、

トンネル、冬枯れた林、小鳥、岩場の海岸、海岸の女性(三浦透子)など、
これらがバラバラのような気がした。
たぶん過去の出来事や妄想、夢などでしょうが。どういうふうに繋ぎあわせたらいいのか?分からない。





井浦新さん、水原希子さんの熱演の「気」は伝わってきた。

延命のためとはいえ
クローンを飼育(ホテル暮らしのような)すること自体、葛藤が生まれのは当たり前だと思う。

一番気になるのはクローンでつくった「それ」と対面させることは倫理上も心理上もあるいは医療上も絶対ないのではなかろうかと思う。懇願されても。
それ言っちゃお終いよと言われそうですが。

話題作であることには間違いない。
キャッチコピー「私が生きるために、私を殺す。という選択。」秀逸だ。

2010年の「私を離さないで」を思いだした。
当時かなりショックを受けた記憶がある。
原作カズオ イシグロさんのあの作品。
キャリーマリガンの美しく悲しい表情を思い出してしまった。



脚本、監督は甲斐さやかさん


ジョーカー フォリ ア ドゥ

2024-10-15 10:50:00 | 映画




2.3日前の夕刊に紹介記事が出ていたのが頭に残っていた。レディガガとの写真が載っていて、何だか小難しいことが書かれていた。褒めてるのか貶してるのか分からん様な内容だった。

気になってしょうがなかったのは、前作「ジョーカー」が凄く良かったからだ。
空席が少なく2番前の席を確保した。昨日(14日)のこと。

スクリーンの映像がでかい。
字幕も眼鏡外して観られる位大きかった。コンサートなら前席でもいいが。
ガガは小柄なのにいつも映像ではちっちゃく見えないのが不思議だったので、靴=ヒールを観察したりした。



ジョーカーことアーサー(ホアキンフェニックス)は監獄の更生施設に収監され裁判待ち。裁判の論点は多重人格障害で犯行時は心神喪失状態だったかどうか。責任能力の問題である。

収監先に潜り込んでいるリー(レディガガ)は熱烈なジョーカー信奉者。アーサーは初めて自分を必要としてくれる人との出会いを感じ、リーに恋をする。

傍聴にいくリーは後ろの席。
アーサーは次はもっと近くの席を取ってくれと弁護士に指示。

裁判劇とアーサーとリーの2人の物語が同時進行していく。2人は監獄、法廷でも歌い踊る。


ここまでミュージカル仕立てだとは思っていなかったが、ガガは歌は上手く聴かせるから、前席でアップで観れたのはラッキーだったかもしれない。

アーサーの心が揺れ動く。
迷いがあるのか?
悔いではなく有罪=死刑を恐れているのか?
心身喪失にしたいのか、
ジョーカーでいたいのか。信奉者はジョーカーの狂気を支持しており神格化されている。自己愛の強いアーサー。
本作品では、結構揺れる心理をみせていると思う、アーサーの表情には怖さが減じ柔和さがある。

前作は正に狂気の行動だったが、もともと神経系の病気もちで薬をのんでいるし、背景には悲惨な境遇ゆえ心が病むという流れがあった。

いずれにしても、異常性のある男の裁判劇であり社会的に賛同えられるはずのない内容なのだから、妄想性障害、パーソナルティ障害ベースにしてこれ以上の反社会的にはつくれないだろう。前作が秀作ゆえ。

「タクシードライバー」のトラヴィス(ロバートデニーロ)にはベトナム帰還兵でPTSDもちで誇大妄想癖もあり「悲劇が喜劇」になるアイロニカルなことになったが、アーサーは果たしてどう決着つけてくれるのか、これが一番の関心事だった。


前作を忘れたひとのためか、前作から5年経つからか、TVキャスター(ロバートデニーロ)はじめ5人の殺人を繰り返して説明している印象をもった。
アーサーは本当は6人、母親も殺したのだと明けた。
  
判決が下されるか、その瞬間、裁判所が爆破される。ジョーカーは仮装者の助けもあり辛くも生き残る。

ジョーカー」はいないとのアーサーの言葉に、唯理解者かと心を通わせていたリーには、あっさり去られてしまう。

皮肉にも更生施設の信奉者に刺殺されてしまう。末路は切なく哀れ。
悲しくもあっけないアーサー。  

決着つけたかった制作者の意図を感じた。 



ミュージカル仕立てでガガを出さないで制作するとすれば、アーサーの妄想の狂気を描くのは収監された立場では、信奉者にことを起こさせるか、アーサーの脳内で劇を作らなければならないことになる。とても困難なことであり、作品として仕上げられるか疑問である。
ゆえに「二人狂い」としてガガを登場させ、ミュージカル仕立てにしたのは、
マーケティング的にも、手法としても正解なのかもしれない。

ガガを観たいひとだって大勢いる。


マイスモールランド

2024-10-13 11:35:00 | 映画
 
在日クルド人の問題をクルド人少女の視点から描いた映画。

原作・脚本・監督は川田恵真。  

楽しい作品ではない、むしろ苦しくなる。
内容がフィクションなら楽しめるかもしれないが、そういうわけにはいかない。深刻な難民問題、入管問題の現実だからだ。

大声をあげることもなく、暴力シーンもなく、情に訴えるような撮り方もしていない。
穏やかにルポルタージュ的な手法をとりいれている。
 


サーリャ(嵐莉菜)は、父親、妹、弟と4人家族、母親は既に亡くなっている。
彼女は幼い頃から日本で育ったクルド人。
容貌こそ外国人だが日本人の女子高生と同じ感覚。
違うとすれば、帰宅すればバイリンガルゆえ通訳など同胞のサポートをしていること。
食事はクルド料理で食事前はクルド語でお祈りをすることだ。
「クルド人としての誇りを失わないように」父親の思いがあるが、子どもたちとはズレがあり彼女たちは逆に日本人化していくのは避けられない。     



サーリャは教員になる夢をもっている。小学生時の担任のようになりたいのだ。おそらくイジメにあったときに励ましてくれた恩師なのだろう。
大学進学は学校推薦を受けられると担任教師との面談で言われている。
「部活辞めなきゃ確実だったんだが」
「家の事情があって」
事情は学資を貯めるためのバイトだ。帰宅が遅いのは部活のバトミントンだと父に言っている、コンビニでのバイトは内緒にしている。

バイト先には同い歳くらいで熱心に働く高校生・聡太(奥平大兼)がいる。2人は次第に親しくなる。聡太は母子家庭。サーリャはクラスメイトにはドイツ人だと言っているが聡太にはクルド人だと本当のことを明かす。
聡太は大阪の美大を志願しており、
一緒に大阪に行こうとサーリャは誘われる。

ある日、父親マズルムの難民申請は認定されず、在留資格の更新も認められないとの知らせが入る。
マズルムは入管施設に収容される。 

仮放免」となったものの、就労禁止、保険証もなく、入管の許可なしでは県外にも出られない。家族全員だ。  
マズルムはトルコに帰ったとしても、独立闘争に参加していたことから拘束されるおそれが高い。故に難民申請しているのだが。
もっとも日本政府は基本的にクルド人の難民申請を受け入れていない。

山中弁護士(平泉成)は、まずは健康でいることだ、保険がきかないから、と助言する。さらに再度難民申請をすること、裁判で争うことを勧める。
裁判で難民認定されたのは過去1件しかしないということだが。

マズルムは違法を承知で働くが職務質問にあい、入管施設に強制収容されてしまう。

クルド人のコミュニティがあるとはいえ、大黒柱を失い。たちどころ不安と混乱に陥る。家族もまとまりがなくなってくる。



寄り添ってくれるのは、母子家庭の聡太とその母親(池脇千鶴 )だ。つかの間のひと息みたいなものだ。語れる人は夫が施設に収容されたままのクルド人女性。

さらに家賃が滞り大家から立ち退きを迫られる。大家は小倉一郎が演じている。
大病したときいていたが小倉さんの健在な姿をみた。

貯めたバイト代、知り合いのクルド人たちから借りても足りず、サーリャは友人に誘われるままパパ活に足を踏み入れる。
要求がエスカレートしてくるパパに耐え切れず逃げ出す。
「日本から出ていけ」と罵声を浴びる。

聡太の家で、聡太、母、サーリャ、ロビンがささやかな食卓を囲むシーンは幸せそうにみえるが、サーリャの心は重い。

サーリャはコンビニをクビになる。
「不法就労はさせられない」さらに「聡太には会わないで欲しい、母親が心配しているので」と店長(藤井隆)に告げられる。

店長の言葉は我が国の言葉だ。

丁寧だが拒絶、拒否なのだ。
サーリャは八方塞がり、在留資格のないクルド人。


バイト先に行くのに自転車で橋を渡るシーンがあるが、都県境は北区と川口市を繋ぐ橋だ。まだ現地確認はしていないが荒川に架かる新荒川大橋だ。



橋の中央の都県境に聡太と二人でつけた手形は消され「落書き禁止」の札が貼られてしまう。

聡太の想像を超えるサーリャの事情。
2人の関係は悲恋の様相が色濃くなる。
大阪には行けない。行きたくなくなった。と聡太にはきちんと告げるサーリャ。
大阪どころか大学進学も厳しい状況だ、ビザがないと入学もできない。
生活そのものが危機的状況。 

ある日弟のロビンが家に帰ってこない。
石を探していたという幼いロビン。
「この石もクルドの石もなんも変わらん」
父の言葉を覚えている。
ロビンが暗示的に夢や希望を与えてくれているのだろうか。

マズルムは子どもたちの将来のために重大な決意をする。   
マズルムが語る、故郷のオリーブの木の話。「サーリャが生まれたときオリーブの木を植えた。毎年1本づつ5本しか植えられなかった。お前の母さんが木のそばで眠っている。だから行くんだ」



親がビザを諦めた代わりではないが、子たちにはビザを与えられた例がある、マズルムからは言わないでくれと言われたが。
山中弁護士はサーリャに明かす。

事態は何一つ好転したわけではない。
むしろ残酷すぎる。

子どもだけが残った家族は、コミュニティや善意のひとたちに支えられていくのだろうか。

アパートの前にオリーブの鉢がある。かつては父が水をやり、次にサーリャが、そしてロビンが水をやるようになった。

聡明なサーリャは涙など見せず、(日本で)生きて行こうとする意思を強い眼差しで表現する。
残酷すぎる現実は続く。



サーリャを演じた嵐さんはとても綺麗な方だ。後からモデルさんだと知った。映画は初出演だという。素晴らしい演技だ。
さらに映画の父親、妹、弟も実際の家族だと後から知り驚いた。
彼らの自然な演技に、一家に拍手を送りたい。