公開日:2019/01/24・更新日:2022/07/30
◆碇山のイヌグス
粕壁宿の裏側を流れる大落古利根川沿いの遊歩道(「古利根きらめき通り」)を歩くると春日橋の少し先に木が繁っている所があります。ここは碇山と呼ばれ、「碇神社」という小さな稲荷社があります。
そして、その社殿の脇にある巨木は「碇山のイヌグス」と呼ばれ、樹齢600年余りと言われる埼玉県指定天然記念物の巨木です。
コロナ禍前には、粕壁宿を案内する地元の観光ボランティアガイドさんが必ず案内する場所がこの「碇山のイヌグス」でした。
以前は鬱蒼としていて中に入るのも憚れるほどでしたが、4年前の2018年2月に、全体的に整備され、スッキリとして見やすくなりました。また、新たに案内板が設置されています。
整備される前
そして整備された後、
下草が刈られ道路側からイヌグスがよく見えるようになりました。
◆案内板
そして、新たな案内板が設置されました。
古くからまちを見守り続けるイヌグス
江戸時代の粕壁宿は、米や麦の集積地として栄え、古利根川を利用した舟運が行なわれていました。この看板のある付近には、下喜蔵河岸(しもきぞうかし、荷の積卸場)があったと伝えられています。船の停泊に便利で、岸辺が小高い丘であったことから地域の人々はこの辺りを「碇山」(いかりやま)と呼んでいました。
また、この「碇山」にあるイヌグスの巨木は、船頭にとつて船着場の目印とされていたと伝えられており、「碇山のイヌグス」と呼ばれ、親しまれてきました。
かつては、夏になると、涼を求めてイヌグスの木蔭に集まり、地域の憩いの場となっていました。子供たちは、枝にロープを付けてブランコ遊びをしたり、昼時になると、近くで働いていた職人たちの食事の場となり、イヌグスの枝の上で涼しむ人もいたようです。
このイヌグスは、現在も地域の人々に愛され、春日部の歴史を現代に伝える貴重な地域資源となっています。
平成三十年二月 春日部市
◆舟運と河岸
舟運は江戸時代初頭から年貢米の輸送手段として発達し、陸送では馬一頭につき米二表しか運べず、船積みにすれば人手も少なくて済み、一度に三百表ものコメを積むことが出来ました。そのため、多少の危険を冒しても安く早く運ぶ舟運(しゅううん)が利用されたようです。
特に、北武蔵(現在の埼玉県)は、東北や上信越方面からの中継地として栄え、河川の舟運(しゅううん)が盛んで、河川の要所には集積地と河岸(かし、人や荷物を船から上げ下ろしする集積場)が整備されていました。
当時は、年貢米などが上り荷(のぼりに)として地方から江戸へ、塩・綿・木綿・干イワシ・小間物・荒物などが下り荷(くだりに)として江戸から地方へ運ばれていたそうです。
〘参考〙
宮代町の町史には、次のような、記述があります。
◆川舟と舟運
河川舟運の主力は、川舟という喫水(きつすい)が浅く船底が平たい舟であった。利根川・江戸川の水運で活躍した高瀬舟などは有名である。町域にも杉戸にも杉戸町境に大落古利根川が流れている。古利根川では舟運がなかったのだろうか。
結論からいうと、幕府公認の河岸場は古利根川にはなかったので、公には年貢米の回漕はなかった。川沿いの杉戸、粕壁などの宿場でも、河岸問屋が栄えるということはなかった。これは、古利根川下流に松伏堰(まつぶしぜき)(松伏溜井、堰下流の村々に用水を供した)が設けられており、江戸と直結していなかったことによるようである。また、葛西用水(古利根川)川俣元圦(羽生(はにゅう)市)から利根川の水が通水し、かつ農業の水が松伏で堰き止められる。夏季には古利根川は水量が豊富だが、冬季には逆に減少するため、大きな舟の乗り入れに不便だったことも考えられる。運上金を納めることで幕府公認となっていた、江戸川沿いの河岸場の利害もあったことだろう。
しかし、例えば粕壁宿(かすかべじゅく)の年貢米は、冬季には江戸川の金野井河岸(庄和町金野井(しょうわまちかなのい)に運び出すものの、六〜八月は古利根川を利用して回漕しており(享保十八年「村鑑書上ヶ帳」粕壁宿文書)、全く古利根川で舟運が行われていなかったわけではなかった。同じ粕壁宿では年貢米の直接回漕は宝暦十三年(一七六三)には取りやめられるものの(「村明細帳」粕壁宿文書)、文政十三年(一八三○)にも高瀬舟(たかせぶね)、似高瀬舟(にたりたかせぶね)、瓢艜船(にたりひらたぶね)などの川舟ニ一艘を所持しており(「公用鑑」(こうようかがみ)粕壁宿文書)、民間の荷物搬送は依然として行われていた。以下略
引用:宮代町史 通史編 第四章 御成道と宮代の道 第ニ節 近世宮代の橋と舟運(宮代町立図書館)
「春日部市史」も参考にしましたが、お隣の「宮代町史」を引用させて頂きました。
この時期(冬季)の大落古利根川は、
川底が露わで確かに水量はありません。昔もそうだったのでしようね。 これでは大きな舟は到底無理ですね。
続く…