公開日:2019/01/24・更新日:2022/08/02
前回からの続き…
◆碇神社のイヌグス
碇山には、往時名主の屋敷稲荷だった「碇神社」があり、そのため「碇山のイヌグス」は、別名「碇神社のイヌグス」とも呼ばれています。
碇神社とイヌグス
案内板(裏面・内側)
埼玉県指定天然記念物
碇神社のイヌグス 指定年月日 昭和三十年十一月一日
「碇神社」と呼ばれる祠は、江戸時代に名主を務めた多田家の屋敷稲荷です。祠の脇に生育する巨木がイヌグスで、樹齢六百年余りを数えます。かつては、高さ約十二メートルの巨木でしたが、昭和五十四年の台風で被害を受け、現在では、高さ約七メートル、根回り約十メートルを測ります。
「イヌグス」は、和名をタブノキといい、主として中部地方以南の海岸地に多く自生している暖地性の常緑樹です。そのため、「碇神社のイヌグス」は、イヌグスの北限とされ、埼玉県でも珍しい樹木であることから、昭和三十年に県の天然記念物に指定されました。
平成三十年二月 春日部市教育委員会老木ですが。
(埼玉県指定天然記念物のイヌグス)
案内板にある通り、なにしろ推定樹齢が600年余りの老木ですので、傷みも目立ち、樹医の手当が行われています。木の中にセメントが入れられており、後に樹脂も入れられましたが、近年、樹木の生命力により、詰め物を吐き出していることが確認されているそうです。力強い生命力を感じます。
手当はされていますが、少し痛々しいですね。よく見ると、根元に「通気孔」のようなものが付いています。やはり、イヌグスも呼吸しているのでしようか。
◆イヌグスはタブノキ
イヌグスは、学名をクスノキ科タブノキ属の「タブノキ」といい、老樹の材に巻雲状の美しい模様の現れたものは、タマグスと呼ばれています。「イヌグス」という名は、クスに似ているがクスではなく、木質が劣っているところから、頭に犬の字をつけてこう呼ばれています。
また、イヌグスの樹皮は、多糖体を主成分とする粘質物を含み、粉末にして水を加えると粘液になるので、線香、蚊取り線香などのつなぎや染料(樺色の染料)に用いられていたようです。なお、前掲の案内板では、このイヌグスは北限となっていますが、東日本大震災の時、東北の宮城県にイヌグス(タブノキ)がある映像を見ました(確かTBSの『サンデーモーニング』という番組で)、
なので、ほぼ北限と言うほうが良いのかも知れません。
それにしても600年余りもの間、風雪に耐えてよく頑張っていると思います。きっといろいろな歴史的な出来事を見てきたに違いありませんね。
ところで、なぜ当地にイヌグス=タブノキが植わっているのでしょうか? 誰も教えてくれませんので、わかりません。そこで、少し私見を。
この続きは次回に…