神社などには俗にパワースポットと呼ばれる場所があります。もちろん春日部八幡神社にもあります。
春日部八幡神社の境内にあるパワースポットは、なんと言っても境内中央にある御神木の大銀杏でしょうね。今回は、その大銀杏について。
◆春日部八幡神社の大銀杏
御神木の大銀杏
樹齢は約700年?
昔は3本の銀杏があったとか
◆伝説
境内にある説明板には、
鎌倉の鶴岡八幡宮の銀杏の木の一枝が飛んできて一夜にして大木になった。
また、春日部八幡神社のサイトにも
参道中央部に空高くそびえる大銀杏は、鶴岡八幡宮の御神木の一枝が飛び来たり、一夜のうちに繁茂したと伝えられています。
とあります。
このようなお話・伝説は、かすかべに限らず、全国各地にも結構あるのではないでしょうか?
でも、一夜と言うのは???
それは後ほど。
御神木に不敬にならないように、少し考えてみました。
◆御神木に銀杏が多い理由
粕壁宿にある神社の御神木には、銀杏が多く見られます。「八坂香取稲荷合社」、「東八幡神社」、それと「秋葉神社」の夫婦松の一方の木は銀杏でした。
確か、東京・浅草の浅草寺境内にも、あの源頼朝が戦勝祈願に訪れて参拝時に挿した枝から発芽した、と伝わる銀杏があった(?)と記憶しています。
それでは、一体何故、神社に銀杏が植えられているのでしょうか?
それは、
- 銀杏は幹や葉に水分を多く含んでいるため火事に強い。「銀杏は水を吹く」とも。
- 銀杏は油分を含み水はけがよく、材料も均一で加工性に優れ、歪みが出にくい特質を持つので、神社の家具・建具をはじめ、構造材・造作材などの補修材として広範に利用されている。
- 銀杏の実(ギンナン)は、食料にもなる。ただし、食中毒(銀杏中毒)の危険性も指摘されているので、注意が必要。健康な一般成人では、適切な量であれば食用として安全である。
- 銀杏の乾葉は防虫剤として用いられる。
- 喘息等の症状に対する鎮咳去痰作用など薬草としての効力もある。
などなど、多くの説があり、どれもなるほどと、説得力があります。
でも、やはり、神の依代として尊崇の念を持って銀杏を植えたのが一番の理由なのでしようね。
また、
◆鎌倉から飛んできた一枝
前述のとおり、春日部八幡神社の御神木の大銀杏は、鎌倉の鶴岡八幡宮から飛んできた一枝が一夜にして大木になったと伝えられてきました。
鶴岡八幡宮の大銀杏といえば、樹齢1,000年を超えるとされる鎌倉・鶴岡八幡宮のシンボル的な樹です。
「七里ヶ浜の磯づたい~」で始まる文部省唱歌「鎌倉」にも「由比の浜べを右に見て雪の下村過行けば、八幡宮の御社。上るや石のきざはしの左に高き大銀杏〜」と歌われていました(古いなぁ)。
また、この大銀杏は、鎌倉時代に、三代将軍源実朝の暗殺の舞台になったとも伝えられ、「隠れ銀杏」と呼ばれていました。
ところが、この鶴岡八幡宮の大銀杏、平成22年(2010)3月10日の早朝、強風にあおられで根元から倒れ折れてしまい、当時ニュースになりました。
その後、鶴岡八幡宮に参拝の機会がありましたが、根元だけ残った無残な銀杏を見ました。
でも、鎌倉市民をはじめ、鶴岡八幡宮の関係者の皆さん、そして樹医さんなど専門家のご支援を受け、再生に向けた取り組みが行われ、今は、大銀杏の木は少しづつ元気な姿を取り戻しつつあるそうです。
それにしても、凄い生命力。この生命力こそが、銀杏が神社の御神木として植えられている大きな理由なのかもしれません。
春日部八幡神社の銀杏の木は、鶴岡八幡宮の大銀杏の一枝と言われていますので、鶴岡八幡宮の大銀杏のいわば子孫と言っていいでしょう。
鶴岡八幡宮の大銀杏の倒木の時に、春日部八幡神社の銀杏の里帰りの話しはあったのでしょうか。もちろんそんなことはありませんでした。
◆一夜にして大木にとは
ところで、「一夜にして…」ですが、科学的には、あり得ない話しですよね。食べ物では「一夜干し」、「一夜漬け」などがありますが。
豊臣秀吉の小田原攻めの時の一夜城「石垣山城」が有名ですが、この「石垣山城」は、小田原攻めの際に陣城として築かれた城で、小田原方から気付かれないように小田原城側の山の木をあえて伐採せずに築城し、ほぼ出来上がった時点で、木を一気に伐採することで、あたかも“一夜にして”城が出来上がったかのように見せかけたそうです。やはり仕掛けがあったようです。
◆小説では
そこで、松本清張の小説(『眩人』)の一節を、
〜略〜
旋舞のほか幻術は大夫人をもつともよろこばせた。それは呑刀・吐火・舞剣・植瓜(しょくか)・種棗(しゅそう)などの種目である。
植瓜(しょくか)・種棗(しゅそう)というのは、共にいま蒔いた種からすぐに芽が出て幹が伸び、たちまち花が咲き、実が成るという奇術だが、もちろんこれには仕掛けがある。鉢の中に発条(ばね)の付いた造り樹と花と実を隠しおいて、種を鉢の中に蒔くと、たちまち中の発条が伸び、樹木と花実が鉢の中から出現するというしくみである。これは大食国(アラビア)より渡ってきた手品である。〜以下略〜
(松本清張著『眩人』P338、中公文庫)
注:大夫人とは、藤原不比等の娘で、文武天皇の后、藤原宮子のこと。
主人公の僧、玄昉が西域(波斯人=ペルシャ)出身の少年・康許生(小説では、後に李密翳(り みつえい)と改名)を伴い唐から帰朝。そして玄昉は、唐で仕込んだ知識と幻術を武器に、朝廷での権力伸張を狙う、と言うストーリー。
なお、李密翳(り みつえい)は、実在の人物で、『続日本紀』に名前の見える唯一の波斯人(ペルシア人)とされています。
大夫人宮子は、子(首皇子=後の聖武天皇)を出産後、心の病となりましたが、ある方法によって劇的に回復します。
引用した箇所は、大夫人を慰めるための幻術について語るシーン。
瓜(うり)とか棗(なつめ)の話なので、銀杏とは直接関係はありませんが、単純な私は、大銀杏にもきっと何らかの仕掛けがあったのに違いないと想像(妄想かも)しています。
また、童話の『ジャックと豆の木』ではありませんが、樹木が一夜にして成長するなんて、洋の東西を問わず、見えざる何か? があったのかもしれません。それはわかりませんが。
言い伝え通りとすれば、大銀杏は700年近く春日部八幡神社を守ってきたわけですので、生命力溢れるパワーを感じます。
これからも、参詣の時には大銀杏に手を当てて、パワーを頂きたいと思っています。
◆参考:
春日部八幡神社の公式サイト
↓↓
春日部八幡神社について | 春日部八幡神社
◆ 参考図書