小説・サブリミナル第一章(美しい子悪魔)NO-(4)&CG
「ここで刺されたのね。無意識で刺してしまうほど前夫は嫌われていたのね。仕方ないか、十年も困らせていたんだから・・・呟く様に部屋を出る。
その足で所轄に向かい、着替えを届けた。その後、春日駅、駅前商店街へ向かう。
春日町商店街、南薬局。
「おじさん、この間はどうも。巨人今日はどうかしら」。早乙女はドリンクディス ペンサーから栄養ドリンクを取り出す。
店主は薬剤調合室から顔を出す。
「やあ、いつ見ても南ちゃんは綺麗だね。今日だって勝つさ。六日は楽しかったね、また誘うから、またお母さんとおいで」。
早乙女はドリンクを置く、バックから藤井綾子の写真を徐に出し。そして店主に向 ける。店主は何かと写真を手に見詰めていた。
早乙女は緩やかに念じる。
「おじさん、この女性のこと覚えている?・・」顔を覗き込む早乙女。
「覚えているも何も無いよ、藤井さんだよ。たまに店にも来てくれるお客さんだよ。六日の巨人阪神戦、南ちゃん来ないからさ。お母さんが焼きそばを買いに行って、立ち観していたから連れて来てね、隣に座って貰ったんだ。子供の頃から巨人ファンだって、それで意気投合してね。今度はちゃんとおいでよ」
「うん、あの日はどうしても手が離せなくて。また誘ってね、じゃあこれ」。
とドリンク代を渡した。
「南ちゃんなら毎日でも誘うよ。いつもありがとう」。
店を出ると空車のタクシーが止っていた。「おじさん、いいですか?・・・」。
スッとドアが開き、「どうぞ、どちらまでお送りしましょう」。
「近くて悪いけど本郷まで」。
自宅では母が昼食の後片付けをしていた。娘の突然の帰宅に驚いていた。
「南ッ!・・・帰るならお昼用意しておいたのに。食べたの?・・・」
「ううんまだ、それよりさ、此の写真見てよ」。南は悪いと思いながら写真を母に 差し出す。母はエプロンで手を拭い、写真を手にする。
ごめんなさいお母さん・・・記憶の中へ入り込む。何気なく訊く。
「どう、覚えている?・・・」。
「覚えているも何もないわよ。六日のナイター、貴方が来ないから空いた席が勿体 ないでしょう。立ち観していたからお誘いしたの。
そしたら、南薬局さんのお客なんですって。確か藤井さんって言ったかしら」 完璧、南は口元を引き締めた。
翌六月九日、藤井親子が越す新居。
そこは、前のアパートから徒歩で十五分程度の所に位置する五階建ての公団住宅。
3階の302号室。チャイムを押す。「はい、どちら様でしょうか」。
か細い声で返って来る。娘の敦子である。
「早乙女と言います、お母さんの弁護士です」。
ドアロックが外され、ドアが開く。驚いた様に、クリッとした瞳が愛らしい。深々 と頭を下げる「どうぞ」と部屋へ導きいれる。
部屋は殆ど片付いてなく、段ボール箱が山と積まれていた。
「先生、母は本当にあの人を殺したんでしょうか」。目には涙が滲んでいる。
早乙女は手にしたシステム手帳の間から母親の写真を出す。テーブルに置く。
敦子は写真に手を延ばす。見詰める。
早乙女は、涙に訴える敦子の記憶の中へ入り込む。何気なく訊く。
「敦子さん、あの日の夕方、六時ころお母さんは?・・・」。
「はい、あの日は五時半頃まで母と片付けをしていました。それで、私はここへ帰って来ました。母は六時から東京ドームへ野球を観に行きました。
だから、刑事さんが言う六時半から七時にあの人を殺せる筈がないんです。
でも、母が殺してなくても私が殺していたかも知れません」。
「そんな事言うもんじゃないわよ。その事、刑事さんには話したの?・・」
「いいえ、叔母さんが来て警察の人にはは叔母さんが。だから会っていませんから。先生、母を助けて下さい。
母も私もあの男には散々泣かされて来たんです。父親だなんて一度だって思った事なんかありません。殺されても当然です」。
敦子は憎しみに満ちた怒りをぶつけ、険しい表情を伺わせる。
そして、十年前の事を話し始めた。それは、父親が落魄れていく有様を子供ながらに見て来た事を泣きながら語り、母の苦しみを訴えるのだった。
NO-4
「ここで刺されたのね。無意識で刺してしまうほど前夫は嫌われていたのね。仕方ないか、十年も困らせていたんだから・・・呟く様に部屋を出る。
その足で所轄に向かい、着替えを届けた。その後、春日駅、駅前商店街へ向かう。
春日町商店街、南薬局。
「おじさん、この間はどうも。巨人今日はどうかしら」。早乙女はドリンクディス ペンサーから栄養ドリンクを取り出す。
店主は薬剤調合室から顔を出す。
「やあ、いつ見ても南ちゃんは綺麗だね。今日だって勝つさ。六日は楽しかったね、また誘うから、またお母さんとおいで」。
早乙女はドリンクを置く、バックから藤井綾子の写真を徐に出し。そして店主に向 ける。店主は何かと写真を手に見詰めていた。
早乙女は緩やかに念じる。
「おじさん、この女性のこと覚えている?・・」顔を覗き込む早乙女。
「覚えているも何も無いよ、藤井さんだよ。たまに店にも来てくれるお客さんだよ。六日の巨人阪神戦、南ちゃん来ないからさ。お母さんが焼きそばを買いに行って、立ち観していたから連れて来てね、隣に座って貰ったんだ。子供の頃から巨人ファンだって、それで意気投合してね。今度はちゃんとおいでよ」
「うん、あの日はどうしても手が離せなくて。また誘ってね、じゃあこれ」。
とドリンク代を渡した。
「南ちゃんなら毎日でも誘うよ。いつもありがとう」。
店を出ると空車のタクシーが止っていた。「おじさん、いいですか?・・・」。
スッとドアが開き、「どうぞ、どちらまでお送りしましょう」。
「近くて悪いけど本郷まで」。
自宅では母が昼食の後片付けをしていた。娘の突然の帰宅に驚いていた。
「南ッ!・・・帰るならお昼用意しておいたのに。食べたの?・・・」
「ううんまだ、それよりさ、此の写真見てよ」。南は悪いと思いながら写真を母に 差し出す。母はエプロンで手を拭い、写真を手にする。
ごめんなさいお母さん・・・記憶の中へ入り込む。何気なく訊く。
「どう、覚えている?・・・」。
「覚えているも何もないわよ。六日のナイター、貴方が来ないから空いた席が勿体 ないでしょう。立ち観していたからお誘いしたの。
そしたら、南薬局さんのお客なんですって。確か藤井さんって言ったかしら」 完璧、南は口元を引き締めた。
翌六月九日、藤井親子が越す新居。
そこは、前のアパートから徒歩で十五分程度の所に位置する五階建ての公団住宅。
3階の302号室。チャイムを押す。「はい、どちら様でしょうか」。
か細い声で返って来る。娘の敦子である。
「早乙女と言います、お母さんの弁護士です」。
ドアロックが外され、ドアが開く。驚いた様に、クリッとした瞳が愛らしい。深々 と頭を下げる「どうぞ」と部屋へ導きいれる。
部屋は殆ど片付いてなく、段ボール箱が山と積まれていた。
「先生、母は本当にあの人を殺したんでしょうか」。目には涙が滲んでいる。
早乙女は手にしたシステム手帳の間から母親の写真を出す。テーブルに置く。
敦子は写真に手を延ばす。見詰める。
早乙女は、涙に訴える敦子の記憶の中へ入り込む。何気なく訊く。
「敦子さん、あの日の夕方、六時ころお母さんは?・・・」。
「はい、あの日は五時半頃まで母と片付けをしていました。それで、私はここへ帰って来ました。母は六時から東京ドームへ野球を観に行きました。
だから、刑事さんが言う六時半から七時にあの人を殺せる筈がないんです。
でも、母が殺してなくても私が殺していたかも知れません」。
「そんな事言うもんじゃないわよ。その事、刑事さんには話したの?・・」
「いいえ、叔母さんが来て警察の人にはは叔母さんが。だから会っていませんから。先生、母を助けて下さい。
母も私もあの男には散々泣かされて来たんです。父親だなんて一度だって思った事なんかありません。殺されても当然です」。
敦子は憎しみに満ちた怒りをぶつけ、険しい表情を伺わせる。
そして、十年前の事を話し始めた。それは、父親が落魄れていく有様を子供ながらに見て来た事を泣きながら語り、母の苦しみを訴えるのだった。
NO-4