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サブリミナル・第一章(美しい子悪魔)・NO-(6)&CG

2008-06-02 02:36:16 | 小説・サブリミナル・美しい子悪魔
サブリミナル・第一章(美しい子悪魔)・NO-(6)&CG

本富士署、刑事部屋。
「失礼します。早乙女です」。
佐藤刑事はまた来たのかと言う様な、怪訝そうな顔をして歩み寄る。 
「これはこれは弁護士の先生ですか。藤井は先ほど送検しました。時期に戻りますから、まあお茶でもどうぞ」。佐藤は茶を入れて差し出す。
「それはどうも、頂きます」。と驚く事も無く、出されたお茶に手を延ばし、ゴクリと喉を鳴らす。
「佐藤さん、速まりましたね。容疑者は無実ですよ」。
ゴツンッと鈍い音がする。デカ課長が足を椅子にぶつけた音だった。痛そうに真っ赤な顔をして駆け寄った。部屋にいる刑事は一斉に視線を向けた。
「何を根拠に無実だと言うんですッ!・・・」佐藤は腕を組み、睨み付けた。
「早乙女さん、貴方なにを話したんです。貴方が接見してから一言も喋らない。確かに同情はしますよ、木村と言う男は調べれば調べるほどどうしようもない男だ。しかしね、だからって殺して良いと言う方はない」。
「ともかく恥を書かない打ちに起訴は取り下げて下さい。担当刑事と検事の汚点になりますよ。ともかく依頼人が戻れば分かります。待たせて頂きます」。
早乙女はニッコリ笑う。組んだ足を組み替える。刑事の視線は膝に注がれていた。

三十分後、第二取り調べ室。
容疑者藤井綾子は早乙女が差し入れした白のトレーナーの上下を着ている。早乙女を見るとニッコリと穏やかに微笑する。
担当検事、松沼大が正面に座る。デカ長、佐藤刑事、若い村井刑事が同席。
「さて、弁護士さんが同席しているから話してくれますね」。
綾子は隣に立つ早乙女を見上げる。早乙女は頷く。
「良いわよ、何も可も話して下さい」。早乙女は検事、刑事たちを見る。
「はい。あの日私は・・・」と、切りだす。そしてアリバイを主張する。
佐藤刑事は呆然と聞いている。検事の顔色が観る間に蒼白する。担当刑事の佐藤を睨み付ける。佐藤刑事はポカンと口を開き、額の汗を拭う。
「そんなアリバイが有るなら何故もっと早く話さなかったのかね」。
「話しました。昨日ちゃんと話しました。でも刑事さんが、そんなでたらめだ、誰が信じるんだって、取り合ってくれませんでした。お前が殺ったんだって・・・済みません先生」。藤井は両手を膝に合わせ、頭を下げる。
「もう話しても良いわよ、バッチリアリバイの証言は取れましたから」。
早乙女はバックから書類を出す。検事の松沼に差し出す。
「これは何です?・・・」怪訝そうに見上げ、眼鏡を外す。

「六日の午後六時過ぎ、藤井さんは東京ドームでナイターを観て居ました。試合開始が六時。終了したのは午後八時四十五分。試合開始から東京ドームから一歩も出でおりません。その事を知っている人達の名前です」。
検事は唯呆然と書類を見て居る。デカ長は検事に深々と頭を下げる。供述を報告しなかった事に対し、佐藤刑事を睨み付ける。
「村井、直に東京ドームへ行って裏を取れ。春日商店街の南薬局へもな」。
「はいッ」。村井は検事に頭を下げ、飛び出して行った。佐藤刑事も追うに部屋を出る。二人を追う様に廊下に出るデカ長。
「佐藤ッ!お前はいい。デカ部屋で待機してろッ!」。廊下に響く怒りの声。
佐藤刑事は力なく頭を下げ、大きく溜め息を漏らしながらデカ部屋に入った。
取り調べ室では、検事が最初から供述を求め。藤井綾子は淡々と供述を始める。
・・・・・・・・・話し終えると早乙女を見て頷く。早乙女も頷く。
「それならそうと黙秘などしないで話してくれれば・・・」検事は落胆する。
三十分も過ぎた頃、デカ長の携帯が鳴った「失礼します」と部屋を出る。
「それは本当かッ!・・」と驚きの声が廊下に響き渡った。
間もなくデカ長が戻って来る。沈痛な赴きで検事を見る。
検事は自供は真実であると確信する。
「検事、ちょっと良いですか」。
「いえ、ここで良いでしょう。アリバイは成立したんですね」。 
「申し訳ありません。犯行時間藤井さんはナイターを観ていたそうです。我々の勇み足でした。藤井さん、申し訳ありませんでした」。デカ長は深々と頭を下げた。
検事は早乙女を見ると苦笑する。カバンを持ち、黙って出て行く。
「デカ長さん、藤井さんの釈放の手続きをお願いします」。
「直ぐにします。しかし・・・」デカ長は納得がゆかない儘に部屋を出る。   
デカ部屋には、藤井綾子のアリバイの裏を取りに行った村岡が戻っていた。佐藤刑事のデスクに立ち、捜査状況を話していた。そこへデカ長が戻ってきた。
NO-6-10

小説・サブリミナル第一章(美しい子悪魔)NO-(5)&CG

2008-06-02 02:31:58 | 小説・サブリミナル・美しい子悪魔
小説・サブリミナル第一章(美しい子悪魔)NO-(5)&CG

バブル経済が破綻、会社は倒産。酒に溺れ、女や博打にのめり込んでしまった。
「敦子さん、お母さんは明日か明後日には釈放させて上げる。心配しなくて良いわよ。一つだけ約束してちょうだい。お母さんのアリバイは誰にも話さないで。弁護士として考えがあるから。叔母さんにもよ」。
「はい、母を助けて頂けるなら約束します」。じっと早乙女を見詰める。
「必ず釈放させてあげる。約束よ」。と、小指を出す。
「はい」と色白で細い小指を絡めた。
「じゃあ行くわね」と部屋を出た。

本富士署、刑事部屋。刑事は黙秘の藤井綾子に手を焼いている。
「デカ長、自供は要らないでしょう。凶器からは藤井綾子以外の指紋は検出さけていません。何も喋らないで黙秘している事が犯人だと言う事を物語っています。
それは同情はしますよ。十年も苦労させられて、ようやく別れられたら泥酔して金の無心に来て暴れた。ついカッとなって刺してしまった。それで決まりでしょう」。
「うん、動機も有り凶器も出ている、犯行時に着ていたエプロンにも害者の血痕が付着していたし。検事も行けると言っていた。送検するか」。
警察は自供のないまま、藤井綾子が本星と断定して書類送検に踏み切った。
   
春日町駅。早乙女は次なる手を打つために来ていた。そして、ホームにいる顔見知りの駅員、渡辺茂に歩み寄った。
手には藤井綾子の写真に細工を施してある。駅員は早乙女を見ると軽く敬礼し、歩み寄る。「どうも、今から仕事ですか?・・・」。
「はい、実は渡辺さんに用があって来ました。この女性知りませんか」。
藤井綾子の写真を目の前に提示する。
駅員は白い手袋をした右手で写真を受け取り、二度三度と頷いている。
早乙女は通じると分かっていても、お願い、そう願いながら念じた。
「この女性は六日の午後九時二十分に、白山方面の電車に乗った筈なんです」。
「ええ、良く覚えていますよ。六日は自分は休みでしてね。それが、病欠が出来まして、出てくれないかと電話がありまして出勤したんです。
あの日はナイターが終わって、帰りのお客さんが大勢押し寄せましてね。この女性は白山のパブ桃子で働いている藤井さんです。旦那さんが殺された事件の事ですか」
「はい、知り合いでしたか。私が弁護を」。
「そうですか、あの旦那なら殺されても仕方ないですよ。奥さん随分泣かされていましたからね、でも自分は彼女じゃないと信じています」
「ありがとう渡辺さん、近いうちに刑事が聞きに来ると思います。同じ事を話して上げて下さい」。
「ええ、勿論ですよ」とニッコリ笑顔を浮かべて敬礼していた。 
「じゃあ、お願いします」と名刺を渡し、駅を出た。

その足で東京ドームへ向かった。
午後三時、東京ドーム、正面ゲート。既にゲートが開けられていた。   
ギャザーの入ったミニスカートを着て来た事を忘れてゲートに入ってしまった。
パーッとスカートが舞い上がった。
横にいる知り合いの女性係員が、急いでスカートを押さえた。寸での所で丸見えになる所を救われた。その日に限って生足にガードルを着けて来なかった。
「幸子さんありがとう、助かったわ」。
「もう不用心なんだから、危ばかったね。でも今日はパリーグの試合ですよ」
「ううん違うの、いま担当している事件の事で聞きに来たの」。そう言いながら手帳から写真を取り出す。
大沢幸子は不思議そうな目をしてに写真を覗き込んだ。売店の広瀬加奈が走って来る。
「先輩、今日はロッテと日ハムですよ」。
「知っているわよ。そうだ、加奈も見てちょうだい」。写真を二人に見せる。
南は二人に念じた。二人は顔を上げた。
「その女性がね、六日のナイターを試合開始から終了まで観に来ていたって言うんだけど、見覚えないかな?・・・」
「あの日、先輩来なかったら南薬局さんとお母さんと一緒に観ていましたよ。お母さ んに似ているから兄弟かなって思ったくらいですから」
「私が試合開始と同時に観客席を回った時はもう居ましたよ。それに、あの日は早く試合が終わって帰りも一緒でした。・・でも何かあったんですか」。
「うん、別れた旦那さんを殺したって容疑で調べられているの。二人とも警察が聴きに来たら今の話しして上げて。じゃあお願いね」。
加奈と幸子は驚いた様に顔を見合わせる。早乙女は両手でスカートをしっかりと押さえてドームを出た。そして所轄の本富士署へ向かう。
NO-5