サブリミナル・第一章(美しい子悪魔)・NO-(6)&CG
本富士署、刑事部屋。
「失礼します。早乙女です」。
佐藤刑事はまた来たのかと言う様な、怪訝そうな顔をして歩み寄る。
「これはこれは弁護士の先生ですか。藤井は先ほど送検しました。時期に戻りますから、まあお茶でもどうぞ」。佐藤は茶を入れて差し出す。
「それはどうも、頂きます」。と驚く事も無く、出されたお茶に手を延ばし、ゴクリと喉を鳴らす。
「佐藤さん、速まりましたね。容疑者は無実ですよ」。
ゴツンッと鈍い音がする。デカ課長が足を椅子にぶつけた音だった。痛そうに真っ赤な顔をして駆け寄った。部屋にいる刑事は一斉に視線を向けた。
「何を根拠に無実だと言うんですッ!・・・」佐藤は腕を組み、睨み付けた。
「早乙女さん、貴方なにを話したんです。貴方が接見してから一言も喋らない。確かに同情はしますよ、木村と言う男は調べれば調べるほどどうしようもない男だ。しかしね、だからって殺して良いと言う方はない」。
「ともかく恥を書かない打ちに起訴は取り下げて下さい。担当刑事と検事の汚点になりますよ。ともかく依頼人が戻れば分かります。待たせて頂きます」。
早乙女はニッコリ笑う。組んだ足を組み替える。刑事の視線は膝に注がれていた。
三十分後、第二取り調べ室。
容疑者藤井綾子は早乙女が差し入れした白のトレーナーの上下を着ている。早乙女を見るとニッコリと穏やかに微笑する。
担当検事、松沼大が正面に座る。デカ長、佐藤刑事、若い村井刑事が同席。
「さて、弁護士さんが同席しているから話してくれますね」。
綾子は隣に立つ早乙女を見上げる。早乙女は頷く。
「良いわよ、何も可も話して下さい」。早乙女は検事、刑事たちを見る。
「はい。あの日私は・・・」と、切りだす。そしてアリバイを主張する。
佐藤刑事は呆然と聞いている。検事の顔色が観る間に蒼白する。担当刑事の佐藤を睨み付ける。佐藤刑事はポカンと口を開き、額の汗を拭う。
「そんなアリバイが有るなら何故もっと早く話さなかったのかね」。
「話しました。昨日ちゃんと話しました。でも刑事さんが、そんなでたらめだ、誰が信じるんだって、取り合ってくれませんでした。お前が殺ったんだって・・・済みません先生」。藤井は両手を膝に合わせ、頭を下げる。
「もう話しても良いわよ、バッチリアリバイの証言は取れましたから」。
早乙女はバックから書類を出す。検事の松沼に差し出す。
「これは何です?・・・」怪訝そうに見上げ、眼鏡を外す。
「六日の午後六時過ぎ、藤井さんは東京ドームでナイターを観て居ました。試合開始が六時。終了したのは午後八時四十五分。試合開始から東京ドームから一歩も出でおりません。その事を知っている人達の名前です」。
検事は唯呆然と書類を見て居る。デカ長は検事に深々と頭を下げる。供述を報告しなかった事に対し、佐藤刑事を睨み付ける。
「村井、直に東京ドームへ行って裏を取れ。春日商店街の南薬局へもな」。
「はいッ」。村井は検事に頭を下げ、飛び出して行った。佐藤刑事も追うに部屋を出る。二人を追う様に廊下に出るデカ長。
「佐藤ッ!お前はいい。デカ部屋で待機してろッ!」。廊下に響く怒りの声。
佐藤刑事は力なく頭を下げ、大きく溜め息を漏らしながらデカ部屋に入った。
取り調べ室では、検事が最初から供述を求め。藤井綾子は淡々と供述を始める。
・・・・・・・・・話し終えると早乙女を見て頷く。早乙女も頷く。
「それならそうと黙秘などしないで話してくれれば・・・」検事は落胆する。
三十分も過ぎた頃、デカ長の携帯が鳴った「失礼します」と部屋を出る。
「それは本当かッ!・・」と驚きの声が廊下に響き渡った。
間もなくデカ長が戻って来る。沈痛な赴きで検事を見る。
検事は自供は真実であると確信する。
「検事、ちょっと良いですか」。
「いえ、ここで良いでしょう。アリバイは成立したんですね」。
「申し訳ありません。犯行時間藤井さんはナイターを観ていたそうです。我々の勇み足でした。藤井さん、申し訳ありませんでした」。デカ長は深々と頭を下げた。
検事は早乙女を見ると苦笑する。カバンを持ち、黙って出て行く。
「デカ長さん、藤井さんの釈放の手続きをお願いします」。
「直ぐにします。しかし・・・」デカ長は納得がゆかない儘に部屋を出る。
デカ部屋には、藤井綾子のアリバイの裏を取りに行った村岡が戻っていた。佐藤刑事のデスクに立ち、捜査状況を話していた。そこへデカ長が戻ってきた。
NO-6-10
本富士署、刑事部屋。
「失礼します。早乙女です」。
佐藤刑事はまた来たのかと言う様な、怪訝そうな顔をして歩み寄る。
「これはこれは弁護士の先生ですか。藤井は先ほど送検しました。時期に戻りますから、まあお茶でもどうぞ」。佐藤は茶を入れて差し出す。
「それはどうも、頂きます」。と驚く事も無く、出されたお茶に手を延ばし、ゴクリと喉を鳴らす。
「佐藤さん、速まりましたね。容疑者は無実ですよ」。
ゴツンッと鈍い音がする。デカ課長が足を椅子にぶつけた音だった。痛そうに真っ赤な顔をして駆け寄った。部屋にいる刑事は一斉に視線を向けた。
「何を根拠に無実だと言うんですッ!・・・」佐藤は腕を組み、睨み付けた。
「早乙女さん、貴方なにを話したんです。貴方が接見してから一言も喋らない。確かに同情はしますよ、木村と言う男は調べれば調べるほどどうしようもない男だ。しかしね、だからって殺して良いと言う方はない」。
「ともかく恥を書かない打ちに起訴は取り下げて下さい。担当刑事と検事の汚点になりますよ。ともかく依頼人が戻れば分かります。待たせて頂きます」。
早乙女はニッコリ笑う。組んだ足を組み替える。刑事の視線は膝に注がれていた。
三十分後、第二取り調べ室。
容疑者藤井綾子は早乙女が差し入れした白のトレーナーの上下を着ている。早乙女を見るとニッコリと穏やかに微笑する。
担当検事、松沼大が正面に座る。デカ長、佐藤刑事、若い村井刑事が同席。
「さて、弁護士さんが同席しているから話してくれますね」。
綾子は隣に立つ早乙女を見上げる。早乙女は頷く。
「良いわよ、何も可も話して下さい」。早乙女は検事、刑事たちを見る。
「はい。あの日私は・・・」と、切りだす。そしてアリバイを主張する。
佐藤刑事は呆然と聞いている。検事の顔色が観る間に蒼白する。担当刑事の佐藤を睨み付ける。佐藤刑事はポカンと口を開き、額の汗を拭う。
「そんなアリバイが有るなら何故もっと早く話さなかったのかね」。
「話しました。昨日ちゃんと話しました。でも刑事さんが、そんなでたらめだ、誰が信じるんだって、取り合ってくれませんでした。お前が殺ったんだって・・・済みません先生」。藤井は両手を膝に合わせ、頭を下げる。
「もう話しても良いわよ、バッチリアリバイの証言は取れましたから」。
早乙女はバックから書類を出す。検事の松沼に差し出す。
「これは何です?・・・」怪訝そうに見上げ、眼鏡を外す。
「六日の午後六時過ぎ、藤井さんは東京ドームでナイターを観て居ました。試合開始が六時。終了したのは午後八時四十五分。試合開始から東京ドームから一歩も出でおりません。その事を知っている人達の名前です」。
検事は唯呆然と書類を見て居る。デカ長は検事に深々と頭を下げる。供述を報告しなかった事に対し、佐藤刑事を睨み付ける。
「村井、直に東京ドームへ行って裏を取れ。春日商店街の南薬局へもな」。
「はいッ」。村井は検事に頭を下げ、飛び出して行った。佐藤刑事も追うに部屋を出る。二人を追う様に廊下に出るデカ長。
「佐藤ッ!お前はいい。デカ部屋で待機してろッ!」。廊下に響く怒りの声。
佐藤刑事は力なく頭を下げ、大きく溜め息を漏らしながらデカ部屋に入った。
取り調べ室では、検事が最初から供述を求め。藤井綾子は淡々と供述を始める。
・・・・・・・・・話し終えると早乙女を見て頷く。早乙女も頷く。
「それならそうと黙秘などしないで話してくれれば・・・」検事は落胆する。
三十分も過ぎた頃、デカ長の携帯が鳴った「失礼します」と部屋を出る。
「それは本当かッ!・・」と驚きの声が廊下に響き渡った。
間もなくデカ長が戻って来る。沈痛な赴きで検事を見る。
検事は自供は真実であると確信する。
「検事、ちょっと良いですか」。
「いえ、ここで良いでしょう。アリバイは成立したんですね」。
「申し訳ありません。犯行時間藤井さんはナイターを観ていたそうです。我々の勇み足でした。藤井さん、申し訳ありませんでした」。デカ長は深々と頭を下げた。
検事は早乙女を見ると苦笑する。カバンを持ち、黙って出て行く。
「デカ長さん、藤井さんの釈放の手続きをお願いします」。
「直ぐにします。しかし・・・」デカ長は納得がゆかない儘に部屋を出る。
デカ部屋には、藤井綾子のアリバイの裏を取りに行った村岡が戻っていた。佐藤刑事のデスクに立ち、捜査状況を話していた。そこへデカ長が戻ってきた。
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