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サブリミナル・(美しい子悪魔)・第二章・NO-(17)&CG

2008-06-20 03:39:28 | 小説・サブリミナル-二章-
サブリミナル・(美しい子悪魔)・第二章・NO-(17)&CG

着替えや下着、そして暖かいジャンバーが入っていた。綾乃は、両親でさえ自分に会いに来てくれないのに、そう思うと涙が流れた。
そして翌週、二月二十八日には殺人容疑で起訴された。
綾乃の身柄は警察署から拘置所に移された。
その日の午後、早乙女弁護士が多くの手荷物を持って面会に来た。
「先生、いろいろ有り難うございます。両親も私の事を信じてくれません。だから面会にも一度も来てくれないんです」。
綾乃はサッパリした様に言うと、その目元は涙で濡れていた。
「もう少しよ、貴方は無実なんだから。でも、そうするには裁判が始まるのを待つの。貴方が近藤貴雄を刺殺した容疑で裁判を受けなければならないの。
それで、法廷に立ったときに事実を話すの。
一時不再理ってあってね、二重訴訟禁止の原則、聞いた事くらいあるわよね。法廷に提出された裁判事案で一度無罪の判決がなされた場合、もし、もしもよ、自分がやりましたって言っても同じ罪では裁く事は出来ない、そう言う法律があるの。早乙女はそう言おうとしたが止めた。
知らない方が良いと思ったからだ。
そして一週間が過ぎ、綾乃を担当する検察官は凶器は自分の物と認めた事、凶器に着いていた指紋、ホテル従業員の目撃情報。そして状況証拠など、綾乃の自供が得られなくても充分と判断した。
そして、拘置所に行った検察官は偶然にも早乙女南と会った。検察官は余りに若い女性弁護士に思わず含み笑いを浮かべてしまった。
「早乙女南弁護士とは貴方でしたか。まあ、裁判官には被告人の情状酌量を得る事ですな」。
「そうですわね、でも鳶がコンコルドを産むかも知れませんわよ。では失礼します検事様。アッハハハハハハ」。
早乙女はそう笑いながら頭を下げると、とっとと帰ってしまった。
「なんだあの無礼な態度は、コンコルドでは無くコンドルの間違いに気が付かないで若いだけだな。事務官、あれは何所の弁護士会の人間だ」。
「はい、早乙女南弁護士は何処の弁護士会にも所属していません。フリーです」「そうか、では礼儀を弁えないのは仕方がないな」。

その頃、板橋署を二人の刑事が尋ねていた。
本富士署の佐藤警部と村井刑事の二人だった。生活安全課一係のドアを叩いた。
「失礼します、大山課長・・・」デスクの大山が笑顔で腰を上げた。
「来たな、本富士署の署長から連絡があった。どうぞ・・・」と大山は二人を応接室へ案内した。「それで、どんな用件ですかな?・・・」
「はい、実は先日起こったホテル殺人事件の件です。近藤貴雄さん殺害で影山綾乃さんが殺人容疑で送検されたとか、間違いないんですか?・・・」
「ええ、凶器からも彼女の指紋が出ています。動機は睡眠薬を盛られて眠らされ、恥ずかしい写真を数十枚撮られ、それをネタに脅かされて二ヶ月、
それで殺害に至った。と我々は睨んで送検しました。それが何か?・・・」
「ええ、去年我々が扱った事件は覚えていますか?・・・」
「まだ、本星が挙がらないらしいですな。それと今回の事件は関係ないでしょう。
それとも、何か関わっているんですか?・・・」
「いいえ、事件そのものではありません。私が危ぐしているのは彼女を弁護している早乙女弁護士です。
忠告に来ました。彼女は切れますよ、若い女弁護士と侮っていると痛い目に合います。こんな事を伺うのは場違いですが、容疑者はアリバイを主張していませんか?・・・」佐藤の言葉と西村刑事の真剣な眼差しに大山は身を乗り出した。
「あの弁護士はそんなに凄腕なんですか?・・・」
「ええ、あの松村検事正ですが、彼女に負けて秋田に左遷されたんです」
「エ~ッ!・・・津浪警部補!!津浪は居ないのか!!」
「ハイ!・・・居ます、何ですか?・・・」と入ってきた。
「こちらは本富士署の佐藤警部と村井刑事だ、近藤殺しの件で来られた。影山綾乃は他にアリバイを話してないのか?・・・」
「どうせ話しても出任せですよ。今の所はアパートに居たと一点張りですが、それがどうかしたんですか?・・・本富士署から態々」。と津浪は二人の刑事の名前を聞いて知っていながら業と訊いた。
「いや、供述が変わっていないならそれで良いんだ・・・それで、例の女弁護士は何か言って来たか?・・・」
「いいえ、特には。先日来た時に生意気な弁護士ですよ。送検を取り下げないと困るわよ、だと。凶器から指紋が出ていますし、例の写真の事で決まりでしょう。では私は仕事に戻りますので」と津浪は二人に頭を下げると出て行った。
佐藤と村井は薄く唇を噛んで大山課長を見ていた。
「聞いての通りです。他にもまだありますか?・・・」
「いいえ、他にアリバイの供述が無ければ、でも、あの弁護士は凄いですよ。公判が始まる前にもう一度良く確かめて下さい。
我々は公判が始まったその法廷で新しいアリバイを聞かされました。と言うより、取調べでも、それらしい自供を聞いていたましたが、言い訳だと判断して痛い目にあいました。そこの所を・・・では我々はこれで失礼します」。
と佐藤は腰を上げた。
NO-17-14

サブリミナル・(美しい子悪魔)・第二章・NO-(16)&CG

2008-06-20 03:32:45 | 小説・サブリミナル-二章-
サブリミナル・(美しい子悪魔)・第二章・NO-(16)&CG

「どうも、私は早乙女南と言います。女性の刑事事件専門に弁護しています。警察に伺ったら弁護人がまだだと言われましたので。
影山さんもご存じの通り、刑事事件では弁護人がいないと裁判は受けられない事になっています。私で宜しければ弁護させて頂きます」。
早乙女は真っすぐ綾乃を見据えて名刺を差し出した。「貴方はあの日、映画を観に行っていたの」・・・と南は念じた。
綾乃はホッとした様に瞳を輝かせて名刺を受け取ると椅子に掛けた。
「影山さん、貴方が取り調べで話した供述調書を読ませて頂いたけど。殺害のあった晩はアパートにいたと言い張っているけど、本当なの?・・・」。
すると、綾乃は「えっ!」と驚いて怪訝な顔をして早乙女を見た。
「私アリバイならあります、あの晩は映画館にいたんですよ。アパートにいたなんて嘘です」。早乙女はニヤッと微笑んだ。
「そう、でも今後の取り調べでもアパートにいた事を一貫して言い通して。どんな事を言われようと威されてもアパートにいた事にするの、良いわね。
私が必ず助けてあげる、無罪で釈放させてあげる。私が信じられる?・・・」
「でも、私は映画館に居たんです。それでもアパートにいた事にするんですか」。綾乃はそう言うと困った様に早乙女弁護士を見ていた。
「そうです、裁判は賭け引きなんです。取って置きの隠し玉は最後の最後に出すんです。警察はこの数日の内に送検して起訴する筈です。
どんな甘い事を言われてもアパートにいた事以外は絶対に話しては駄目よ、しつこく言われたら黙秘権を行使して。容疑者には最後の砦みたいな物ね
影山さん、貴方の部屋の鍵を借りて行くけど良いわね。貴方の着替なんか取って来てあげる」。
綾乃は何だか分からないけど、早乙女弁護士に総てを任せる事にした。
「先生、年をお尋ねして良いですか。私は二十六ですけど、知っていますよね」。
「ええ、知っているわよ。私は貴方より二つ上、必ず自由にしてあげる」。
綾乃はその自信に満ちた早乙女の目をじっと見詰めて頷いた。
そして接見時間は終わり、綾乃は再び取り調べを受けた。
「いいかげんに話してしまえ、いくらアパートにいたと言い張っても凶器に指紋がある以上、お前以外考えられんのだ。
それに、当日お前が着ていた服をホテルの従業員が目撃しているんだ。間違いなくこのスーツだったと証言しているんだぞ。
聞けはオーダーメイドだって言うじゃないか、我々みたいな刑事にはこんな十五万のスーツは作れんよ。

確かにあんな写真を取られて辛かっただろう。それは同情する、こんな事は言ってはいけない事だが、裁判官だって同情するさ」。
これが早乙女さんが言っていた甘い言葉なんだ。でも私、どうしてアパートにいたなんて話したんだろ。
綾乃は不思議でならなかった。ついクスッと笑ってしまった。
「おい、何が可笑しいんだっ!。お前は人一人殺しているんだぞ、それを」。津浪は顔を真っ赤にして睨み付けていた。
これが威しか、早乙女さんの言う通りね。
「刑事さん、だったら私が殺したって言う証拠を見せてよ。そんなの状況証拠って言うんでしょう。誰か見ていたんですか。
凶器に指紋があったからって当たり前じゃないですか、私のナイフなんだから。
そう言っているじゃないですか。私はアパートにいました、それ以上なにも話す事はありません」。
「あの女弁護士に何か言い含まされたのか?・・・」
「いいえ、警察は私が犯人だって決め付けているけど、早乙女先生は私を信じてくれました。それだけです」。
「まあいい、ただ殺害に使われた凶器が残されていたんだ。お前も馬鹿な女だな、凶器を残して行くとは」と口元が笑っていた。
「そうですよね、私なら持って逃げますけど。そんな単純なことで警察は私が殺したって判断されたんですか?・・・
日本の警察は世界一というのは嘘なんですね。疑うのが商売ですから、それは仕方ないと思いますけど、こんな事をしていたら真犯人が逃げてしまいますよ」。
「何とでも言いなさい、お前以外に彼を殺す動機がある人間はおらんのだからな」
「そんな事無いですよ、私の他にも脅されていた女性は何人もいますよ」
「その言葉に津浪と西村刑事の顔色が変わった。
「それ誰だ!・・・それが誰だね」と優しい口調に変わった。
「それを調べるのが警察でしょう。甘えないで下さい」と睨み付ける綾乃だった。
「話してくれないかね、君の為でもあるんだ。誰だね?・・・」
「さあ、知っていても言いません。また逮捕されると可愛そうですから」。
それから綾乃は一言も喋る事は無かった。
こうして夕方には留置所に戻された。そして夕食が済むと手提げ袋が二つ、係官が差し入れを持って来てくれた。「影山綾乃さん、差し入れだ」と格子の間から差し入れた。
「有難う御座います」受け取ると早乙女弁護士からだった。
NO-16-12