サブリミナル・(美しい子悪魔)・第二章・NO-(17)&CG
着替えや下着、そして暖かいジャンバーが入っていた。綾乃は、両親でさえ自分に会いに来てくれないのに、そう思うと涙が流れた。
そして翌週、二月二十八日には殺人容疑で起訴された。
綾乃の身柄は警察署から拘置所に移された。
その日の午後、早乙女弁護士が多くの手荷物を持って面会に来た。
「先生、いろいろ有り難うございます。両親も私の事を信じてくれません。だから面会にも一度も来てくれないんです」。
綾乃はサッパリした様に言うと、その目元は涙で濡れていた。
「もう少しよ、貴方は無実なんだから。でも、そうするには裁判が始まるのを待つの。貴方が近藤貴雄を刺殺した容疑で裁判を受けなければならないの。
それで、法廷に立ったときに事実を話すの。
一時不再理ってあってね、二重訴訟禁止の原則、聞いた事くらいあるわよね。法廷に提出された裁判事案で一度無罪の判決がなされた場合、もし、もしもよ、自分がやりましたって言っても同じ罪では裁く事は出来ない、そう言う法律があるの。早乙女はそう言おうとしたが止めた。
知らない方が良いと思ったからだ。
そして一週間が過ぎ、綾乃を担当する検察官は凶器は自分の物と認めた事、凶器に着いていた指紋、ホテル従業員の目撃情報。そして状況証拠など、綾乃の自供が得られなくても充分と判断した。
そして、拘置所に行った検察官は偶然にも早乙女南と会った。検察官は余りに若い女性弁護士に思わず含み笑いを浮かべてしまった。
「早乙女南弁護士とは貴方でしたか。まあ、裁判官には被告人の情状酌量を得る事ですな」。
「そうですわね、でも鳶がコンコルドを産むかも知れませんわよ。では失礼します検事様。アッハハハハハハ」。
早乙女はそう笑いながら頭を下げると、とっとと帰ってしまった。
「なんだあの無礼な態度は、コンコルドでは無くコンドルの間違いに気が付かないで若いだけだな。事務官、あれは何所の弁護士会の人間だ」。
「はい、早乙女南弁護士は何処の弁護士会にも所属していません。フリーです」「そうか、では礼儀を弁えないのは仕方がないな」。
その頃、板橋署を二人の刑事が尋ねていた。
本富士署の佐藤警部と村井刑事の二人だった。生活安全課一係のドアを叩いた。
「失礼します、大山課長・・・」デスクの大山が笑顔で腰を上げた。
「来たな、本富士署の署長から連絡があった。どうぞ・・・」と大山は二人を応接室へ案内した。「それで、どんな用件ですかな?・・・」
「はい、実は先日起こったホテル殺人事件の件です。近藤貴雄さん殺害で影山綾乃さんが殺人容疑で送検されたとか、間違いないんですか?・・・」
「ええ、凶器からも彼女の指紋が出ています。動機は睡眠薬を盛られて眠らされ、恥ずかしい写真を数十枚撮られ、それをネタに脅かされて二ヶ月、
それで殺害に至った。と我々は睨んで送検しました。それが何か?・・・」
「ええ、去年我々が扱った事件は覚えていますか?・・・」
「まだ、本星が挙がらないらしいですな。それと今回の事件は関係ないでしょう。
それとも、何か関わっているんですか?・・・」
「いいえ、事件そのものではありません。私が危ぐしているのは彼女を弁護している早乙女弁護士です。
忠告に来ました。彼女は切れますよ、若い女弁護士と侮っていると痛い目に合います。こんな事を伺うのは場違いですが、容疑者はアリバイを主張していませんか?・・・」佐藤の言葉と西村刑事の真剣な眼差しに大山は身を乗り出した。
「あの弁護士はそんなに凄腕なんですか?・・・」
「ええ、あの松村検事正ですが、彼女に負けて秋田に左遷されたんです」
「エ~ッ!・・・津浪警部補!!津浪は居ないのか!!」
「ハイ!・・・居ます、何ですか?・・・」と入ってきた。
「こちらは本富士署の佐藤警部と村井刑事だ、近藤殺しの件で来られた。影山綾乃は他にアリバイを話してないのか?・・・」
「どうせ話しても出任せですよ。今の所はアパートに居たと一点張りですが、それがどうかしたんですか?・・・本富士署から態々」。と津浪は二人の刑事の名前を聞いて知っていながら業と訊いた。
「いや、供述が変わっていないならそれで良いんだ・・・それで、例の女弁護士は何か言って来たか?・・・」
「いいえ、特には。先日来た時に生意気な弁護士ですよ。送検を取り下げないと困るわよ、だと。凶器から指紋が出ていますし、例の写真の事で決まりでしょう。では私は仕事に戻りますので」と津浪は二人に頭を下げると出て行った。
佐藤と村井は薄く唇を噛んで大山課長を見ていた。
「聞いての通りです。他にもまだありますか?・・・」
「いいえ、他にアリバイの供述が無ければ、でも、あの弁護士は凄いですよ。公判が始まる前にもう一度良く確かめて下さい。
我々は公判が始まったその法廷で新しいアリバイを聞かされました。と言うより、取調べでも、それらしい自供を聞いていたましたが、言い訳だと判断して痛い目にあいました。そこの所を・・・では我々はこれで失礼します」。
と佐藤は腰を上げた。
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着替えや下着、そして暖かいジャンバーが入っていた。綾乃は、両親でさえ自分に会いに来てくれないのに、そう思うと涙が流れた。
そして翌週、二月二十八日には殺人容疑で起訴された。
綾乃の身柄は警察署から拘置所に移された。
その日の午後、早乙女弁護士が多くの手荷物を持って面会に来た。
「先生、いろいろ有り難うございます。両親も私の事を信じてくれません。だから面会にも一度も来てくれないんです」。
綾乃はサッパリした様に言うと、その目元は涙で濡れていた。
「もう少しよ、貴方は無実なんだから。でも、そうするには裁判が始まるのを待つの。貴方が近藤貴雄を刺殺した容疑で裁判を受けなければならないの。
それで、法廷に立ったときに事実を話すの。
一時不再理ってあってね、二重訴訟禁止の原則、聞いた事くらいあるわよね。法廷に提出された裁判事案で一度無罪の判決がなされた場合、もし、もしもよ、自分がやりましたって言っても同じ罪では裁く事は出来ない、そう言う法律があるの。早乙女はそう言おうとしたが止めた。
知らない方が良いと思ったからだ。
そして一週間が過ぎ、綾乃を担当する検察官は凶器は自分の物と認めた事、凶器に着いていた指紋、ホテル従業員の目撃情報。そして状況証拠など、綾乃の自供が得られなくても充分と判断した。
そして、拘置所に行った検察官は偶然にも早乙女南と会った。検察官は余りに若い女性弁護士に思わず含み笑いを浮かべてしまった。
「早乙女南弁護士とは貴方でしたか。まあ、裁判官には被告人の情状酌量を得る事ですな」。
「そうですわね、でも鳶がコンコルドを産むかも知れませんわよ。では失礼します検事様。アッハハハハハハ」。
早乙女はそう笑いながら頭を下げると、とっとと帰ってしまった。
「なんだあの無礼な態度は、コンコルドでは無くコンドルの間違いに気が付かないで若いだけだな。事務官、あれは何所の弁護士会の人間だ」。
「はい、早乙女南弁護士は何処の弁護士会にも所属していません。フリーです」「そうか、では礼儀を弁えないのは仕方がないな」。
その頃、板橋署を二人の刑事が尋ねていた。
本富士署の佐藤警部と村井刑事の二人だった。生活安全課一係のドアを叩いた。
「失礼します、大山課長・・・」デスクの大山が笑顔で腰を上げた。
「来たな、本富士署の署長から連絡があった。どうぞ・・・」と大山は二人を応接室へ案内した。「それで、どんな用件ですかな?・・・」
「はい、実は先日起こったホテル殺人事件の件です。近藤貴雄さん殺害で影山綾乃さんが殺人容疑で送検されたとか、間違いないんですか?・・・」
「ええ、凶器からも彼女の指紋が出ています。動機は睡眠薬を盛られて眠らされ、恥ずかしい写真を数十枚撮られ、それをネタに脅かされて二ヶ月、
それで殺害に至った。と我々は睨んで送検しました。それが何か?・・・」
「ええ、去年我々が扱った事件は覚えていますか?・・・」
「まだ、本星が挙がらないらしいですな。それと今回の事件は関係ないでしょう。
それとも、何か関わっているんですか?・・・」
「いいえ、事件そのものではありません。私が危ぐしているのは彼女を弁護している早乙女弁護士です。
忠告に来ました。彼女は切れますよ、若い女弁護士と侮っていると痛い目に合います。こんな事を伺うのは場違いですが、容疑者はアリバイを主張していませんか?・・・」佐藤の言葉と西村刑事の真剣な眼差しに大山は身を乗り出した。
「あの弁護士はそんなに凄腕なんですか?・・・」
「ええ、あの松村検事正ですが、彼女に負けて秋田に左遷されたんです」
「エ~ッ!・・・津浪警部補!!津浪は居ないのか!!」
「ハイ!・・・居ます、何ですか?・・・」と入ってきた。
「こちらは本富士署の佐藤警部と村井刑事だ、近藤殺しの件で来られた。影山綾乃は他にアリバイを話してないのか?・・・」
「どうせ話しても出任せですよ。今の所はアパートに居たと一点張りですが、それがどうかしたんですか?・・・本富士署から態々」。と津浪は二人の刑事の名前を聞いて知っていながら業と訊いた。
「いや、供述が変わっていないならそれで良いんだ・・・それで、例の女弁護士は何か言って来たか?・・・」
「いいえ、特には。先日来た時に生意気な弁護士ですよ。送検を取り下げないと困るわよ、だと。凶器から指紋が出ていますし、例の写真の事で決まりでしょう。では私は仕事に戻りますので」と津浪は二人に頭を下げると出て行った。
佐藤と村井は薄く唇を噛んで大山課長を見ていた。
「聞いての通りです。他にもまだありますか?・・・」
「いいえ、他にアリバイの供述が無ければ、でも、あの弁護士は凄いですよ。公判が始まる前にもう一度良く確かめて下さい。
我々は公判が始まったその法廷で新しいアリバイを聞かされました。と言うより、取調べでも、それらしい自供を聞いていたましたが、言い訳だと判断して痛い目にあいました。そこの所を・・・では我々はこれで失礼します」。
と佐藤は腰を上げた。
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