エンターテイメント、誰でも一度は憧れる。

PCグラフィック、写真合成、小説の下書き。

サブリミナル・(美しい子悪魔)・第二章・NO-(21)&CG

2008-06-27 02:50:30 | 小説・サブリミナル-二章-
サブリミナル・(美しい子悪魔)・第二章・NO-(21)&CG

遺跡の入り口の前にあるレストランの隣のアパート、その夫婦は住んでいた。
前以て電話して行った事で思い出してくれていた。
「はい、あの日は子供の信治の誕生日で主人の実家に呼ばれていたんです。それで二十日の夜は主人が映画の券を貰ったからって、オールナイトを観ました。
それで、お話しの女性ですけど、顔は良く覚えていませんが騎麗な女性でした。信治にポップコーンくれましてね、この子ったらポップコーン好きで。
それから、出る時も一緒で私達は後から出たんですけど。服はグリーン系のパンツスーツでした。脚の線が騎麗でしたよ。
まさか、あの女性があの時間に新宿にいたのに、板橋のモーテルなんかで人殺しなんか出来ませんよ。なんなら、裁判で証言しても良いですよ」。
津浪は唇を噛みしめていた。
「そうですか、では我々の捜査ミスですかな。夜分申し訳ありませんでした」。津浪の脚は重く、僅か数百メートルの駐車場へ歩くにも停まっては歩き、東京へ戻るのが怖くなる程だった。
「警部、だったら誰が犯人なんです。影山綾乃はカーホテルの従業員に見られているんですよ。部屋に指紋はなかったとしても、凶器には影山綾乃以外の指紋は検出されていないんです。こんなバカな事がありますかね」。
若い望月刑事はチンプリ反っていた。
「影山綾乃は一人っ子か、双子の線はないな。だったら共犯が居るかも知れん、知り合いや友人関係はどうだ」。
「いえ、会社も同僚も誰一人と影山綾乃が犯人なんて思っている者はいません。
会社を辞めたのも、迷惑を掛けたくないからと会社側が止めるのも聴かないで辞表を送ったそうです。信頼性は抜群ですよ。
それから、一人だけ容疑者が上がったんですが。アリバイがありました」。
望月はそう言うと天を仰いで背中を延ばしていた。
「そうか、物証は影山綾乃が本犯人なんだけどな。刑事事件でしかも殺人事件の裁判中に、中止なんて訳にいかんからな。
殺人の証拠を見いだしておきながら、無実の証拠も握っているんだよな」。津浪はそうポツリ呟くように言うと車に乗り込んだ。

その頃、早乙女南は西池袋のマンションで一人公判記録に目を通していた。
そして弁護士に成り立ての頃の事を思い出していた。
あれは五年前だった、初めて殺人事件を起こした女性の弁護を引き受けた時だった。その女性は四十才、夫は競馬とパチンコ、麻雀と賭け事ならなんでもやるヤクザだった。
或日、夫が久し振りに帰って来たら、酔って金の無心に来たと言うのだった。そして金はないと言うと、夫の表情が一転し、すごい形相で睨み付けた。
奥さんは殺されると思った。
その時、近所の子供が置いて行った金属バットを手にして亭主の頭を殴っていたと言うのだった。
アパートは建て直す事が決まり、他の住人は誰一人おらず、容疑者は娘を姉夫婦に預け、一人片付けをしていた時だと言う。
そして夜更けに街をふらふらと歩いていた所を警官に職務質問され、衣服に付いた血痕を咎められて逮捕されたのだった。
早乙女はそんな女性に同情した。そんな時、私は犯行時間には東京ドームで巨人£阪神戦を観ていた。そう思っていた。
容疑者は早乙女南の母親に似ていたのだ。そして南はその日、母親と東京ドームで野球観戦していたのだった。
アリバイがあやふやだった容疑者は、突然、私その時間は野球を観ていました。と、思い出した様に野球を観戦していたと言い出した。
その話を黙って聴いていると、南が観戦していた巨人£阪神戦と全く同じだったのだ。そして席はバックネット裏。
南は訊いた、隣には誰がいたの、と。すると大柄な女性がいて、焼きそばと弁当を食べていたと言うのだった。
服はどんな服を着ていたの、と聴くと。オレンジ色のジャージだったと言うのだ。私と母がいた席の隣だ。私の記憶を自分の事の様に話している。

それからだった。
そして翌日、朝一番で後藤検事の所へ津浪警部と望月刑事の二人が顔を出した。その顔は疲れたと言っている様に不精髭が伸びていた。
「事務官、二人に濃いコーヒーを出してやって下さい。それで、静岡と映画館の影山綾乃の証言と一致したんですか」。
後藤検事は津浪と望月刑事同様、目は凹んで熊が出来ていた。
「検事もお疲れの様ですね。静岡の方は奥さんにしか会う事はできませんでしたが、法廷に出て証言しても良いと言っていました。
あの時間、九時四十五分から十二時過ぎの映画が終了するまで。影山綾乃は映画を観ていた事は事実の様です。
こうも言われました、あの時間に映画を観ていた女性が板橋で人を殺すなんて無理だとも。それから、服装ですが、映画館を出たのも一緒で、服はグリーン系のパンツスーツだったと。どうやら私達は両方の証言を得たようです」。
NO-21-22

サブリミナル・(美しい子悪魔)・第二章・NO-(20)&CG

2008-06-27 02:47:02 | 小説・サブリミナル-二章-
サブリミナル・(美しい子悪魔)・第二章・NO-(20)&CG

「しかし、そんな事はでたらめです。そんな事を聞いたような覚えはありますがでたらめに決まっています。
検事、ではどうして影山綾乃はアパートにいたと言い張ったんです。不自然じゃないですか」。
「そんな事はどうでも良い。映画館に居たと言うんだ。調べるのが先です」。
津浪刑事は一語も無く頭を下げた。
そして翌日。綾乃は検察官に呼ばれた。そして検事の前にいた。
「それで、映画館にいたと言うのはどう言う事です。そんな事はここでも話してくれませんでしたね」。
「はい、どうせ話しても刑事さんと一緒ですから。私が犯人だって決めているんですから。だから話しても無駄だと思ったんです」。
後藤検事はムッとした様に顔を顰た。
「では改めてお聞きします。二月二十日の午後八時からの事を話して下さい」。「はい、あの晩、近藤さんから電話があって。相変わらず卑猥な内容の電話でした。頭に来て映画でも観てスッキリさせようと、新宿オリオンに007のワールド、イズ、ノット、イナフって言う映画を観に行ったんです。
家を出たのが九時近かったと思います。歩いて氷川台駅から電車に乗って映画館に着いたのは調度夜の部の二回目の上映が始まる少し前でした。九時三十五分だったと思います」。
綾乃はすらすら話した。検事は、まさか、と言った風な顔をして事務官を見た。「貴方は夜アパートを留守にする時はいつも明かりを点けたまま出るそうですが、それは何故なんです。当日もそうでしたね」。
「はい、女が一人で居ると言う事を知られたくないからです。それはストーカーや痴漢、それに空き巣なんかに狙われない為です。たまにテレビなんかも点けたまま出る事もあります。自衛の為です」。
そう言われて後藤検事は返す言葉がなかった。
「では、逮捕当日はベージュのスーツを着ていましたが、映画館にもあのスーツを着て行ったんですか」。

「いいえ、ベージュのスーツは仕事に行く時だけです。映画にはグリーン系のパンツスーツで行きました。ミニだと変な人達に覗かれますから。
そうだ、私の隣の席に男の子を連れた若い夫婦がいました。確か、シンちゃんって呼ばれていました。私ポップコーンあげました」。
そしてその知らせは事務官の手に因って所轄の刑事に告げられた。そしてその日の取り調べは僅か二時間で終わり、拘置所に帰された。
その知らせを受けた所轄の刑事は映画館を調べ始めていた。
津浪警部は一人一人の従業員に聞いていた。しかし、一月も前の客の事など覚えている者は殆どいなかった。
「二月二十日、当日の九時四十五分ですがね、小さな男の子を連れた若い夫婦が来ていたと言うんです。男の子はシンちゃんとか呼ばれていたそうです」。
「ああ、それだったら向かいの喫茶店のマスターの息子さん夫婦じゃないかな。確かオールナイトを観に来ていた様な気がする。でも、静岡へ帰っちまったよ」
刑事の表情が一転して強張った。
まさか、でたらめじゃなかったのか。それとも偶然なのか、津浪は耳を疑った。
「それで、その夫婦の子供はシンちゃんに間違いないんですか」。
「ええ、信と治めると書いてしんじ、シンちゃん。間違いないですよ」。
「外に何か変わった事がなかったですか、例えば喧嘩とか事故とか」。
津浪は映画の内容や居た人間の事は聞けば分かるだろうと、映画以外の出来事なら、映画館にいなければ分からない事を聞き出そうとしていた。

すると、売店にいた女の子が出て来た。「何か」と津浪警部は聞いた。
「はい、こんな事でいいのなら。二月二十日は私が当番で映写室の助手をしていたんです。そして九時四十五分の放映前に、舞台の垂れ幕が落ちたんです。
それで少し館内がざわめいたんです。それと、映画が終わった十二時頃ですけど。お客さんが出て来た頃に、店の前で女の子同士の喧嘩があって、新宿のお巡りさんが五~六人来て連れて行きました」。
津浪警部は子供の事は電話で確認すれば良いと思い、検事に会いに戻った。
その顔は、確かな証拠を掴んだときの様に勝ち誇った様だった。
そして検事室に行くと、放映前に垂れ幕が落下した事、十二時過ぎの喧嘩の事を検事に告げた。
「それで、肝心な子供の事はどうしたんです。居たんですか居なかったんですか」検事は津浪の顔を見て納得した様に頷いた。
「それで、静岡県警に要請して確認したんですかっ!・・・」
津浪警部は首を振った。検察官の眉が釣り上がり、顔が赤くなった。
「だから今度の様な事になるんです。早く確認して下さい。今後そのような捜査ミスをしたら捜査から外れてもらいますよ、津浪君」。
津浪は黙って頭を下げた。そして自ら静岡へ飛んだ。
その若い親子は静岡市内から南に向かった登呂遺跡で有名な地域に住んでいた。
NO-20-20