小説・鉄槌のスナイパー・二章・NOー(48)&CG
そしてハウスの規模は一間半と二間のログ風にしたい事を話した。
「分かりました。直ぐに手配しますよ。一応見積もりを出して届けます」。
「いいですよ、信用していますから。準備が出来次第初めて下さい。それから床はコンクリートで、すのこを敷いて下さい」。
「京平さん、あれは?・・・」美保は少し膨れた表情で京平を見ていた。
「分かっているよ。それからタヌキの小屋が欲しいんです。あの回りに住んでいるのが慣れてきて。美保が可愛いがっているもんだから」。
「はい、いいですよ。余った材料で造ってあげますよ奥さん」。
「はい、宜しくお願いします」。
美保は満足そうにニッコリ笑うと両手を前に合わせて頭を下げた。そして用事を済ませるとスーパーに寄って食糧を買い、電話ボックスに二人で入った。
そして三日振りに真田貴明の携帯に電話した。そして直ぐに切り、掛け直すと待っていたかのように出た。
「はい、真田です。電話がこないので心配していました」。
「今から直ぐに京都へ帰って家にいろ。今夜から電話に出て良し。作戦は成功した。明日からは合図はしない。
警察から知らせがあったら堂々としていろ。それから父親の通帳から引き降ろした現金の事だが、軽井沢からツバメ急便の左京区営業所止まりでお前宛で送ってある。
取り合えず入金しておけ。包み箱は家の中で灰にしろ。後で必要な額は請求する。決して裏切るな」。
「はい、有り難うございました。警察には絶対に見破られるような事はしません。余計な事は喋りません。有り難うございました」。
そして電話を切ると別荘に帰った。日が落ちて月の光で照らされた林道を抜けて別荘に通じるフェンスの前で車を止めた。
美保は鍵を持ってフェンスを開けた。そして車が入るとフェンスを閉めて車に乗り込んだ。車のヘッドライトには無数の虫が群がって飛んでいた。美保に止まったのか、しきりに払い落としていた。
そして荷物を抱えて別荘に入った。
「もう、虫が止まって。あっ、黄金虫だ。こんなのがいっぱいいるんだね。カブト虫もいるかな」。
「うん、沢山いるよ。コナラやクヌギの樹液の出ている所に集まってるんだ。後で見に行こうか」。
「うん、でもこんな暗くて虫っているの」?
「カブト虫は元々夜行性だからね、昼間もいるけど夜になると地面や腐った切り株の下から出て来て樹液を吸うんだ」。
「そうか、カブト虫は夜行性なんだ。ねえタヌキって虫も食べるの」。
「食べるよ、タヌキは雑食性だから食べない物はないくらい何でも食べる。だから飼うには楽だよ。家の掃除さえ小まめにやれば気になる臭いもしないし。まあ気に入れば小屋に住むさ。この森にはリスもいるぞ。ムササビもね」。
美保は料理を作る手を止めて話に夢中になっていた。そして米を研いで炊飯器にセットした。そしてご飯が炊けるまで京平の隣に座ってテレビを点けた。
そして時計を見るとNHKに変えた。ちょうど七時のニュースが始まって二人は会話もなくじっと見入っていた。
しかし、二人が密そかに願っていたニュースは終わるまで流れなかった。ほっと胸を撫で下ろした美保は京平の手を握った。
「まだ見付かってないね。明日かな?・・その次ぎの日かしら」。
「うん、三日だろうな。置き去りになった車を不審に思った管理事務所の人間が辺りを調べ始めるのは二日か三日。
でも車にはキーを付けたままだから誰かが見付けて盗んでくれればもっと時間稼ぎが出来る。それを見越してキーを抜いて来なかったんだけどね」。
「え~ッ、あんな状況で誰かに見付かるかも知れない時間で!・・まさかそんな事まで考えていたなんて。適わないわね。
私はライフルを片付けて薬莢を拾ってから合図を待っているあいだ、誰かに見付からない事だけを考えていたもん。凄いよ京平さんは」。
「美保、それが当たり前だよ。それが普通だからね。ただ僕は真田が仲間を呼んでいたと分かった時に色々な事を想定して考えていたから、行動が取れただけだよ」。
「じゃああの人達が来る事も分かっていたの」?
「うん、でも一台の車で六人が来てくれるとは思わなかった。二台か三台でくる事を想定していた。嬉しい誤算だったよ。
美保、あのワンボックスは京都ナンバーだったよ、奴等は一台で来たんだ。それで軽井沢の駅か近所に車を入れておいたんだろうな。美保、明日の軽井沢の天気は」?
美保は新聞を取りに行くと広げて週間天気予報の蘭を見ていた。
「今夜から雨だって、もう降っているかも。明日も午前中は雨で午後から晴れるって。天気がどうかしたの?・・・」。
「最高だ。僕等の痕跡は雨で流されて完璧に消えるって事だよ。それに草が延びて死体の発見も遅れる。言う事ないな」。
「そうやわ、それに鉄鋼弾は突き抜けて地面深くめりこんではるし、炸裂弾からもライフルの特定は出来へんし。何も可もハッピーやわ」。
そんな話しをしていると、ピッピッピッと炊飯器が知らせた。二人で合わせたようにスッと立つと台所に立った。
美保は味噌汁を作り、京平は肉を焼き、二人でサラダを作ると遅い夕飯を取った。そして食事が済むと、残ったおかずと買って来たドックフードの袋を開け、二頭のタヌキの餌を洗面器に入れて庭に出た。
庭を照らすサーチライトの中で美保は二匹のタヌキを呼んだ。
「マツ~、カエデ~、ご飯よ~っ出てらっしゃい」。と、二度三度と呼んだ。そして獣道をじっと見ていた。すると、遠くからガサガサと枯れ木を踏む音がして現れた。
そして美保の差し出した洗面器に近付くと止まった。そして用心深く寄って来ると二頭並んで洗面器に顔を突っ込んで食べていた。
美保は満足そうにそっと離れると部屋に入った。そして窓越しから食べて姿を一緒に見ていた。「可愛いわね」二人は何時までも見ていた。
そして食べ終わって二頭の狸が森に帰ると洗面器を取りに行き、庭の水道で洗って明かりを消した。
そして十一時を過ぎると玄関の明かりが一つ、部屋の明かりは消えた。
翌朝、二人は電話で起こされた。見ると八時を回っていた。京平は寝室の電話を取った、それはインテリア店からだった。砂利を運ぶと言う電話だった。
美保はその事を聞くと急いで支度をして自分達の食事は後にタヌキ達の食事を用意して先にやっていた。
それは、ブルドーザーが入って庭を整地する、大きな音でタヌキが怖がって出て来ないと思った美保の優しさからだった。
NO-48-9
そしてハウスの規模は一間半と二間のログ風にしたい事を話した。
「分かりました。直ぐに手配しますよ。一応見積もりを出して届けます」。
「いいですよ、信用していますから。準備が出来次第初めて下さい。それから床はコンクリートで、すのこを敷いて下さい」。
「京平さん、あれは?・・・」美保は少し膨れた表情で京平を見ていた。
「分かっているよ。それからタヌキの小屋が欲しいんです。あの回りに住んでいるのが慣れてきて。美保が可愛いがっているもんだから」。
「はい、いいですよ。余った材料で造ってあげますよ奥さん」。
「はい、宜しくお願いします」。
美保は満足そうにニッコリ笑うと両手を前に合わせて頭を下げた。そして用事を済ませるとスーパーに寄って食糧を買い、電話ボックスに二人で入った。
そして三日振りに真田貴明の携帯に電話した。そして直ぐに切り、掛け直すと待っていたかのように出た。
「はい、真田です。電話がこないので心配していました」。
「今から直ぐに京都へ帰って家にいろ。今夜から電話に出て良し。作戦は成功した。明日からは合図はしない。
警察から知らせがあったら堂々としていろ。それから父親の通帳から引き降ろした現金の事だが、軽井沢からツバメ急便の左京区営業所止まりでお前宛で送ってある。
取り合えず入金しておけ。包み箱は家の中で灰にしろ。後で必要な額は請求する。決して裏切るな」。
「はい、有り難うございました。警察には絶対に見破られるような事はしません。余計な事は喋りません。有り難うございました」。
そして電話を切ると別荘に帰った。日が落ちて月の光で照らされた林道を抜けて別荘に通じるフェンスの前で車を止めた。
美保は鍵を持ってフェンスを開けた。そして車が入るとフェンスを閉めて車に乗り込んだ。車のヘッドライトには無数の虫が群がって飛んでいた。美保に止まったのか、しきりに払い落としていた。
そして荷物を抱えて別荘に入った。
「もう、虫が止まって。あっ、黄金虫だ。こんなのがいっぱいいるんだね。カブト虫もいるかな」。
「うん、沢山いるよ。コナラやクヌギの樹液の出ている所に集まってるんだ。後で見に行こうか」。
「うん、でもこんな暗くて虫っているの」?
「カブト虫は元々夜行性だからね、昼間もいるけど夜になると地面や腐った切り株の下から出て来て樹液を吸うんだ」。
「そうか、カブト虫は夜行性なんだ。ねえタヌキって虫も食べるの」。
「食べるよ、タヌキは雑食性だから食べない物はないくらい何でも食べる。だから飼うには楽だよ。家の掃除さえ小まめにやれば気になる臭いもしないし。まあ気に入れば小屋に住むさ。この森にはリスもいるぞ。ムササビもね」。
美保は料理を作る手を止めて話に夢中になっていた。そして米を研いで炊飯器にセットした。そしてご飯が炊けるまで京平の隣に座ってテレビを点けた。
そして時計を見るとNHKに変えた。ちょうど七時のニュースが始まって二人は会話もなくじっと見入っていた。
しかし、二人が密そかに願っていたニュースは終わるまで流れなかった。ほっと胸を撫で下ろした美保は京平の手を握った。
「まだ見付かってないね。明日かな?・・その次ぎの日かしら」。
「うん、三日だろうな。置き去りになった車を不審に思った管理事務所の人間が辺りを調べ始めるのは二日か三日。
でも車にはキーを付けたままだから誰かが見付けて盗んでくれればもっと時間稼ぎが出来る。それを見越してキーを抜いて来なかったんだけどね」。
「え~ッ、あんな状況で誰かに見付かるかも知れない時間で!・・まさかそんな事まで考えていたなんて。適わないわね。
私はライフルを片付けて薬莢を拾ってから合図を待っているあいだ、誰かに見付からない事だけを考えていたもん。凄いよ京平さんは」。
「美保、それが当たり前だよ。それが普通だからね。ただ僕は真田が仲間を呼んでいたと分かった時に色々な事を想定して考えていたから、行動が取れただけだよ」。
「じゃああの人達が来る事も分かっていたの」?
「うん、でも一台の車で六人が来てくれるとは思わなかった。二台か三台でくる事を想定していた。嬉しい誤算だったよ。
美保、あのワンボックスは京都ナンバーだったよ、奴等は一台で来たんだ。それで軽井沢の駅か近所に車を入れておいたんだろうな。美保、明日の軽井沢の天気は」?
美保は新聞を取りに行くと広げて週間天気予報の蘭を見ていた。
「今夜から雨だって、もう降っているかも。明日も午前中は雨で午後から晴れるって。天気がどうかしたの?・・・」。
「最高だ。僕等の痕跡は雨で流されて完璧に消えるって事だよ。それに草が延びて死体の発見も遅れる。言う事ないな」。
「そうやわ、それに鉄鋼弾は突き抜けて地面深くめりこんではるし、炸裂弾からもライフルの特定は出来へんし。何も可もハッピーやわ」。
そんな話しをしていると、ピッピッピッと炊飯器が知らせた。二人で合わせたようにスッと立つと台所に立った。
美保は味噌汁を作り、京平は肉を焼き、二人でサラダを作ると遅い夕飯を取った。そして食事が済むと、残ったおかずと買って来たドックフードの袋を開け、二頭のタヌキの餌を洗面器に入れて庭に出た。
庭を照らすサーチライトの中で美保は二匹のタヌキを呼んだ。
「マツ~、カエデ~、ご飯よ~っ出てらっしゃい」。と、二度三度と呼んだ。そして獣道をじっと見ていた。すると、遠くからガサガサと枯れ木を踏む音がして現れた。
そして美保の差し出した洗面器に近付くと止まった。そして用心深く寄って来ると二頭並んで洗面器に顔を突っ込んで食べていた。
美保は満足そうにそっと離れると部屋に入った。そして窓越しから食べて姿を一緒に見ていた。「可愛いわね」二人は何時までも見ていた。
そして食べ終わって二頭の狸が森に帰ると洗面器を取りに行き、庭の水道で洗って明かりを消した。
そして十一時を過ぎると玄関の明かりが一つ、部屋の明かりは消えた。
翌朝、二人は電話で起こされた。見ると八時を回っていた。京平は寝室の電話を取った、それはインテリア店からだった。砂利を運ぶと言う電話だった。
美保はその事を聞くと急いで支度をして自分達の食事は後にタヌキ達の食事を用意して先にやっていた。
それは、ブルドーザーが入って庭を整地する、大きな音でタヌキが怖がって出て来ないと思った美保の優しさからだった。
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