小説・鉄槌のスナイパー・二章・NOー(50)&CG
「変て?・・どう変だったんだって?・・・」。
「うん、その運転手が言うには。その男は自転車に乗って来て乗り込むと真田って言ったらしいんだけどさ、白糸の滝へ行ってくれって言ったそうだ。
それで行くと、スピードを落とせとか普通に走れとか言って妙だったって。それで空き地に車を止めさせたりして峠の茶屋まで行くと引き返して、白糸ハイドランドウェイの途中にある空き地で降りたってさ。
それで、警察に知らせた方が良いって言ったんだけどさ。警察に言うと呼び出されて仕事にならないから黙っているんだって。
俺も聞いたら気になってさ、此々へ来る途中遠回りして有料道路を回ってさ、空き地を見て来たけど何も無かったよ。ラバーコーンが一つあったらしいけど何も無かった。それに自転車が碓氷峠の旧道で見付かったんなら安中か富岡の方へ行ったんだろう」。
「そんな行方不明なんて事はたまにあるのか」?
「ああ、毎年一シーズン中五人や六人は居なくなる。もう警察も慣れているよ。また家出だろって身を入れて探してなんかないよ。
先月も二件あったばかりだから。いままで見付かった試しがない。そのうち所持金がなくなれば家に帰るさ」。
「そう、そんなに家出みたいなのがあるのか。こっちは聞いた事ないけどな。登山で遭難なんて言うのはしょっちゅうだけどさ」。
「うん、大方は宿代の踏み倒しが多いんだけどさ。中には旦那をホテルに残したまま蒸発なんて言うのもあるし、その逆もある。観光地や避暑地では良くある事さ。俺の所でも去年あったよ。若い夫婦だけど、旦那を残して女房が蒸発して大騒ぎしたんだ」。
「それで小山さんどうしたの。見付かったの奥さんは」?
「いいえ、旦那さんは警察に届けて地元の消防団にも頼んで三日も捜索したけど見付からなくてね。結局家出扱いにして帰りました。今年も旦那さん一人で来てくれたけど、連絡はないそうですよ」。
「そうなの、お気の毒にね」。
「紺野、奥さん。じゃあ此のお金お借ります。修理が始まったら是非一度見に来て欲しい」。
「ああ、行くよ。工務店の方は大丈夫かのか?・・・」。
「うん、信用のある工務店だし昔から付き合いのある所だから心配ないよ。それにしても凝った別荘にしたな。じゃあまた来るよ」。
こうして小山はアタッシュケースの六千万を持参したバックに移し替え、何度も頭を下げると帰って行った。
小山を見送ると出来上がったばかりのバーベキューハウスの椅子に掛けた。
「京平さん、あの人達の車は何処へ行ったの。それに自転車は碓氷峠の旧道で見付かったって、一体どう言う事だろうね?・・・」。
美保は眉間に皺を寄せて京平の顔を伺った。
「僕の思惑が当たったって事だよ。キーが着いたままだったろ、車は盗まれたんだ。それに乗り捨てられた自転車は誰かが乗って行って碓氷峠に捨てたんだろう。でも軽井沢はそんなに行方不明になる人達が多いとは知らなかった」。
「うん、でも私達にとっては好都合ね。あれから一週間だもの」。
「でも京都の方じゃ真田の預金を調べているだろう。それに白馬の銀行で降ろした事も分かっているだろうし、孰れ調べに来るさ。
ただ唯一奥さんが何も聞かされてないと言う事だろうな。まず疑われるのは奥さんだ。一億以上の現金を持ったまま行方不明だからね。もしかしたら今頃は事情聴取を受けているかも知れない」。
「じゃあ暫く見付からないわね」。
「それか、野犬や獣に食べられてもう無いかもな。いずれにしてもあの場所は警察は知らないと言う事だ。発見されるとすればキノコの時期だろう、あの辺りはキノコが多く出て人が入るからね」。
そしてテレビを見ているとワイドショウーのニュースが始まった。すると、軽井沢で行方不明になったとして真田茂の名前が流れた。
そして真田の知り合いの六人も行方が分からなくなっている事を話しているのだった。そして名前と写真を流した。
「京平さん、この人達よ。ねえ、この人達の名前だけどさ」。
「うん、電話で名乗って帰した男たちの名前だ。どう言う事だ・・・」。京平は黙って美保を見詰めていた。
「もしかしたら、あの時に名乗ったのは別の男だったんじゃないか。居た事は確かだ。その六人は名前を出したくない六人だった。その六人には一人一人ボディーガドがいて、その男の名前を名乗ったとしたら話が通じるだろ」。
「どう言う事?・・・じゃああの六人は白馬には居なかった。でも六人は居た。エ~ッ」。と顔を覗き込んだ。
「だから、軽井沢の男たちは別の仲間を呼んだんじゃなくて、白馬に向かっていた男達だ。電話の後行き先を軽井沢に変更したんだ。美保、いまここで適当な名前を即答で六人言えるか」。
「そんなの無理だよ。一人二人なら言える気け・・・そうか、分かった。あの時に居た六人は人に言えない人達。って事は知名度のある人って事」?
「うん、ああもすらすら六人の名前を言えるのは日頃会っているからだろ。あの場に居た六人は用心棒なのは確かだろう。何かきな臭いな。
僕等の知らない事を外にしていた可能性がある。外にも泣いてる女性がいるかも知れない」。
NO-50-15
「変て?・・どう変だったんだって?・・・」。
「うん、その運転手が言うには。その男は自転車に乗って来て乗り込むと真田って言ったらしいんだけどさ、白糸の滝へ行ってくれって言ったそうだ。
それで行くと、スピードを落とせとか普通に走れとか言って妙だったって。それで空き地に車を止めさせたりして峠の茶屋まで行くと引き返して、白糸ハイドランドウェイの途中にある空き地で降りたってさ。
それで、警察に知らせた方が良いって言ったんだけどさ。警察に言うと呼び出されて仕事にならないから黙っているんだって。
俺も聞いたら気になってさ、此々へ来る途中遠回りして有料道路を回ってさ、空き地を見て来たけど何も無かったよ。ラバーコーンが一つあったらしいけど何も無かった。それに自転車が碓氷峠の旧道で見付かったんなら安中か富岡の方へ行ったんだろう」。
「そんな行方不明なんて事はたまにあるのか」?
「ああ、毎年一シーズン中五人や六人は居なくなる。もう警察も慣れているよ。また家出だろって身を入れて探してなんかないよ。
先月も二件あったばかりだから。いままで見付かった試しがない。そのうち所持金がなくなれば家に帰るさ」。
「そう、そんなに家出みたいなのがあるのか。こっちは聞いた事ないけどな。登山で遭難なんて言うのはしょっちゅうだけどさ」。
「うん、大方は宿代の踏み倒しが多いんだけどさ。中には旦那をホテルに残したまま蒸発なんて言うのもあるし、その逆もある。観光地や避暑地では良くある事さ。俺の所でも去年あったよ。若い夫婦だけど、旦那を残して女房が蒸発して大騒ぎしたんだ」。
「それで小山さんどうしたの。見付かったの奥さんは」?
「いいえ、旦那さんは警察に届けて地元の消防団にも頼んで三日も捜索したけど見付からなくてね。結局家出扱いにして帰りました。今年も旦那さん一人で来てくれたけど、連絡はないそうですよ」。
「そうなの、お気の毒にね」。
「紺野、奥さん。じゃあ此のお金お借ります。修理が始まったら是非一度見に来て欲しい」。
「ああ、行くよ。工務店の方は大丈夫かのか?・・・」。
「うん、信用のある工務店だし昔から付き合いのある所だから心配ないよ。それにしても凝った別荘にしたな。じゃあまた来るよ」。
こうして小山はアタッシュケースの六千万を持参したバックに移し替え、何度も頭を下げると帰って行った。
小山を見送ると出来上がったばかりのバーベキューハウスの椅子に掛けた。
「京平さん、あの人達の車は何処へ行ったの。それに自転車は碓氷峠の旧道で見付かったって、一体どう言う事だろうね?・・・」。
美保は眉間に皺を寄せて京平の顔を伺った。
「僕の思惑が当たったって事だよ。キーが着いたままだったろ、車は盗まれたんだ。それに乗り捨てられた自転車は誰かが乗って行って碓氷峠に捨てたんだろう。でも軽井沢はそんなに行方不明になる人達が多いとは知らなかった」。
「うん、でも私達にとっては好都合ね。あれから一週間だもの」。
「でも京都の方じゃ真田の預金を調べているだろう。それに白馬の銀行で降ろした事も分かっているだろうし、孰れ調べに来るさ。
ただ唯一奥さんが何も聞かされてないと言う事だろうな。まず疑われるのは奥さんだ。一億以上の現金を持ったまま行方不明だからね。もしかしたら今頃は事情聴取を受けているかも知れない」。
「じゃあ暫く見付からないわね」。
「それか、野犬や獣に食べられてもう無いかもな。いずれにしてもあの場所は警察は知らないと言う事だ。発見されるとすればキノコの時期だろう、あの辺りはキノコが多く出て人が入るからね」。
そしてテレビを見ているとワイドショウーのニュースが始まった。すると、軽井沢で行方不明になったとして真田茂の名前が流れた。
そして真田の知り合いの六人も行方が分からなくなっている事を話しているのだった。そして名前と写真を流した。
「京平さん、この人達よ。ねえ、この人達の名前だけどさ」。
「うん、電話で名乗って帰した男たちの名前だ。どう言う事だ・・・」。京平は黙って美保を見詰めていた。
「もしかしたら、あの時に名乗ったのは別の男だったんじゃないか。居た事は確かだ。その六人は名前を出したくない六人だった。その六人には一人一人ボディーガドがいて、その男の名前を名乗ったとしたら話が通じるだろ」。
「どう言う事?・・・じゃああの六人は白馬には居なかった。でも六人は居た。エ~ッ」。と顔を覗き込んだ。
「だから、軽井沢の男たちは別の仲間を呼んだんじゃなくて、白馬に向かっていた男達だ。電話の後行き先を軽井沢に変更したんだ。美保、いまここで適当な名前を即答で六人言えるか」。
「そんなの無理だよ。一人二人なら言える気け・・・そうか、分かった。あの時に居た六人は人に言えない人達。って事は知名度のある人って事」?
「うん、ああもすらすら六人の名前を言えるのは日頃会っているからだろ。あの場に居た六人は用心棒なのは確かだろう。何かきな臭いな。
僕等の知らない事を外にしていた可能性がある。外にも泣いてる女性がいるかも知れない」。
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