小説・鉄槌のスナイパー・二章・NOー(54)&CG
「ともかく凶器も足跡も痕跡が何もありませんのでね。正直言ってお手上げのようですな。紺野さん達にお聞きすれば何か手掛かりが見付かるんじゃないかって、祈る気持ちで伺ったんですが、どうやら空振りだったようです。
しかし、何処でどう繋っているのか分かりません」。
「祈る気持ちですか、僕等にとっては凄い迷惑ですが」。
「そうですね、今から真田夫婦が泊まっていたと言うみそら野のペンション・マリブですか、そこへ伺うんですがご存じですか?・・・」。
「ええ、知っていますよ。観光組み合いの寄り合いでも一緒になりますからね。案内しましょうか。今なら手が空いていますから」。
「それは助かります、是非お願いします。えっと、そう言えば小山さんに多額のお金を用立てたとか」?
三河警部は流石だと京平は心の隅で感じていた。
「はい、僕は美保の持参金まで借りて全財産です。小山には学生の頃、山で命を助けられましてね。その恩返しです。
小山にはもう会ったでしょう。彼の腕の傷は僕を助けてくれた時に付けた傷なんです。だから彼が困っているのを見過ごす事が出来なかっただけですよ。刑事さんは僕が真田茂さん達を殺してお金を奪ったとでも?・・・」。
「ほう、良く知っていますね。真田さんがお金をもっていた事を。マスコミにはまだ発表されていませんよ」。
「からかわないで下さい、この辺りのペンションの経営者なら殆ど知っていますよ。それに、銀行の窓口の望月は自分と同級生なんです。そう言う噂は直ぐに広がります。
それに、僕があの七人をどうやって殺す事ができるんですか。それに見ず知らずの人を殺す理由がないです」。
「そうですな、でも紺野さんは大学では国体に出るほどライフルの腕が良いとお聞きしましたよ」。
「それほどでもありません。あの七人は撃たれて殺されたんですか」?
すると三河警部は声を詰まらせた。京平は尚も食い下がった。
「では誰か銃声でも聞いたんですか。もし僕が犯人だったとして。ライフルでどうやって七人を一度に殺せるんです。機関銃でもなければ不可能でしょう、一度に七人を殺すには」。
「機関銃ですか、無理ですな」。
「おい、さっきから聞いてれば言いたい放題の事を言いやがって、そこのへっぽこ刑事、息子の退職金や嫁の持参金を貸して何処が悪いんだ。
黙って聞いてれば息子が殺したような口ぶりに聞こえるが、名誉毀損で訴えても良いんだぞ。
猟銃は私が管理してるんだ。あそこにある猟銃の鍵は銀行の貸金庫に入れてあって、11月の解禁前に鍵をもって来るが、それまでは誰も持ち出せないんだ。いいかげんにせんか」。
父良平は凄いけんまくで怒り出した、京平も初めて見る父の姿だった、そして母良江も怒っていた。
「済みません、刑事の嫌な所ですな。この通りお詫びします」。三河警部は立ち上がると頭を低く下げて詫びた。
「紺野さん気を悪くさせたらお詫びします」。
「何を言われても平気です。警察は相当困っているんですね。こんな所まで管轄外の警察が来て調べるんですから、それに免じて許してあげますよ。ではマリブへ案内します」。
京兵は両親に声を掛けると美保を連れてBMWで出た。
その後を刑事の覆面が着いて来た。二十分程でペンション・マリブに着くと、オーナーに事情を話をすると京兵たちは引き返した。そんな車の中、
「刑事って嫌ね、あてずっぽうでものを言うんたから。でもあの刑事は中々素直ね」。
「うん、何を聞かれても僕等にミスはないから平気だよ。でもさ、一つ気になるのは殺し屋はあの三人だけだったんだろうか、仲間や指令を出してる人間はいないのか」。
「うん、映画じゃ元締めみたいなのがいるけど、あれは映画だから。ゴルゴ13みたいに自分で受けていたんじゃないのかな」。
「アッハハハゴルゴ13は良かったな。もし元締めみたいなのがいたらさ、無くなったライフルや銃の事が気になっているだろうな」。
「うん。京平さん、話しは変わるけど、あの医者たちはどうするの。いまは動けないとしても貴明もやきもきしてるんじゃない」。
「そんな事ないさ、忙しいと思うよ。毎日のように警察が来て父親の身辺を調べているだろうから。下手に動けばそれこそ墓穴を掘る事になるからね。でも、僕等に動かれるよりその方が良いかもな」。
「本当ね、散々絞り取られて最後には始末されてしまうんだから。でも被害を受けていた女性はほっとしているだろうね。それよりマリブのオーナーに何話していたの」?
「うん、犯人だと思われて質問されるから余計な事は言わない方が良いって忠告しといた。笑っていたけどね」。
こうして警察の捜査はなんら進展もなく、時は流れていた。九月も押し迫って来ると白馬は朝夕の冷え込みが次第に多くなっていた。そして遠く白馬の山々や穂高連邦の峰々には赤や黄色の紅葉が目立ち初めていた。
そしてテレビのニュースからも軽井沢の事件のニュースが次第に流れなくなった。京平は一月振りに真田貴明に電話を入れた。
「そうか、それでお前は何をしている」?
「はい、父の病院の経理をしています。母は医者に戻って院長をして今は徐々に患者さんも来てくれるようになりました」。
「そうか。じゃあこっちは始動するぞ。例のディスクは処分しただろうな」。
「はい、言われるように処分しました。処分しておいて良かったです。あの翌日警察が来て病院と父の書斎から金庫まで全部調べられましたから。後はお任せします。
それから、御礼の事ですが。幾らでも請求して下さい。貴方のお陰で僕も母も父から自由になれたんですから」。
「分かった、もう少し熱りが冷めたら請求する。それまで頑張って仕事しろ。でも間違った事をしたら父親の二の舞えだぞ」。
「分かっています。僕はそんな事はしません」。
「よし、じゃあまた連絡する。母親を大事にしろ」。
そして十月に入った四日の日曜、京平達は久し振りに休みを貰った。
そして別荘にスーパーの袋を下げて向かった。そして途中の公衆電話の前で車を止めた。
そして六人の内の一人に電話を掛けた。すると日曜だと言うのに看護婦が出た。
「はい、宮田美容整形外科です」
「院長の宮田先生をお願いします」。
「院長はいま診察中ですのでお出になられません」
「いいから真田の事だ。そう伝えろ」。声を怒らせると看護師は怒ったのか、黙ったまま保留のオルゴールに切り替わった。
NO-54-26
「ともかく凶器も足跡も痕跡が何もありませんのでね。正直言ってお手上げのようですな。紺野さん達にお聞きすれば何か手掛かりが見付かるんじゃないかって、祈る気持ちで伺ったんですが、どうやら空振りだったようです。
しかし、何処でどう繋っているのか分かりません」。
「祈る気持ちですか、僕等にとっては凄い迷惑ですが」。
「そうですね、今から真田夫婦が泊まっていたと言うみそら野のペンション・マリブですか、そこへ伺うんですがご存じですか?・・・」。
「ええ、知っていますよ。観光組み合いの寄り合いでも一緒になりますからね。案内しましょうか。今なら手が空いていますから」。
「それは助かります、是非お願いします。えっと、そう言えば小山さんに多額のお金を用立てたとか」?
三河警部は流石だと京平は心の隅で感じていた。
「はい、僕は美保の持参金まで借りて全財産です。小山には学生の頃、山で命を助けられましてね。その恩返しです。
小山にはもう会ったでしょう。彼の腕の傷は僕を助けてくれた時に付けた傷なんです。だから彼が困っているのを見過ごす事が出来なかっただけですよ。刑事さんは僕が真田茂さん達を殺してお金を奪ったとでも?・・・」。
「ほう、良く知っていますね。真田さんがお金をもっていた事を。マスコミにはまだ発表されていませんよ」。
「からかわないで下さい、この辺りのペンションの経営者なら殆ど知っていますよ。それに、銀行の窓口の望月は自分と同級生なんです。そう言う噂は直ぐに広がります。
それに、僕があの七人をどうやって殺す事ができるんですか。それに見ず知らずの人を殺す理由がないです」。
「そうですな、でも紺野さんは大学では国体に出るほどライフルの腕が良いとお聞きしましたよ」。
「それほどでもありません。あの七人は撃たれて殺されたんですか」?
すると三河警部は声を詰まらせた。京平は尚も食い下がった。
「では誰か銃声でも聞いたんですか。もし僕が犯人だったとして。ライフルでどうやって七人を一度に殺せるんです。機関銃でもなければ不可能でしょう、一度に七人を殺すには」。
「機関銃ですか、無理ですな」。
「おい、さっきから聞いてれば言いたい放題の事を言いやがって、そこのへっぽこ刑事、息子の退職金や嫁の持参金を貸して何処が悪いんだ。
黙って聞いてれば息子が殺したような口ぶりに聞こえるが、名誉毀損で訴えても良いんだぞ。
猟銃は私が管理してるんだ。あそこにある猟銃の鍵は銀行の貸金庫に入れてあって、11月の解禁前に鍵をもって来るが、それまでは誰も持ち出せないんだ。いいかげんにせんか」。
父良平は凄いけんまくで怒り出した、京平も初めて見る父の姿だった、そして母良江も怒っていた。
「済みません、刑事の嫌な所ですな。この通りお詫びします」。三河警部は立ち上がると頭を低く下げて詫びた。
「紺野さん気を悪くさせたらお詫びします」。
「何を言われても平気です。警察は相当困っているんですね。こんな所まで管轄外の警察が来て調べるんですから、それに免じて許してあげますよ。ではマリブへ案内します」。
京兵は両親に声を掛けると美保を連れてBMWで出た。
その後を刑事の覆面が着いて来た。二十分程でペンション・マリブに着くと、オーナーに事情を話をすると京兵たちは引き返した。そんな車の中、
「刑事って嫌ね、あてずっぽうでものを言うんたから。でもあの刑事は中々素直ね」。
「うん、何を聞かれても僕等にミスはないから平気だよ。でもさ、一つ気になるのは殺し屋はあの三人だけだったんだろうか、仲間や指令を出してる人間はいないのか」。
「うん、映画じゃ元締めみたいなのがいるけど、あれは映画だから。ゴルゴ13みたいに自分で受けていたんじゃないのかな」。
「アッハハハゴルゴ13は良かったな。もし元締めみたいなのがいたらさ、無くなったライフルや銃の事が気になっているだろうな」。
「うん。京平さん、話しは変わるけど、あの医者たちはどうするの。いまは動けないとしても貴明もやきもきしてるんじゃない」。
「そんな事ないさ、忙しいと思うよ。毎日のように警察が来て父親の身辺を調べているだろうから。下手に動けばそれこそ墓穴を掘る事になるからね。でも、僕等に動かれるよりその方が良いかもな」。
「本当ね、散々絞り取られて最後には始末されてしまうんだから。でも被害を受けていた女性はほっとしているだろうね。それよりマリブのオーナーに何話していたの」?
「うん、犯人だと思われて質問されるから余計な事は言わない方が良いって忠告しといた。笑っていたけどね」。
こうして警察の捜査はなんら進展もなく、時は流れていた。九月も押し迫って来ると白馬は朝夕の冷え込みが次第に多くなっていた。そして遠く白馬の山々や穂高連邦の峰々には赤や黄色の紅葉が目立ち初めていた。
そしてテレビのニュースからも軽井沢の事件のニュースが次第に流れなくなった。京平は一月振りに真田貴明に電話を入れた。
「そうか、それでお前は何をしている」?
「はい、父の病院の経理をしています。母は医者に戻って院長をして今は徐々に患者さんも来てくれるようになりました」。
「そうか。じゃあこっちは始動するぞ。例のディスクは処分しただろうな」。
「はい、言われるように処分しました。処分しておいて良かったです。あの翌日警察が来て病院と父の書斎から金庫まで全部調べられましたから。後はお任せします。
それから、御礼の事ですが。幾らでも請求して下さい。貴方のお陰で僕も母も父から自由になれたんですから」。
「分かった、もう少し熱りが冷めたら請求する。それまで頑張って仕事しろ。でも間違った事をしたら父親の二の舞えだぞ」。
「分かっています。僕はそんな事はしません」。
「よし、じゃあまた連絡する。母親を大事にしろ」。
そして十月に入った四日の日曜、京平達は久し振りに休みを貰った。
そして別荘にスーパーの袋を下げて向かった。そして途中の公衆電話の前で車を止めた。
そして六人の内の一人に電話を掛けた。すると日曜だと言うのに看護婦が出た。
「はい、宮田美容整形外科です」
「院長の宮田先生をお願いします」。
「院長はいま診察中ですのでお出になられません」
「いいから真田の事だ。そう伝えろ」。声を怒らせると看護師は怒ったのか、黙ったまま保留のオルゴールに切り替わった。
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