小説・鉄槌のスナイパー・二章・NOー(56)&CG
「皆んな、大変な事になった。私達のして来た事を或組織に知られてしまった。端的に言うと、今まで威し取った金を全額女性たちに返済しろと言う事だ。もし、他言したり身を守る手立てを講じた場合は真田とあの六人と同じ目に会うと言う事だった」。
すると五人の目付きが一斉に変わった。お互いに目を伺い、疑心暗鬼になっていた。
「宮田、それでお前はなんて答えたんだ」。
京都から飛んで来た佐野産婦人科の佐野良晴は宮田の顔を覗き込むように見るとドサッと椅子にもたれた。
「決まっているだろ、言う事を効かない訳にはゆかないよ、私はもう半数の女の口座に振り込んだ。誰だか知らないが、何処の女から何月何日幾ら受け取ったのか詳細に調べ上げていた。
それも、威した内容まで事細かく知っていた。それにこのホテルで六月に死なせてしまった女子大生の事まで知っていた」。
「それは真田を殺した奴に間違いないんだな」?
同じ横浜で開業している産婦人科の前田貞夫は縁のない眼鏡の下から鋭い視線を宮田に浴びせた。
「間違いない、真田が白馬に私達を呼び付けた事も知っていた。それに、用心棒の名前を言って帰った事も知っていた。
その二つの裏切りの為に真田は殺されたんだ。そう言っていたよ。彼等の言う通りにすれば約束は守るとも言っていた。
真田は色々と策を練り過ぎたからな。だから見ろ、息子や奥さんには手を出してないじゃないか。女達に金を返してもう止めようじゃないか」。
「宮田、お前怖じけづいたのか。俺は戦うぞ、せっかく命掛けで悪行とは知りながら手を染めてここまでやって金を溜めたんだ。総合病院を建設する目標はどうする。
嫌だと断った私をだ、貴様等が強引に私を仲間に引き入れたんだぞ。警察に捕まるのも、その組織と戦うのも同じだろ」。
東京で開業している美容整形外科の吉原信次は目くじらを立て、椅子を蹴飛ばした。そして腕を組むとそわそわ会議室を歩き回っていたのだった。
「おい、吉原。お前一人が逆らえば我々全員、いや、家族まで殺されるぞ。
お前それでも良いのか。金さえ返せば後は知れている。あの電話をして来たのは組織のボスだと言っていた。話しの内容からも信用出来る人物だと私は見た。
そのリーダーは正直に組織を運営して行くには大金がかかるとも言っていた。だから経費を払って見逃して貰おうじゃないか」。
「宮田、お前はその組織の回しものじゃないのか」?
「おい、止さないか。吉原それは言い過ぎだぞ。仲間割れしてどうするんだ。ドケチで傲慢な宮田がそう言っているんだ。宮田は銀行から金を降ろしてもう返しているんだぞ」。
「新田、有り難う。その事はいい、それより余計な事はしないで返そう。それが我々の身と家族を守る事になるんだからな」。
「俺は戦うぞ、田口、佐野、前田、新田、おまえ達はどうする。宮田の意見に賛成なのか。奴等は金が目的なんだ。俺達を殺したら金にはならないんだぞ。奴等に我々を殺せる筈がないさ」。
「吉原、こうも言っていた。もし人を雇った事が分かった時は商談は解消。リストは警察に送るって。あれは嘘や冗談じゃなかったよ。お前の勝手な行動で私達は終わりたくない。どうだ皆んな」。
すると、反対する吉原を全員が睨みつけた。その鋭く光る眼光には殺意にも似た冷たく見下すような目だった。
吉原信次は一瞬後ずさりしながら椅子の背を持って座った。
「分かったよ、返せば良いんだろ。総合病院を諦めればいいんだな、クソ~ッ、でも真田は何処の誰に目を付けられたんだ」?
「きっと息子の彼女を殺した事で組織に睨まれたんだろう。真田は一年半前にも息子の付き合っていた女を凍死させているんだ」。
「おい宮田、それは本当か?・・・皆んなも知っていたのか!・・それで、その事を息子は知っているのか」。
「いや、知らないだろう。女は息子に振られた事を苦に自殺って事でけりが着いているからな。真田と言う男は残忍な男だったからな」。
「そうか、じゃあ真田は殺されても当然だな。墓穴を掘ったのさ。しかしだ、真田はその皆んなのリストを組織に渡したって事か?・・・
いや、警察の家宅捜査では何も出なかった筈だ。もし出てれば私達はこうして居られないからな。それか息子か?・・・」。
「それはないな、そんな事したら残された病院も閉める嵌めになる。真田が渡したとしか考えられない。それか、その組織独自で調べあげたか。いまとなってはもうどうでも良い事だ。私達六人は訳の分からない組織に目を付けられたって事だけは確かなんだからな」。
「それで、組織の条件は?・・・」。
「さっき話したろ、ともかく二日と半日。七日の昼迄に金を全額返済しろと言う事だ。遅れた場合はその時点で商談は打ち切り、リストは警察に届くそうだ。だから金が目当てではないと言う事だ。一番始末悪いぞ。金は要らないと言うんだからな」。
「エ~ッ二日半かっ・・・」
すると宮田の携帯が突然鳴り出した。全員驚いてを身を反らした。
「はい、宮田です」。
「俺だ、どうかね。皆さんお集まりのようだが。話し合いは捗っているかな」。
「は、はい。いま全員揃って話を進めている所です」。
宮田は携帯に指を指し、組織から電話だとメモに書いた。残りの五人は宮田の廻りにそっと足音を忍ばせて集まった。
「そんな事は分かっている。班長さんは早速返金している様だな、結構な事だ。皆んな聴いているか」。
「はい、その通りです」。
「よし、呼んだら返事をして二度とこのような事はしませんと誓え。田口 」
「はい、二度と女性を騙して金を脅し取るような事はしません」。
佐野っ!
「はい、田口医師と同様二度とこのような事はしませんから許して下さい」。
吉原っ!
「はい、佐野医師同様二度とーこのような事はしません、許して下さい」。
新田っ!
「はい、吉原医師同様二度とこのような事はしませんから許して下さい」。
前田っ!
「はい。新田医師同様二度とこのような事はしませんから許して下さい」。
宮田っ!
「はい、前田医師同様二度とこのような事は絶対にしません、許して下さい」
「よし、お前達六人は誓約書にサインしたと同じ事になった。では会合は終わりにして早く帰って返済の準備を進めろ。
宮田から聞いての通り、ただ今から二日。十月七日午後十三時までに返済しろ。一人でも遅れた場合は商談は不成立になり、リストは警察に届く。残念ながら我々の組織への献金は諦める。しかし、外にも献金をさせて欲しいと言う奴等は大勢いるからね。では二日後に声を聞かせて頂く」。と切れた。
「おい、なんて奴だ。こんな若造に嘗められて良いのか」。
「吉原、お前死にたいのか。もしお前が逆らうと言うなら私がお前を殺すぞ。お前一人のせいで私達は死にたくないからな。家族も守りたい。それでも逆らうか」。
宮田のその言葉に外の四人の医師たちは椅子から立ち上がった。そして吉原信次を取り囲んだ。
「分かった、約束する。言われた通りにするよ。私達の完敗だな」。そして医師達はホテルを出ると個々に帰って行った。
その頃、美保と京平の二人は長野市に向かっていた。
NO-56-32
「皆んな、大変な事になった。私達のして来た事を或組織に知られてしまった。端的に言うと、今まで威し取った金を全額女性たちに返済しろと言う事だ。もし、他言したり身を守る手立てを講じた場合は真田とあの六人と同じ目に会うと言う事だった」。
すると五人の目付きが一斉に変わった。お互いに目を伺い、疑心暗鬼になっていた。
「宮田、それでお前はなんて答えたんだ」。
京都から飛んで来た佐野産婦人科の佐野良晴は宮田の顔を覗き込むように見るとドサッと椅子にもたれた。
「決まっているだろ、言う事を効かない訳にはゆかないよ、私はもう半数の女の口座に振り込んだ。誰だか知らないが、何処の女から何月何日幾ら受け取ったのか詳細に調べ上げていた。
それも、威した内容まで事細かく知っていた。それにこのホテルで六月に死なせてしまった女子大生の事まで知っていた」。
「それは真田を殺した奴に間違いないんだな」?
同じ横浜で開業している産婦人科の前田貞夫は縁のない眼鏡の下から鋭い視線を宮田に浴びせた。
「間違いない、真田が白馬に私達を呼び付けた事も知っていた。それに、用心棒の名前を言って帰った事も知っていた。
その二つの裏切りの為に真田は殺されたんだ。そう言っていたよ。彼等の言う通りにすれば約束は守るとも言っていた。
真田は色々と策を練り過ぎたからな。だから見ろ、息子や奥さんには手を出してないじゃないか。女達に金を返してもう止めようじゃないか」。
「宮田、お前怖じけづいたのか。俺は戦うぞ、せっかく命掛けで悪行とは知りながら手を染めてここまでやって金を溜めたんだ。総合病院を建設する目標はどうする。
嫌だと断った私をだ、貴様等が強引に私を仲間に引き入れたんだぞ。警察に捕まるのも、その組織と戦うのも同じだろ」。
東京で開業している美容整形外科の吉原信次は目くじらを立て、椅子を蹴飛ばした。そして腕を組むとそわそわ会議室を歩き回っていたのだった。
「おい、吉原。お前一人が逆らえば我々全員、いや、家族まで殺されるぞ。
お前それでも良いのか。金さえ返せば後は知れている。あの電話をして来たのは組織のボスだと言っていた。話しの内容からも信用出来る人物だと私は見た。
そのリーダーは正直に組織を運営して行くには大金がかかるとも言っていた。だから経費を払って見逃して貰おうじゃないか」。
「宮田、お前はその組織の回しものじゃないのか」?
「おい、止さないか。吉原それは言い過ぎだぞ。仲間割れしてどうするんだ。ドケチで傲慢な宮田がそう言っているんだ。宮田は銀行から金を降ろしてもう返しているんだぞ」。
「新田、有り難う。その事はいい、それより余計な事はしないで返そう。それが我々の身と家族を守る事になるんだからな」。
「俺は戦うぞ、田口、佐野、前田、新田、おまえ達はどうする。宮田の意見に賛成なのか。奴等は金が目的なんだ。俺達を殺したら金にはならないんだぞ。奴等に我々を殺せる筈がないさ」。
「吉原、こうも言っていた。もし人を雇った事が分かった時は商談は解消。リストは警察に送るって。あれは嘘や冗談じゃなかったよ。お前の勝手な行動で私達は終わりたくない。どうだ皆んな」。
すると、反対する吉原を全員が睨みつけた。その鋭く光る眼光には殺意にも似た冷たく見下すような目だった。
吉原信次は一瞬後ずさりしながら椅子の背を持って座った。
「分かったよ、返せば良いんだろ。総合病院を諦めればいいんだな、クソ~ッ、でも真田は何処の誰に目を付けられたんだ」?
「きっと息子の彼女を殺した事で組織に睨まれたんだろう。真田は一年半前にも息子の付き合っていた女を凍死させているんだ」。
「おい宮田、それは本当か?・・・皆んなも知っていたのか!・・それで、その事を息子は知っているのか」。
「いや、知らないだろう。女は息子に振られた事を苦に自殺って事でけりが着いているからな。真田と言う男は残忍な男だったからな」。
「そうか、じゃあ真田は殺されても当然だな。墓穴を掘ったのさ。しかしだ、真田はその皆んなのリストを組織に渡したって事か?・・・
いや、警察の家宅捜査では何も出なかった筈だ。もし出てれば私達はこうして居られないからな。それか息子か?・・・」。
「それはないな、そんな事したら残された病院も閉める嵌めになる。真田が渡したとしか考えられない。それか、その組織独自で調べあげたか。いまとなってはもうどうでも良い事だ。私達六人は訳の分からない組織に目を付けられたって事だけは確かなんだからな」。
「それで、組織の条件は?・・・」。
「さっき話したろ、ともかく二日と半日。七日の昼迄に金を全額返済しろと言う事だ。遅れた場合はその時点で商談は打ち切り、リストは警察に届くそうだ。だから金が目当てではないと言う事だ。一番始末悪いぞ。金は要らないと言うんだからな」。
「エ~ッ二日半かっ・・・」
すると宮田の携帯が突然鳴り出した。全員驚いてを身を反らした。
「はい、宮田です」。
「俺だ、どうかね。皆さんお集まりのようだが。話し合いは捗っているかな」。
「は、はい。いま全員揃って話を進めている所です」。
宮田は携帯に指を指し、組織から電話だとメモに書いた。残りの五人は宮田の廻りにそっと足音を忍ばせて集まった。
「そんな事は分かっている。班長さんは早速返金している様だな、結構な事だ。皆んな聴いているか」。
「はい、その通りです」。
「よし、呼んだら返事をして二度とこのような事はしませんと誓え。田口 」
「はい、二度と女性を騙して金を脅し取るような事はしません」。
佐野っ!
「はい、田口医師と同様二度とこのような事はしませんから許して下さい」。
吉原っ!
「はい、佐野医師同様二度とーこのような事はしません、許して下さい」。
新田っ!
「はい、吉原医師同様二度とこのような事はしませんから許して下さい」。
前田っ!
「はい。新田医師同様二度とこのような事はしませんから許して下さい」。
宮田っ!
「はい、前田医師同様二度とこのような事は絶対にしません、許して下さい」
「よし、お前達六人は誓約書にサインしたと同じ事になった。では会合は終わりにして早く帰って返済の準備を進めろ。
宮田から聞いての通り、ただ今から二日。十月七日午後十三時までに返済しろ。一人でも遅れた場合は商談は不成立になり、リストは警察に届く。残念ながら我々の組織への献金は諦める。しかし、外にも献金をさせて欲しいと言う奴等は大勢いるからね。では二日後に声を聞かせて頂く」。と切れた。
「おい、なんて奴だ。こんな若造に嘗められて良いのか」。
「吉原、お前死にたいのか。もしお前が逆らうと言うなら私がお前を殺すぞ。お前一人のせいで私達は死にたくないからな。家族も守りたい。それでも逆らうか」。
宮田のその言葉に外の四人の医師たちは椅子から立ち上がった。そして吉原信次を取り囲んだ。
「分かった、約束する。言われた通りにするよ。私達の完敗だな」。そして医師達はホテルを出ると個々に帰って行った。
その頃、美保と京平の二人は長野市に向かっていた。
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