国立精神・神経医療研究センターが今年の2月に実施し、6月25日に発表した新型コロナウイルスワクチンに関するインターネット調査結果によると、ワクチンを「接種したくない」と回答した人は全体の1割強(11.3%)の割合だったということです。
この割合が多いのか少ないのかは意見の分かれるところでしょうが、私の周囲でも「打つつもりはない」との声を結構聴くので、私自身、少なくともこの程度は(「そんなもの打ちたくない」という人が)いるような気がしています。
調査によれば、ワクチンを打ちたくない理由の第一位は「副作用への懸念」で全体の7割を占め、特に若い女性でワクチン接種をためらう傾向が強かったということです。
また、ワクチン接種をしたくないその他の理由としては、約2割が「効果があるとは思わない」を挙げたほか、「ワクチンを打ちに行く時間がない」「自分は感染しないと思う」がそれぞれ8%程度とされています。
一方、「接種したくない」と答えた人の割合を性別・年代別で見ると、15~39歳の女性が15.6%で最も高く、65~79歳の女性(7.7%)の約2倍。実は15~39歳の男性も14.2%と高い割合を示しており、特に若年層でワクチンを嫌う状況が数字にもはっきりと表れています。
そういえば、SNSなどに「ファイザーの極秘資料」などとして書き込まれた「ワクチンが卵巣に高濃度に蓄積する」「不妊になる可能性が懸念される」などの情報が拡散し、未婚の女性などに不安を与えているといった話をよく聞きます。
もちろん実際には、mRNAワクチンによる妊娠や遺伝子への影響は確認されておらず、「極秘資料」などというのも、話に信憑性を持たせるための(子供騙しのような)フェイクに過ぎません。
(何が面白いのかはわかりませんが)これなどは、心身に対しデリケートな感情を持つ未婚の女性などをターゲットとした、まさに悪意に満ちた意識操作と言えるでしょう。
ワクチン接種による集団免疫獲得の重要性やワクチン自体の安全性などについては、政府広報やメディアなどでも広く伝えられていると感じていましたが、知識の普及はまだまだ不足しているということなのでしょう。
同調査を主導した国立精神・神経医療研究センターの大久保亮臨床研究計画・解析室長は日本経済新聞のインタビューに応え、「副作用に関する根拠に基づかない情報も広がっており、国は正確な情報発信に一段と務めるべき」と話しています(6月27日「ワクチン1割が接種敬遠」)。また、「ワクチン接種が周囲の人をもまることにもつながるというポジティブなメッセージも欠かせない」と指摘しているということです。
それにしても、どうして若い世代ほどワクチン接種に消極的なのかは、多少、気になるところです。彼らがワクチンを嫌うのは、本当にワクチンに関する情報が(その他の世代よりも)足りていないからなのか。
想定される原因をいくつか考えてみると、例えば、
① ニュースやワイドショーなどを見ないので情報に接する機会が少ないから
② 若い自分は大丈夫。必要がないと思っているから
③ 若い世代ほど自分でリスクを背負いたくないと考え、副反応のリスクにも敏感だから
④ 若い世代ほど社会に不信感を持っており、政府や権力を信用していないから
などが浮かんできます。
どれか一つに限定する必要もないのでしょうが、②や④に代表されるような理由であれば、彼らが社会全体の一員であることを自覚し社会のために行動できるようにならなければ、接種辺への意識は(どれだけ知識・情報を得ても)あまり変わらないのかもしれません。
一方、調査報告書は、この調査によって得られた知見のひとつとして、
(1) 一人暮らしの人
(2) 所得水準が低い人
(3) 最終学歴が低い人
(4) 政府のコロナ政策に不信感がある人
(5) 重度の気分の落ち込みがある人
では、ワクチン忌避者の割合が高かったことを挙げています。そして、(ワクチンの接種率を上げていくには)特に、こうした特徴を持つ人に対しワクチンへの信頼性を高めるような重点的な支援が必要であると指摘しています。
例えば、ワクチンに対する信頼性が、新型コロナウイルスに対する不適切な情報(副反応に関するデマなど)によって損なわれていることについての情報提供や、ワクチンを打つことが地域や社会の健康と回復につながるというワクチン接種へのポジティブな感情を引き起こすようなメッセージを増やすなど。
将来に不安を抱える人たちが、安心して新型コロナに向き合える社会に向き合えるような環境づくりが求められているということでしょう。
新型コロナ感染症対策のゲームチェンジャーと目されるワクチン接種ですが、打つも打たないも(結局のところ)ひとりひとりの気持ちの持ちようの問題です。
様々な理由でネガティブになりがちな人々、世の中に不満を持っている人々の将来に向けた前向きな気持ちを促すことが、ワクチン接種の拡大やスピードアップに繋がることを示唆する今回の調査結果を、私も大変興味深く受け止めたところです。
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