MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2419 消齢化社会へようこそ

2023年06月04日 | 社会・経済

 5月1日の「Record China」が、4月27日の『環球時報』(←中国「人民日報」傘下のタブロイド紙)が「日本が徐々に『消齢化』社会に向かっている…」とする記事を掲載したと伝えています。

 「消齢化」とはこの日本ではあまり耳にしない言葉ですが、漢字だけ読んでも何となく意味は分かります。「消齢」と言うくらいですから、「人々が年齢に関係なく生きているエイジレスな社会」とか「年齢という区分け自体が意味をなさない社会」とかいった(ような)感じでしょうか。

 『環球時報』は、昨年12月に公開された漫画「スラムダンク」の劇場版アニメ「THE FIRST SLAM DUNK」の興行収入が日本で100億円を突破する大ヒット作になっていることを紹介。映画の製作者はターゲットを30〜40代と想定していたものの、実際のファンは10〜50代と幅広いことが分かったとし「日本は徐々に『消齢化社会』になりつつある」と伝えたとされています。

 記事は「消齢化」を、「年齢層による価値観、消費傾向の差が小さくなる社会の動き」と説明。日本の企業はこれまでマーケティングの際に年齢別でターゲットを絞ってきたものの、個性や多様性がより尊重される現代の世の中において世代別の差が徐々に狭まってきており、年齢でターゲットを定めるマーケティング手法を取り続けることが難しくなっていると指摘しているようです。

 「なるほど、言われてみれば…」という気もしますが、そもそもこの「消齢化」とは、博報堂生活総合研究所が今年4月に発表した「日本人の意識・行動調査」の報告書を元ネタにしたもの。日本人の意識・行動について30年かけて実施した調査結果を改めて分析した結果、日常的な感情、生活行動、消費に対する姿勢、社会観念など366の質問項目のうち、30年間で世代別の回答の差が縮まった項目が70項目に達した一方で、広がった項目はわずか7項目に留まったとされています。

 かつて、世代や年齢によって大きかった価値観や嗜好の違いが、近年では年々小さくなっている。実際の年齢よりも、心や体の状態から算出した「実質年齢」が生活行動や嗜好に大きな影響を与えるようになっており、今後の社会政策やマーケットプランを考える際には、この「実質年齢」にそった切り口が必要になる可能性が高いと(当該)報告書は指摘しています。

 また、同報告書はこうした分析結果から

①今後は世代間の対立構図が崩れることで、社会全体が対立型から対話型になり、人々は容易に相互理解をしたり、違いを認め合うことができるようになるのではないか。

②若年層と高齢層が接近する「ミドル層」の意識や価値観が、ベンチマークとしての重みを増してくるのではないか。

③男女の「ジェンダーレス化」に代表されるように、年齢や性別のような依存の差異はあまり意味を持たなくなるのではないか。

…など、大きな社会変化の予想も行っているところです。

 一方、(大きな話はこの辺にしても)身近な「年齢レス」「age less」動きが様々な場面で広がっているとの指摘もあるようです。

 カラオケ業界最多となる33万曲以上の楽曲数を誇る業務用通信カラオケ「JOYSOUND」を展開する株式会社エクシングによると、以前は大きかった年齢層によるカラオケ曲の選択の違いが、近年では年々小さくなっているということです。

 例えば202年に全年齢層で歌われてきたのは、AKB48の「ヘビーローテーション」と、高橋洋子「残酷な天使のテーゼ」などの4曲に過ぎなかった。しかし、その数は2016年頃から急速に増え始め、2022年は、優里の「ドライフラワー」やAimerの「残響散歌」をはじめとした20曲へと、10年間で5倍に増加したとされています。

 因みに、若い世代が唄う「過去の曲」としては、レミオロメンの「粉雪」など10年以上前にリリースされた曲が挙げられています。また、スピッツ「チェリー」など、60代におけるランキングが年々上昇している曲などもあるということです。

 さて、カラオケ曲はともかくとして、「個の時代」「多様性を尊重する社会」…様々な言われ方をされているように、(この日本では)価値観や嗜好の多様化によって生活者を「まとまり」として捉えることが難しくなっているのはおそらく事実でしょう。

 ましてや、男女を問わずいつまでも引退できず働き続けることを余儀なくされる現代日本のこと。死ぬまで「現役」でいることを迫られ、個性的にサバイバルしていくことが(ひとりひとりに)求められているということなのかもしれません。

 他方、「もう年だから…」「女性だから…」「子どもがいるから…」といった外的要因で人の意識や行動が縛られる時代が終焉を迎えつつあることに、(また別な視点から)希望の光を見ているのは私だけではないでしょう。

 社会の評価や外的な抑圧に合わせることなく、年齢に関係なく自分らしく生きられるというのは(それはそれで)暮らしやすい社会なのではないかと、記事を読んで改めて感じているところです。

 



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