国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、世帯当りの人数は2020年の平均2.21人から減り続け、9年後の2033年に1.99人と2人を下回り、2050年には1.92人にまで減少するとされています。また、(これに伴い)全世帯に占める1人暮らし世帯の割合も2020年の38%から増加を続け、2050年には44.3%と30年間で6.3ポイント増える見通しだということです。
分析によれば、特に1人暮らしの65歳以上の高齢者が急増するとのこと。高齢者全体に占める1人暮らしの割合は、2050年には男性が26.1%、女性も29.3%に達し、一人暮らしのシルバーが巷にあふれる事態も現実のものとなりそうです。
背景にあるのは、(生涯にわたり)結婚をしない人の増加がある由。2050年には、1人暮らしの高齢者のうち未婚の割合は男性で59.7%と6割にのぼるとされ、四半世紀後の社会では(そうした)彼らの暮らしをいかに支えていくのかが大きな課題となっているかもしれません。
とはいえ、いつの時代も資産を蓄えているのは高齢世代。老後の備え…などと言って無駄に貯金したりせず、自由になるお金を十分に使って充実した老後を存分に過ごしてもらい、併せて経済にも大きく貢献してもらいたいと考えるのは私だけではないようです。
8月16日の日本経済新聞の意見投稿コーナー「私見卓見」に、博報堂生活総合研究所上席研究員の内浜大輔氏が『「ひとり」が生む商機を逃すな』と題する一文を寄せていたので、小欄に概要を残しておきたいと思います。
2023年に博報堂生活総合研究所で行った20〜69歳を対象に実施した調査の結果、『「みんな」より「ひとり」でいる方が好き』という人が78%に上った。インターネットやSNS(交流サイト)が生活に入りこむ環境下では(往々にして)他者の情報を浴び続ける「接続過剰」が生まれるが、こうした状況とバランスをとるべく、多くの生活者がひとりの時間を持ちたいと望むようになっているようだと氏は分析しています。
確かに、ひとりだからこそできることは多い。何かに没入して体験・鑑賞できたり、内省を通して自分の考えを再発見できたり、身軽に新たな挑戦ができたりと、誰かと一緒では得られない積極的なものが多いというのが氏の認識です。
これを市場ニーズとしてみると、生活者の「ひとり欲求」の充足は有望なマーケティングの機会だが、現状そこには課題もあると氏はここで指摘しています。
例えば、ひとり行動の積極的な効用に適合したサービスが(いまだ)少ないこと。例えば、ひとりだからこそ高級ホテルに宿泊して、空間や接客、食事のレベルの高さを堪能する人も多い。しかし、企業が用意する宿泊や外食のひとり向けプランには単価を抑えた提案が多く、こうしたニーズを十分に満たしていないと氏はしています。
ひとりだからこその特別の時間や、特別な経験を期待する声は大きい。こうした個々の「プレミアム価値」を意識した、プラン再設計の余地があるということです。
また、住宅では近年、2〜3畳程度の小空間をリビングに併設する人が増えているということ。これは「家族一緒の時間」と「ひとりの時間」をゆるやかに使い分ける工夫とされるが、こうした観点はオフィスの設計にも取り入れることができるはずだと氏は話しています。
氏によれば、子育てや家事を(一時的にでも)家族に任せることを躊躇したり、ひとりで過ごす自分が周囲にどう見られるか気になったりと、ひとり好きの人の中でも十分にはひとりになれないハードルを抱える人は多いとのこと。企業には、家族や周囲の理解を促し、本人もひとりの時間を気兼ねなくとれる大義名分づくりで生活者を後押しすることが求められるということです。
具体的には、年度末の仕事終わりや節目などに(自分へのご褒美として)ひとりでささやかなぜいたくをするとか、自分のこれまでを振り返る「個人的な記念日」をもっと増やすとか…。様々な機会にうまくマッチしたプランを提供することで、消費者の人生も豊かになるし経済も潤うというウィン・ウィンの関係が生まれるということでしょう。
ひとりでの生活は、(過ごし方次第で)寂しいものでもツマラナイものでもなくなるはず。ひとりを前向きに捉え、生かそうという視点を持つことが、これからのビジネスと生活者の活性化につながるカギとなる(はずだ)と話す内浜氏の指摘を、私も興味深く読んだところです。
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