つれづれなるまま(小浜正子ブログ)

カリフォルニアから東京に戻り、「カリフォルニアへたれ日記」を改称しました。

医療保険

2011-08-11 09:27:39 | 日記
こちらへ来て初めてお医者さんにかかった。
先週末から手足がかゆく、だんだんブツブツができてとうとう顔にまで広がったので、これはマズイと思って、Caltrainで20分ほどの所の日本人の家庭医のクリニックに行ったのだ。見立てはこちらに多い dry skin にアレルギーが複合したもので、その場で出してもらったステロイド剤を服用したら腫れは引いてきたので、ひと安心。会計は、加入している海外旅行保険会社に直接請求するということで、払わなくてよかった。
じつは、クリニックに行くのはとても気が進まなかった。というのは、こちらの医療保険の「大変さ」について、たくさん聞いていたからだ。
アメリカの医療保険制度が問題をかかえているのは、ブッシュvsクリントンの大統領選挙の際にも論争があったと思うので、ずいぶん前からのことだ。それがここに来て、大学勤務の安定した社会的地位のある人にとっても人ごとでない問題になって、日々の会話に出てくる。
なにせ、保険料がとても高い! 契約している医療保険は人によって様々だが、毎月払っている保険料が家族で一ヶ月2000ドルになるケースもあるという。ドクターレベルの留学生向けの奨学金には、生活費以外に4ヶ月で500ドルの医療保険のための給付がついていて、つまりこちらで研究生活を送るためにはそれ以上の医療保険に入れ、ということだ。(日本では留学生向けに月1000円ほど払う健康保険があったと思う)
保険料が高くなるのは、医療費自体が高いからだ。ちょっとした風邪とか痔とかでクリニックに行き、たいした治療もしていないのに、数百ドル請求されることはよくあるという。まして手術ともなれば、当然万ドル単位のお金がかかる。それに備える保険料が高いので、保険に入っていない、充分でない人も多い。クリニックでは、まず保険を確認してから治療する。(私も最初にどの保険に入っているかを聞かれた。)
そういうことなので、体が弱っているときに、英語で保険の交渉をするのはとても気が重く、病気になったら、さっさと飛行機に乗って日本へ帰って治療しよう、とかなりまじめに考えていた。おそらく航空運賃を足しても日本の治療費の方がかなり安い。
先日、中国から来ている研究者と医療保険の話をしていて、日本では(最近うまく機能しなくなっているとはいえ)国民皆保険で、普通に予想されるケガや病気の治療費のために即座に生活が崩壊することを、多くの人はそんなに心配していない、と話したら驚かれた。中国でも、医療保険は大きな問題で、いったんケガや病気をしたら、医療費が安定した生活を崩壊させる危険は日本よりずっと大きい。
日本の健康保険制度は現在、増大する赤字などたくさんの問題を抱えつつあるが、それでも今のところまだまだそれなりに機能して、私たちの暮らしを守ってくれている。日本の高額医療費補助制度(難病などで毎月の医療費が数万円を超えれば、高収入の人以外はそれ以上の負担が免除される仕組み)などは、アメリカや中国では考えもつかないだろう。
さまざまな問題点が明らかになっている日本社会だが、まだ比較的うまくいっている部分も少なくはない。

[追記]一週間後にdry skinのフォローアップに行き、ほぼ心配ない状態に戻った。二回の医療費(診察料+薬代、ただしほとんどは前者)合わせて$430.やはり日本よりかなり高い感じ。もっとも保険が効いて、キャッシュレスで受診できたけど。