人魚姫の夢を見た。おそらく、歩く度に足が痛くて靴下が血と膿がにじむから、陸に上がった人魚姫を想像したのであろう。あたしの思考は難しいようでひどく単純だ。ただ、寒いせいか人魚姫は雪山にいた。長い髪で、一面真っ白で、人魚姫も白い服を着ていて雪女みたいにも見えた。人魚姫は、笑っていた。全て無くしたのに。帰る場所もないのに。ただ、ただ、綺麗な顔で笑っていた。いい人ってのは、自分にとって都合のいい人なんだよ、あんた、生きなよ、と人魚姫に言おうとして止めた。そんなん人魚姫が一番分かっているだろう。それに全て無くした者に、生きなよ、とか、頑張ってなんて凄く無責任で嫌な言葉だ。あたしだって言われたくない。雪山の人魚姫は、泡にはならず、溶けて消えた。少し羨ましいと思った。