月岡芳年 月百姿
『銀河月』
明治十九年届
七夕伝説のおこりは中国の後漢のころ(1~3世紀)です
中国の織女(しょくじょ)・牽牛(けんぎゅう)の伝説と
裁縫の上達を願う乞巧奠(きこうでん)の行事とが混ざりあって
伝わったものといわれています。
国立国会図書館デジタルコレクション 053
牽牛と織女は、天地の別れたときよりずっと
稲蓆(いなむしろ)の川に向い立って
思い合う身も安からず、嘆く身も安からず
川の青波によって望みは絶たれてきた。
白雲にさえぎられて涙は尽きない
こうしてばかりため息をついているのだろうか
このようにばかり戀つづけているのだろうか
赤く塗った小舟が欲しい。美しく皮を巻いた櫂も欲しい
朝の凪に櫂をかいて渡り、夕べの潮に舟を漕いで渡り
久方の天の川原に天を翔る領巾を半ば敷いて
真玉のような美しい手を交して、幾夜でも寝たいものだ
秋ではなくても。
山上臣憶良(やまのうへのおみおくら)
万葉集巻八 一五二〇