月岡芳年 月百姿
王昌齢
『西宮夜靜百花香 欲捲朱簾春恨長
斜抱雲和深見月 朦朧樹色隱昭陽』
明治二十年届
王昌齢(オウショウレイ)は盛唐期の詩人(698年~755年)
班婕妤(ハンショウヨ)は、前漢の成帝の寵愛を受けたが
のちに帝が趙飛燕姉妹を寵愛するようになったため
身をひいて太后に仕えた
後世、寵愛を失った女性を歌った詩に登場することが多い
国立国会図書館デジタルコレクション 041
西宮春怨(せいきゅう しゅんえん)
西宮(せいきゅう) 夜静かにして 百花香(かんば)し
珠簾(しゅれん)を捲かんと欲すれば 春恨(しゅんこん)長し
斜めに雲和(うんわ)を抱いて 深く月を見れば
朦朧たる樹色(じゅしょく) 昭陽(しょうよう)を隠す
西宮:媵妾(ようしょう=そばめ)のいる室
雲和:琴(きん)の称
昭陽殿:寵愛されている皇后の趙飛燕の居所
『私のいる 誰もやって来ない西宮は 静かで
ひっそりとしており ただ花の香りだけが漂っている 。
花の匂いに誘われて 簾を巻き上げようとすると
昔のことが偲ばれて 春の感傷に浸ってしまう 。
斜めに琴を抱いて 遠く月を見上げると
かつて帝から寵愛を受けた、木々の間から見える昭陽殿は
涙が溢れぼやけて はっきり見ることもできない。』