オオカミになりたい(遺言)

ずっとそばにいるよ

月百姿 西宮夜靜百花香

2017-07-11 | 月百姿

月岡芳年 月百姿

王昌齢

『西宮夜靜百花香 欲捲朱簾春恨長

  斜抱雲和深見月 朦朧樹色隱昭陽』

明治二十年届

 

王昌齢(オウショウレイ)は盛唐期の詩人(698年~755年)

 

班婕妤(ハンショウヨ)は、前漢の成帝の寵愛を受けたが

のちに帝が趙飛燕姉妹を寵愛するようになったため

身をひいて太后に仕えた

後世、寵愛を失った女性を歌った詩に登場することが多い

 

国立国会図書館デジタルコレクション 041

 

 西宮春怨(せいきゅう しゅんえん) 

 

西宮(せいきゅう) 夜静かにして 百花香(かんば)し

珠簾(しゅれん)を捲かんと欲すれば 春恨(しゅんこん)長し

斜めに雲和(うんわ)を抱いて 深く月を見れば

朦朧たる樹色(じゅしょく) 昭陽(しょうよう)を隠す

 

西宮:媵妾(ようしょう=そばめ)のいる室

雲和:琴(きん)の称

昭陽殿:寵愛されている皇后の趙飛燕の居所

 

『私のいる 誰もやって来ない西宮は 静かで

ひっそりとしており ただ花の香りだけが漂っている 。

花の匂いに誘われて 簾を巻き上げようとすると

昔のことが偲ばれて 春の感傷に浸ってしまう 。

斜めに琴を抱いて 遠く月を見上げると

かつて帝から寵愛を受けた、木々の間から見える昭陽殿は

涙が溢れぼやけて はっきり見ることもできない。』