FRBが1%緊急利下げ ゼロ金利に、量的緩和も再開
【ワシントン=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)は15日、臨時の米連邦公開市場委員会(FOMC)を開いて1.0%利下げした。政策金利は0~0.25%となり、2008年の金融危機以来のゼロ金利政策を敷く。米国債などを大量に購入する量的緩和政策も復活。金融政策を全面的に非常時対応に切り替え、新型コロナウイルスの拡大による景気と市場の混乱を抑えたい考えだ。
15日のFOMCでは、短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を、1.00~1.25%から0~0.25%に引き下げた。FRBは3日に0.5%の緊急利下げに踏み切ったばかりだが、株式市場が再開する16日を前に、再び臨時のFOMCを開いて追加緩和した。通常の利下げ幅は0.25%だが、今回はそれを大幅に上回る1%となった。
米国債などを買い入れて資金を大量供給する量的緩和政策も復活させる。今後数カ月で米国債を少なくとも5000億ドル買い入れ、住宅ローン担保証券(MBS)も同じく2000億ドル購入する。長期金利と住宅ローン金利を引き下げて、需要の落ち込みを最小限にする狙いだ。
FRBは定例のFOMCを17~18日に予定している。市場では1%の大幅利下げに踏み切るとの見方が浮かんでいたものの、日曜日の15日に臨時会合を開いて緊急利下げするのは極めて異例だ。ダウ工業株30種平均が一日で2000ドル超の大幅な下落を記録するなど、金融市場は不安定さを増しており、迅速な政策決定で相場に「サプライズ」を与えて投資家心理を改善する狙いがある。
FRBは08年のリーマン・ショック後に政策金利を0%近辺に下げて、ゼロ金利政策と量的緩和政策に踏み切った。量的緩和は14年秋に終了し、15年末にはゼロ金利も解除して「金融政策の正常化」を開始した。ただ、19年には米中貿易戦争を警戒して3回の利下げに踏み切り、その後は20年に入って新型コロナの感染拡大で景気後退懸念が浮上。政策金利を合計1.5%引き下げて、ゼロ金利と量的緩和の復活に踏み込んだ。
同日公表した声明文では「新型コロナは米経済を混乱させ、金融環境に大きな影響を及ぼしている」と強い懸念を表明。先行きも「経済を支えるために、政策ツールを用いて適切な行動をとるだろう」と強調し、量的緩和の拡大など追加施策を検討する考えを示した。