ボリショイ劇場 & シドニ-オペラハウス観劇記

元モスクワ、現在シドニ-赴任の元商社マンによるボリショイ劇場やシドニ-オペラハウスなどのバレエ、オペラ観劇記です

ボリショイ ロンドン公演 バヤデール 8月2日

2007年08月07日 | Weblog

特派員Mさんよりの8月2日バヤデール初日の寄稿です。ザハロワのニキヤ見たかった。。パンフです。

Telegraphにバヤデールの影の王国の動画があります。是非ご覧の程。

ボリショイ ロンドン公演(at London Coliseum

2 Aug 2007

La Bayadere」グリゴローヴィッチ版

ニキヤ:スヴェトラーナ・ザハロワ

ソロル:ニコライ・ティスカリーゼ

ガムザッティ:マリア・アレクサンドローワ

ゴールデン・アイドル(金の仏像):ヴィァチェスラヴ・ロパーティン

マグダヴェーヤ(苦行僧):アントン・サヴィチェフ

豪華キャストによる「バヤデール」の初日。昨年の日本公演でも記憶に新しい演目とキャスト。

この日もザハロワが出番だったせいか、「海賊」の初日のようにTVカメラが劇場に入っていた。

日本でも注目されたが、ティスカリーゼは独自の演出で、左耳にスタッド式のクリアーグラスのピアスに、左の鼻にもピアス。また、最初のターバンを飾るのは白い羽根ではなく孔雀の羽根・・・!他のソロルのダンサーは2&3幕は同じ衣装だが、各幕で一度ずつ着替えるのも、彼ならでは。本当に楽しませてくれる。

ザハロワは以前にも増して深い感情表現ができるようになったと思う。12幕では様ざまな表情を見せてくれた。また、もちろん踊りでも身体のしなやかさが特に2幕では活かされていた。日本公演の際には少し危なげだった3幕でのヴェールの端を持っての回転なども安定していた。しかし、個性的なアレクサンドローワがガムザッティのような煌びやかな衣装に身を包み、ダイナミックな踊りを見せてくれるので、幕が降りた後の印象としてはザハロワよりも濃く残った。

金の仏像や太鼓の舞、壷の舞のような個性溢れるソリストたちのダンスで盛り上がり、また、3幕の影の王国のヴァリエーションでは日本公演で評価の高かったクリサノワやオシポワが見ごたえのある踊りを見せてくれる。テクニックが素晴らしい。

32人のコールドによる美しく揃った踊りには拍手と「ブラボー」が止まず、次の音楽が聞こえないほどであった。日本公演ではグラ付いたり脚を早く落としてしまったバレリーナがいたりで、毎回ヒヤヒヤさせられたが、この日は完璧だった。

日本公演で個人的に最も感銘を受けたのが、ティスカリーゼの最後の寺院崩壊で死んでゆく姿であったので、この日もそれが観たくて楽しみにしていた。今回も期待通り見せてくれた。身体の並外れた柔軟性を活かして、階段の所で座った姿から背中をエビ反りにしてブリッジを描きながら両手をY字に伸ばし、頭とY字の腕が正面を向いて逆さまに項垂れるように持ってくる。その動きを、最後のヴァイオリンの細~い余韻の音を使い切って完成させるのである。芸術性の高さに驚く。彼はこのポーズを達成させる為に如何程の努力と研究を積み重ねたのだろうかと今回も思ってしまった。

主役3人がそれぞれに素晴らしく見ごたえがあった。3人の「ナルシストの共演」かと思えるぐらいそれぞれが自分を「見せよう」としていたのが印象に残った。

ミンクスの作曲した音楽がそれぞれの役の感情表現と非常に良く合っており、これ以外の振り付けを想像するのが難しくなったほどである。ラジャや大僧侶役の演技とマイムの質の高さが演目を引き締めていたのは言うもでもない。キャラクターに恵まれたボリショイの素晴らしい強味である。



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