特派員Mさんよりの寄稿です。写真はElsinore (Misericodes)」を振付けたChristopher Wheeldon。
ボリショイ ロンドン公演(at London Coliseum)
13,14, Aug 2007
「Class Concert」Asaf Messerer振付
「Elsinore (Misericodes)」Christopher Wheeldon振付
「In the Upper Room」Twyla Tharp振付
非常に特色の強い全く異なる3作品を観れた2晩。キャストもプリンシパルやソリスト総出の豪華な顔ぶれ。特に一晩目はTVカメラ入っていたせいか、「ワーク・シェアリング」のような形で「Class Concert」にザハロワとフィーリンも出た。稽古場で恋する女性の役をザハロワ、また、グランフェッテ他も彼女が担当したが、2晩目には前者をアントニーチェワが、後者をアラシュが担当していた。フィーリンは跳躍とリフトで少し出たのみだが、これらは沢山踊るスコヴルツォフの役のうちの一部。
ジュニアのバーレッスンから始まり、シニアのポワント・レッスン、センター、そしてボリショイのダンサーのそれぞれの特技を活かした跳躍や回転、リフトなどオンパレード。ダンサーが技を見せる度に場内が沸く。ある意味コンテストか品評会のように、観客の拍手の量でダンサーが評価されるのではないかと感じた。
ダンサーの背の高さや体格も、衣装がシンプルなだけに比較ができ、大きいと思っていたダンサーが意外と小さかったり・・・発見があった。
全体としてはハーモニーをなしていた。
もっとも印象に残ったのは、いい表情で伸び伸び踊るアレクサンドローワ、高いジャンプに男性ダンサー並みに飛びながらの回転ができるオシポワ、斜め45度に飛びながらの回転を見せるワシリーエフ、また、ボディーのラインが全く崩れずいくらでも回れるマトヴィエンコらであった。オシポワ、ワシリーエフは踊る度に大きな拍手とブラボーで賞賛された。
「Elsinore」は、振付師がイギリス人ということもあり、関係者が多く観に来ていた。シェイクスピアの世界を思わせる衣装、ゴシックな暗い照明、その時代にあった音楽。セットは壁のように区切れたパネルが背景にある以外は何も無い。とてもブリティッシュな構想だけに、どれだけロシアで評価されたかは疑問だが、この先受け継がれるほどのバレエではないなと思えた。
ほぼシメトリーな隊形に、浮遊するかのように現れ単独で踊るドミトリー・グダノフの、独特のアームスの動きや柔軟性を活かしたゆっくりとした形の変化は面白かった。
淡々と一切表情を変えない男性ダンサーに対して、どこか悲しい、あるいは苦悩の表現を豊かに表すアレクサンドローワやルンキナが熱さを添えてくれた。2組のペアーや1組で踊りがなされる。
元々は「ハムレット」を題材にしたとあって、やはりどこか物悲しい暗い悲劇のイメージがあるが、作品自体は全く抽象的に仕上がり、ストーリー性を追うものではない。あくまでも、音楽と身体のハーモニー、隊形を鑑賞するものだと思った。クラシックな動きを基調としながらも、独特のムーヴメントがあり、サポートやリフトというより男女ダンサーの組み方にも特徴があった。
初日、幕が降りた時にはしばらく観客は戸惑っていたが、拍手は次第に多くなった。2日目のほうが大きな拍手をもらえていたが、テンポの良い前後の作品に挟まれているので、盛り上がりには今一つ欠けた。ボリショイのダンサーにふさわしい作品かどうかは疑問に思えた。イギリス文学物を題材にするのを得意としているバーミンガム・ロイヤルなどに振付けたほうがふさわしかったのでは?
それにしても、元々ロシアでの作品発表時とロンドン公演時とでタイトルを変えた訳が知りたい・・・
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